第3話 帝都警備隊の魔導騎士(ベルムバンツェ)

 ここはハドムス帝国の帝都ハディラ。

 

 帝都中心部であるが、その警備のために少数が配置されている人型機動兵器、魔導騎士ベルムバンツェ。その警備部隊の隊長であるバーレンティア大尉が僅かな異変に気付いた。


 上空に煌めく一筋の航跡。

 流星のように一瞬だけ光ったそれを視認したバーレンティア。それに魔導騎士ベルムバンツェシュバルゼルの魔力カウンターがわずかに反応したのだ。


「何か反応した……10時方向」

「大尉殿。何かとは何でしょうか?」

「分からん。何かだ!」

「自分の機体ハルハレイスでは何も検出されていません」

「そうなのかブラド少尉」

「反応はありませんでした。大尉殿」

「では気のせいか」

「そうではないかと。魔術師が魔力を噴射放出して飛行するならばその航跡ははっきりと探知できます。その……鳥か何かを見間違えたのではないかと……」

「そうかもな。ブラド少尉」

「念のため憲兵隊に連絡をしておきましょうか?」

「不要だ。先ほども帝都郊外で戦闘があった。無様にも敗退したようだが……」

「何があったのでしょうか」

「分からん。帝都の門ともいえるベルム跳開橋ちょうかいきょうを爆破して迄侵入を阻止したという事だ。しかも何者なのか分かっていない。我が帝都防衛隊も帝都憲兵師団もそちらの対応に追われているのが現状だ。余計な情報を流して混乱させぬ方が良いだろう」

「ごもっともです。大尉殿」


 そう。

 現状維持こそが肝要。

 バーレンティアはそう考えた。


 帝都警備部隊はその半数が帝都郊外へと向かった。

 憲兵師団も同様だった。


 彼らはそこで魔導騎士ベルムバンツェハルハレイスを屠った敵を追っている。余計な情報を流し、追跡部隊を迷わせてはならない。


 それに、先ほどの反応が万が一敵国の間者であったとしても、その対応は灰煙かいえん騎士団の仕事となる。


 バーレンティアは、あのような不気味な連中に手を貸すのはまっぴら御免だと考えていたからだ。


 かくしてネーゼ達は難なく目標とするアパートの屋上へとたどり着くことができたのだ。


「はーい。到着♡」


 ひらひらのフレアスカートをなびかせてネーゼはクルリと回転した。


「ネーゼ様。目立つ行動はお控えください」

「大丈夫よ。隠遁の法術を展開してますから一般人には見えません」


 ドレッドの忠告を受け流して微笑むネーゼだった。

 そして一行はそこにあるドアを開いて建物の中へと侵入していった。

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