第2話 戦略開始

 という訳で、3人はテレビ局に行き、お笑い研究部で撮影した動画を売り込みに行った。

 終業式を終え、冬休みの時期である。時は、12月下旬である。

 テレビ局を出てきた3人は徳島駅の方に行った。

「寒くないの?」

 と、小村は聞いた。

「寒いわよ。」

 と高野は言った。

「寒いね。」

 と桐ケ谷も言った。彼女達が寒いのも無理はない。彼女達はミニスカートである。

「ミニスカートは若いうちしか着れないからね。」

 と、高野は言いながら、冷気でミニスカートが少したなびいていた。

「まあ、確か・・・」

 と、小村は言ったが、

「寒っ。」

 間髪入れずに高野は言った。

「あはは・・・。」

 と小村は笑った。

しかし、高野のミニスカート姿は改めて実によく似合っていた、体はすらっとしていて、胸もほどよくあり、顔は勿論、整っている。スカートから伸びるふとももは16歳でありながらもなんともいえない色気があった。流石は、小村の高校の看板女優である。

「何、じろじろ見てんの?」

「えっ、いや、うちの高校のさすが看板役者だなと思って・・・。」

「あら、有難う。惚れたかしら?」

 と小村は高野に聞かれ、ドキっとしたが、目をそらし、

「いや、まさか・・・。」

 と小村は答え、

「そう・・・。」

と高野は言った。

 年末、大晦日。

小村は、高野に呼ばれた。

「なんだろう。」

 と、小村は思った。予定された場所に着いた。鳴門にある、大きな神社である

「やあ、小村君。元気かね?」

そこには小村に声をかける和服姿の美女が居た。

「あっ。」

 と小村はその美女に見惚れて声が出たが、質問を返さないとと思い、

「まあまあかな。」

 と小村は答えた。

「つまらん答えだな、じゃあ、私の和服はどうかな?」

 と、高野は言った。

「それは、・・・似合ってるよ。」

 と小村は答えた。

「ふふふ、そうかね。」

 と、高野は満足そうだった。

「さて呼んだのは、どういう要件?」

 と、小村は言った。

ええっという顔を高野はした後、ぷくーっと、高野は顔を膨らまし、

「用が無いと呼んだら駄目なの?」

 と高野は言った。そしたら、小村は、

「いや、そんなことはないが・・・。用があるから呼んだんじゃないの?」

はあー、と高野はため息を吐き、

「まあ、お笑い研究部の用かな。」

 と、高野は答えた。

「じゃあ、桐ケ谷先輩は?」

「あーー、あの人は用事で来れないって言ってたわ。」

 と、高野は答えた。

「ふーん。」

 と、小村は言った。

しばらく、二人は無言のまま歩いた。

「そういえば、テレビ局から、何か連絡きた?」

「いや、まだ。」

と高野は答えた。

「そうか。」

 と、小村は言い、話はまた中断した。

そして、お互い思った。

あれ、僕(私)達、お互いのことあまり知らない、と。

「あの。」

「ひぁい。」

と、高野は言い、跳び上がった。

「そういえば、お互いの事良く知らないね。」

「そ・・・そうね。」

「あの、ご趣味は?」

「えと、役者かな。小村君は?」

「えと、漫画とか、小説とか読むかな。」

「へえ、漫画読むんだ。」

「まあね。役者はいつから?」

「中学の時から。」

「へえ。お笑いはいつから?」

「うーん、小学校の時には好きだったかな?ほら、この地域って吉○新喜劇見れるじゃない。」

「まあ、そうだね。」

「小村君のコントの原点は?」

「うーん、なんだろ。漫才とか、ギャグ漫画かな?」

「へえ、そうなんだ。」

「いや、自分を分析した事ないから分かんない。」

「へー。」

「それにしてもお笑い好きだよね。」

「そりゃあ、そうじゃない、他人を笑顔にするのって、素敵じゃない。」

「・・・そうだね。」

「私は他人が笑っているところを見ると、私も嬉しいし。」

「・・・、優しいんだね。」

「へっ??」

 いきなり、小村がそんなこと言うから、高野は動揺した。

