第2話 初の校外公演
「当面の目標は校外の公演に出ることよ。」
高野は突然そんなことを切り出した。
「そうか。」
と、小村は言った。
「あら、あんまり驚かないのね。」
「いやあ、高野さんなら、何かは言い出しそうで。」
「ふふふ、私の事ちょっとは分かって来たようね、小村君。」
「え、あ、まあ。」
「そう、校外公演です。」
「おおっ。」
と、桐ケ谷は武者震いをしていた。
「おー。」
と、小村は力なく言った。
「校外公演するという事は、60分未満であれば良いの。」
「60分。長いなあ。」
と、小村は言った。
「基本的に演劇の時間はだいたい20分~ね。」
「へえ。」
「そしてだいたい、プロのコントの時間を見る限り、7分~10分。」
「うんうん。」
「つまり、15秒でいいわね。」
「短いよっ」
「良いツッコミね、小村君。」
と、高野はニヤっとした。小村は言わされたと思った。
「始めてだから、20分にしようと思います。」
「長いな。」
と、小村は言った。
「うん。」
と、桐ケ谷は言った。
「そうね。けど、今回はしっかり、練ろうと思うから、時間を懸けようと思うの。」
「うん。」
「だから、小村君、時間を懸けて作って。」
「・・・分かった。頑張ってみる。」
「有難う。小村君。」
高野は小村の両脇に手刀の人差し指側で突き刺した。
「あいた。」
こうして、3人は、校外公演に向けて目指した。
初めは小村が脚本を作る作業があるので、その間、お笑い研究部は、休部した。
あーでもない、こーでもないと言って、作った。
しばらくして、
「で・・・、出来た。」
そして、小村は高野の教室に行き、高野に校外公演用の原稿を見せた。
「成程、良い感じね。流石は、小村君。」
「えへへ。」
小村は照れた。
「次は宣伝ね。」
「どうやってやるの?」
「そうね。どうやってやるのかしら?」
「ありゃ、知らないの?」
「知らないわ。」
「えー、苦労して書いたのに・・・。」
「待ってっ。こういう時は、ネットよ。何々?マスコミを使う。なるほど、マスコミね。」
「マスコミ?」
「新聞、ラジオ、ミニコミ等を利用する。成程―。これだわっ。」
こうして、高野と桐ケ谷は演劇部の合間をぬって、新聞社に公演の案内を送ったり、雑誌に連絡したり、地元ラジオに投書したりした。
やることはすべてやった、・・・と筆者は思う
「どこでするの?」
「勿論、舞台よ。」
「どこの舞台?」
「徳島市内にあるホールよ。」
「へえ。」
「決して、小松島市ではありません。」
徳島県民にしか分からない(もしかしたら徳島県民ですら分かるかどうか分からない)ボケを高野は小宮にかました。
「はあ。」
「・・・。」
高野は小村をじーー、と見た。
「?」
「・・・まず、我々を知ってもらうため、無料でコントをします。」
と、高野は言った。
「お金取らないの?」
と、小村が言うと、
「お金はもう少し後にします。」
「そうね、まず知名度を上げないと。」
と、桐ケ谷は言った。
当日、借りたホールで無料のコントをした。
お客さんはそれなりに受けた。しかし、終った後、
「駄目だ。お客が少なすぎる・・・。」
「ホールにほとんどいない・・・。」
「やっぱり、知名度は大事ですね。」
と、3人は反省会をした。
「やはり、特殊な空間に人を呼ぶにはそれなりの知名度が必要ね。」
と、桐ケ谷は自分の無力さを痛感しながら言った。
「そうですね・・・。」
と、高野は言った。
「ホール使用料も取られるし・・・。」
と、高野は小声で言った。
「え、何?」
と、小村は尋ねたが、
「いや、なんでもないわ。」
と高野は、はぐらかした。
「しばらく戦略を練ろう」
と、高野は言い、彼らはホールを出て、それぞれの家に帰った。
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