推理編2
これでもし年間スケジュールがなくなってたら何としてもこの謎を解明したがるだろうな。しかし、今回の件は思っていたより「謎」だ。黄砂のことを考えると、誰かが窓を開け、窓から入ってきた風で散乱したと考えるのが普通だろう。
問題はなぜプリントが散乱した状態で放置されたかだ。窓が開いた状態で物が散乱しているのを発見した場合、普通は無視か、窓を閉めて拾うかのどちらかだ。
窓だけ閉めて散乱した物はそのままにする人間がいないとは言えないが少数派なんじゃないだろうか。とても急いでいて散乱した物を拾う余裕がなかった、という可能性もあるが、そこまでして急ぐ理由が分からない。
3つ目の選択肢として、窓が人の手を借りずに閉まったということもなくはないが(それこそ密室殺人で自動的に窓を閉めるトリックなんていくらでもある)、そうするためには仕掛けが必要だ。そんな仕掛けまで使ってプリントを散乱させることに意味があるとは思えない。そもそもなんで犯人(玲のの推理ごっこに乗っているようであまり使いたくないが便宜上こう表現するしかない)は窓を閉める必要があったんだ?
もう一度玲が書き残したメモを見る。そう言えば土居さんが花瓶に水を入れに行くとき、江戸川先生が「もうなくなった?」と言ってた気がする。花びんの水の減少と閉められた窓に因果関係があるとは思えないが、一応不自然な点ではある。
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・黄砂
・散乱したプリント
・花びんの中の減少した水
・閉められた窓
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考えていても埒があかない。玲は戻らないし俺も年間スケジュールを探しに行くか。そう思って席を立とうとしたとき、勢い良くドアが開くとともに玲が息を切らせて入ってきた。
「ない。年間スケジュールがないの!」
「プリントに混じって床に落ちたんだろ。」
「そう思って何回も探してみたけどないの。」
玲が机の上に置いたなら、拾い集めたプリントに混じっていると思ったが、そこにもないらしい。
ん?机の上に置いた年間スケジュールがない?
なるほど…減少した水の原因は察しがついた。ついでに犯人が小テストを散乱させた理由も。
「どうかした?」
「ごめんごめん、ちょっと今回の『謎』が分かりかけたから。ただ、犯人がなぜあの教室に行ったのかがまだ分からない。」
「ほんと!?わかった部分だけでも教えてよ!」
玲が机から身を乗り出すと、玲から借りていた恋愛小説が床に落ちた。友人からの借り物ということもあってか、慌てて玲が拾い上げる。
そう言えばこの本も最初は机に関する描写から始まるんだよな。
いや待てよ、『机から始まる』……?
ああ、そうか。
だいたいのことは分かった。ただ、問題はどうやって収拾をつけるかだ。
まあいい、できれば関係者には聞いてもらいたいし、とりあえず現場へ行こう。
腑に落ちない様子の玲とともに、1-2の教室へと向かった。
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