第三章
第1話 戦略
次の戦略が決まるまで、しばらくお笑い研究会は休部した。
小村は文芸部に行ったが、近場の目標が無くなり、少し喪失感になっていた。
「どうしたの?小村元気ないね。」
「そ、そう?」
「そうだよ。いつも、大変ながら生き生きしてたよ。」
「・・・。」
どうしたんだろ、僕?と小村は思った。
小村はどうして自分に元気がないのか気づいてなかった。
「小村、お前好きなんじゃないのか?」
「部長。」
文芸部部長尾道圭が、声を懸けた。
「部長、僕は、何を好きなんですか?」
「決まっておる、お笑い研だよ。」
「え、僕が?まさか・・・。」
いや、だって最初は、半分無理やり始まって、そして、多少は彼女のために頑張ったけど、お笑い研が好きまで・・・、と小村は思った。
「部長。それはないと思いますけど。」
「じゃあ、お笑い研が休部してから、なぜ、そんなに元気がないんだ。」
ガーン。
確かにそうだ。僕はお笑い研究会を休んでから、なんか元気がなくなった。高野さんに会えないから?確かに少し違う。まさか・・・。
「・・・。」
「ま、少し考え給え。」
「部長・・・。」
「ふっ。」
と尾道は小村を諭し、尾道は自分の席に戻って行った。
決まったな、と尾道は思った。
「・・・、上のボタン、ズレてますよ。」
「え??、あっ!!」
文芸部達は、クスクス笑った。
そして文芸部を終えた、小村は家に帰り、自問自答していた。
「僕がお笑い研究会をねえ。好き、好きかあ。」
・・・、と、小村は考えた。
「まあ、脚本書くのに必死になってたからなあ。あんまり考えたことなかったけど・・・。」
と、小村は独り言を言った。
「まあ、近場の目標が無くなったのは事実だよなあ。」
・・・、と小宮は思った。
「よし、なんか書こう。」
と決め、小村はPCを睨みながら、脚本を書いた。
しばらくして、出来上がった脚本を持って、小村は高野の教室に行った。
ドドドドドドドド、キー、バン。
「高野さん。」
「え?何?どうしたの?」
「これ・・・。」
「何これ?」
「脚本・・・。」
「え?これ、全部??」
「はい。」
「凄い、小村君こんなに書いてくれたんだ。有難う。」
「いえいえ。」
小村は照れた。
「でも、今は受け取れないわ。」
と、高野は言い、
「どうして??」
小村は高野が受け取れないと言ったので、ビックリして困惑した。
「だって、今・・・。」
「ホームルーム中です。」
と、高野の担任の先生が、呆れと、叱るのが、まじった言い方で言った。
「あっと・・・・、失礼しましたー。」
と、小村は言い、小村は出て行った。
放課後。
小村は高野のクラスの前で待っていた。
「高野さん。」
「小村君。」
「あの、さっきはごめんなさい。」
「君の天然は凄いわね。」
「いやー、そんなっ。」
「今のは褒めてないわ。」
「あう・・・。」
「で、これが、脚本の束ね。」
「そう。」
小村は、高野に脚本の束を見せた。
「凄い量ね。どうしたのこんだけの量?」
「あの、お笑い研究部を休部している間、色々考えてて、僕、お笑い研究部の脚本書くの楽しくなってたって分かって。」
「・・・。」
「だから、休部の間、色々、脚本を書いてたら、こんだけになっちゃって。」
「小村君・・・。」
「はい。」
「有難う。」
高野は素直に言い、脚本の束をぎゅっとした。
「いや、こっちこそ。僕に光を灯してくれて。」
「小村君。」
「高野さん。」
「あのお取り込み中申し訳ないのだが・・・。」
二人は大きな声で「はい。」と言った。
「美華、演劇部始まるよ。」
「あ、いけない。」
と、高野は言い、
「ごめん、小村君、私部活行かなきゃ。これ、借りるから。」
「うん。行ってらっしゃい。」
「行ってきマンモス。」
こうして、小村と高野は分かれた。
「さて、文芸部に行きますか。」
と、小村は言い、案の定彼は文芸部に遅刻した。
日が、1日、1日と過ぎていく。小村はただひたすら、自分の与えられた仕事である脚本を自主的に作っていた。一方、高野は、
「やはり、これしかない・・・か。」
と、方法を考えていた。小村にラインが来た。
「ん?なんだ?高野さんからだ。」
ラインを見て見ると、お笑い研究部 開始の文字が。
「おおっ。そうか。」
「小村。」
「はい。」
「授業中。」
「・・・、はい。」
スマホを没収された。
そして、放課後。
「諸君に集まってもらったのは他でもありません、今後のお笑い研究会の今後についてです。」
「おおっ。」
と、二人は言った。
「やはり、これしかないと思い発表します。」
「うん。」
「はい。」
と、二人は神妙な面持ちをして、高野が言うのを待った。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
高野は溜め、二人は黙った。
「・・・あんまり、期待出来る内容じゃないから。期待しないで。」