「いや、あの・・・、そうかな?」

「そうだよ。他人を喜んで、自分も楽しいって、誰にでも出来ることじゃない。優しいよ。」

 と、小村は言い、完全に高野は照れた。

「やだ、小村君ったら。」

 と、高野は顔を背けた。

「・・・?」

 小村は高野が照れているのが、気づいてなかった。

「お礼にボケをかまそう。」

「お礼?何の?」

「まあ、いいからいいから。」

「しかし、ツッコミ担当が不在・・・。」

「君がいるじゃないか。」

「ええ・・・。」

「いやーー、最近暑いねえ。」

「いや、暑くないでしょ。」

「そろそろ、夏が近づいてまいりました。」

「いやまだ冬だから。大晦日だから。」

「冬と言えば、かき氷。」

「夏だね、それは。」

「そういえば、小村君。」

「はい。」

「君は漫画が好きらしいじゃない。」

「ええ、まあ。」

「漫画と言えば、夏だよね。」

「漫画に季節は関係ないよね。」

「夏に漫画読むと嫌だよね。」

「ほう、なぜ?」

「手汗は掻くし、普通に汗も掻く。」

「うんうん。」

「脂汗も掻くし。」

「まあ。」

「鼻から、液体も。」

「それは風邪じゃないかな。」

「まあ、こんなもんかな。」

「いいんじゃない?」

「そういえばさあ、小村君ってさあ、好きな人とかいるの?」

「え、どうしたの、いきなり・・・?」

「ちょっと気になって。」

「いる・・・けど。」

「そう。」

と、言って高野は口をつぐんだ。

お参りをし終えた。

「何願ったの?」

「それは秘密だな。」

「ふーん。」

そして、二人は帰ろうとした。しかし、小村が、言った。

「高野さん。」

「はい。」

「あのさ。」

「はい。」

「・・・。」

「・・・。」

 二人は黙ったが、小村が切り出した。

「お参りって、正月にするもんじゃないの?」

「え、あっ、神様にフェイントかけようと思って。」

「・・・神様にフェイントかけてどうするの。」

「ふふふ、まあいいじゃない。」

「まあ、いいけど。」

 こうして二人は家に帰り、各自年越し蕎麦を食べた。

 年を越え、年始。

高野と、桐ケ谷と、友達におめでたLINEを送った。

ブーッ、ブー。

「?あっ、高野さんからだ。」

今年も宜しくね と、書いてあった。

「ふっ。」

 と、小村は笑い、今年も宜しくと送った。

ブーッ、ブー。

「?あっ、高野さんからだ。」

実は昨日、今年は人々が私の私による私のための年にすると願った、と書いてあった。

「なんじゃそりゃ。」

 そういう今年も宜しくか?と送った。

 ブーッ、ブー。

小村はLINEを見た。う・そ・だ・し、と書いてあった。

年始、昼。

小村は、自分の家の近くの神社に行った。

今年を願った。

お辞儀して、神社から出た後、彼は自分の家に帰った。帰る途中、高野からLINEが来た。

『部活は1月4日、9:30から』と。

「へいへい。」

 と小村は言った。

テレビ局が開いている時、部活の時に撮影した、コントや漫才を3人はテレビ局に行き、いつものように動画を売り込みに行った。

「なかなか、お呼ばれがありませんね。」

 と、小村は言うと、

「これは根性しかないわ。」

 と、桐ケ谷は言った。

「そうね、根気よ。」

 と、高野は答えた。そして、しばらくして、

「来たわ、テレビ局からオファーが。」

 と、高野が言った。

「おお、遂に。」

 と、小村は言って、

「我々の一芸が認められましたね。」

 と、高野が言い、

「そうね。」

 と、桐ケ谷が言った。

 冬休みが終わり、既に3学期が始まった時である。

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高野美華の軽演劇哲学 峪明博 @sakoakihiro

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