第4話 中間テスト!

 南條さんが生徒会に入って、あっという間に一ヶ月が経過した。五月末の中間考査まであと二週間を切り、生徒会も今日の活動を持って一時休業だ。

「それじゃあ、これにて会議は終了! みんなお疲れ様。テスト勉強頑張ってね」

「「「お疲れ様でした」」」


「ねえ、北辻くん」

「どうしたの?」

「みんなで勉強会、しない?」

 南條さんの一声で、俺たちは中間考査に向けた勉強会を開催することになった。


 勉強会には俺と南條さん、桂志郎、カエデさんの四人が集まった。

「そう言えば勉強会やったこと無かったな。確かに、うちの生徒会には学年主席様が居るんだから、一緒に勉強した方が良いよな」

「やめろって。桂志郎だって順位一桁台だろ」

 勉強会の会場は学校からほど近いファミレスになった。南條さんとカエデさんはドリンクバーを取りに行っている。

「お待たせ〜 」

 桂志郎と話している内に、南條さんとカエデさんが戻ってきた。


「あーあ、何で白菊祭の前に中間テストがあるんだよ。今でも準備時間カツカツだっていうのにさ」

「そうなの? 前の学校だと学園祭の二週間前に中間テストだったよ」

「マジで!?」

 カエデさんの話に桂志郎が驚く。二週間で準備しろとか言われたら徹夜続きになりそうだ。

「前の学校はそこまで凝った学園祭じゃなかったからね。そう言えば、桂志郎くんのクラスは出し物どうするの?」

「うちのクラスはお化け屋敷だよ。オカルト研の奴らが気合出しちゃってさ、結構レベル高いの出来そうだぜ。そっちは?」

「うちはコスプレ喫茶だよ。タピオカミルクティー売るの!」

「タピオカ? 何それ?」

「つぶつぶした食べ物でね、ミルクティーの中に入れると美味しいし、写真映えするの!」

 桂志郎もこの前の俺たちと全く同じ反応だ。メイド喫茶のメニュー決めの時に、カエデさんはタピオカミルクティーなるものを提案した。カエデさんが前にいた都会の高校では流行っていたらしいけど、クラスのみんなは誰もそれを知らなかった。

「カエデちゃんの作ってきたタピオカミルクティー、すごいオシャレだったよね!」

 そして、次の日にカエデさんは自分でタピオカミルクティーを作って持ってきたのだ。それがクラスの女子から非常に高評価で、メニューはタピオカミルクティーで決定したのだった。

「でしょ! 絶対人気出るよ!」

「そうなんだ! じゃあ俺も当日飲みに行くわ。柊のコスプレも見たいし」

「おい。つーかそろそろ勉強しないと。白菊祭の話ばかりしてないでさ」

「あ、そうだ。この学校の学園祭って何で『白菊祭』って呼ばれてるの?」

「カエデさん俺の話聞いてた?」

 溜め息が出てしまう。そろそろ勉強しようと言ったのに、カエデさんがまた話し出してしまった。このままだと、今日は全然勉強できなそうな気がする。

「近くに白い菊が有名なフラワーガーデンがあるの。その影響じゃないかな?」

 南條さんがカエデさんの疑問に答える。

「そうなんだ。フラワーガーデンあるんだ。行ってみたいな」

「私あそこの白菊本当に好きなの。辺り一面真っ白ですごい綺麗なんだよ!」

 目を輝かせながら、南條さんが力説する。確かに、フラワーガーデンのあの光景は本当に綺麗だ。俺もたまに一人でふらっと行くくらいに好きな場所だ。

「じゃあデートスポットに持ってこいだね! 今度柊くんと行ってきたら?」

「「!?」」

 俺と南條さんが二人して驚く。この前カフェデートを提案してきた時といい、カエデさんは本当に突拍子も無いことを言うので心臓に悪い。

「あはは。良いんじゃね。行ってこいよ」

 桂志郎も笑いながら乗っかってくる。

「ま、まあ中間テスト終わってからな。さあ勉強だ勉強!」

 我ながら、酷い話題の逸らし方だ。

 それから、ようやく俺たちは勉強を始めた。勉強会だと言うのに、教え合いなどは一切やらずに、各自黙々と勉強するだけで終わった。それ以降、自習の方が効率的なことに皆気付いたのか、中間テストまで勉強会が開かれることはなかった。


「カエデちゃん一位だ! すごいよ!」

「フフーン」

 勉強会から三週間ちょっと経ち、中間テストの順位表が廊下に貼り出された。何と驚くことに、カエデさんが学年トップだったのだ。順位表の前で、南條さんがカエデさんを褒めちぎっている。

「生物なんて満点だよ!」

「一番 好きだからね。将来も生物系の研究したいなって思ってて」

「カエデちゃんは未来の教授だね!」

 南條さんがカエデさんを褒め続ける。二人はまるで親子のようだ。南條さんは将来、良いお母さんになりそうだな……。

「よっ。柊、残念だったな。一位取られて」

「うるせえ」

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