「まさか。」
と、桐ケ谷は言った。
「?」
「おそらく、先輩は気づいたと思いますが、演劇部の知名度を利用します。」
「やはり。」
「ほう。」
「演劇部の自主公演の時、コメディを見てもらい、そこに来たお客様にお笑い研究部を宣伝し、知名度をあげたいと思います。」
「・・・。」
「成程。」
と、小村は言った。
「苦渋の選択です。あんまり、演劇部には頼りたくはないのですが。」
と、高野は言い、
「なぜ?」
と、小村が問うと、
「私の我が儘で作った部ですもの。あんまり、他人に自分の我が儘で迷惑をかけられないわ。」
と、高野は答えた。
「三井が納得するかだな。」
と、桐ケ谷は言った。
三井とは、演劇部部長三井正乃である。演劇を愛しているが故に、舞台で芸術やエンターテイメントを追求する人物である。
「・・・。」
高野は黙った。
「喜劇はのってくれるだろうが、お笑い研究部の宣伝までさせてくれるか・・・。」
と、桐ケ谷は言った。
「どうしてです?」
と小村は聞くと、
「演劇部と関係ないからな。あの子、演劇と関係ないことはやりたがるタイプじゃないの。」
「なるほど。」
「しかし、お笑い研究部の知名度を上げるには、まず、大きいグループ先でやらないと・・・。」
「確かにそうね。」
「そこから、独立するという方が無難と思います。」
「まあ、そうなんだけど。」
「・・・。」
小村は黙って、聞いていた。
「・・・。」
「・・・。」
3人とも黙ってしまった。
「三井先輩ってどういう先輩なんですか?」
と、小村は聞くと、桐ケ谷は答えた。
「演劇を愛しているが故に、舞台で芸術やエンターテイメントを追求する子よ。」
「成程。エンターテイメントと上手く繋げればいいんですね。」
と、小村が言うと、
「まあ、確かに・・・。」
と、桐ケ谷は頷いた。
「エンターテイメント・・・。」
と高野は言い、
「だから、喜劇は大丈夫と言ったんですね。」
小村が聞くと、
「そうよ。」
と、桐ケ谷は答えた。
「エンターテイメントを利用して、上手く、お笑い研究部を宣伝する方法があればいいのですが。」
「う―ん。」
「・・・。」
3人は考えた。
「うちの高校の演劇部を有名にして、そして、その演劇部から輩出し、笑いに特化したのが、お笑い研究部というのはどう?」
と、小村は言い、
「後にそういうふれこみにするのね。」
と、高野が言った。
「そう。」
と、小村は言った。
「これは、難易度高いわね。」
と、高野は言い、
「お笑い研究部単独よりはましじゃないかな。」
「うーん。」
「テレビ・・・。」
と、小村は言い、
「テレビ?」
「テレビに出るとか。」
と、小村は言った。
「地元のテレビだとしれてるじゃない。」
「大きい放送局に売り出すとか。」
「フジ○レビとか?」
「けど、高校生芸人なんていないし。無理か。」
と、小村は言ったが、
「待って、芸人は無理でも女優としてなら、高校生からでも出来るわ。」
と、高野は気づいた。
「映画、ドラマに出るのよ。」
「けど、それだと、コメディができるかどうか。」
「あっ、なら、自主製作映画をコンペに出すとか。」
「ビデオカメラとかどうするの?」
「安いビデオカメラでいいはずよ。」
「演劇部が四国大会で最高賞取ったら、ニュースや新聞に取り上げられるんじゃない?」
と、桐ケ谷が言うと、
「それだっ。」
と、二人は言った。
「取り敢えず今の意見を整理すると、女優としては、テレビや映画に出る。自主制作映画ならば、3人でコメディを取る。後は演劇部で最低四国大会に出て最高賞を取る。」
「自主制作映画はメディアには取り上げてもらえるかしら。」
と、桐ケ谷は言い、
「ネットで調べてみます。・・・うーん。微妙ですね。」
と、高野は答えた。
「テレビ、映画の女優で脇役になるとか。」
「要するにお笑い研究部の間は徳島県内で有名になればいいんだよね。」
と、小村は言った。
「なあ、そうね。」
と、高野は答えた。
「なら、ローカル有名人とか。」
と小村は言った。
「あっ。」
と二人は言った。
「ローカルテレビで有名になるのは厳しいと思ったけど、ローカル有名人っていますね。」
と、高野は言い、
「そうね。やしきた○じんとか。」
と、桐ケ谷は言った。
「それなら、演劇部を当てにせずに、有名になれる可能性がありますね。」
と、高野は言い、そして、
「3文の得ね。」
「3人集まると、文殊の知恵でしょ。」
と桐ケ谷は言った。そして、
「小村君有難う。」
と、高野は小村に素直に言った。
「あれ、チョップは?」
と、小村は言い、
「いけない、最近真面目なテンションだから、忘れてたわ。」
と高野は小村にチョップしながら言った。
「やっぱり、腐ってもテレビね。」
と、誰かが言った。
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