推理編1
【PM 4:30 @文芸部室】
玲は昔から推理小説が好きだったが、より正確には「推理すること」が好きなのである。しかし、小説のように現実は謎に満ちてはいない。そのため、玲は日常生活の些細な事を『事件』や『謎』として捉えるきらいがある。
「まずは状況確認ね。」
玲はそう言うとメモ帳につらつらと状況を書き始めた。
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場所 1-2教室
4時~4時15分ごろ 犯行時刻
4時15分~4時20分ごろ 土居さんが現場発見、先生と私達が到着
容疑者 ぽー先生、土居さん、増田くん、純
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「今分かっているのはこれだけね。」
玲は満足したという表情でペンを止めた。
えーと、どこから突っ込めばいいのだろうか…
「おいおい、何で容疑者とか書いてんの?それに何でまたその4人って決めつけてんの?」
「あくまで状況を客観的に書いてみただけよ。」
「いやいや、少なくとも俺は含まれないでしょ。ずっと一緒にいたわけだし。」
「嘘つきは信頼できません。他に気付いたことはない?」
恋愛小説の件はバレてたか。まあ、今時あそこまでベタな話でヒットするわけないしな。
「おそらく黄砂だろうけど床に砂が落ちてたな。掃除当番がしっかり掃いていないせいだと思うが。」
「掃除当番は関係ないと思うわ。砂はプリント用紙の上にもついてたから。きっとプリントがばらまかれた後に付いたものだと思うわ。」
むむ、言われてみれば確かに。俺はこの推理ごっこに乗り気なわけではないが、間違いを指摘されるのはやはり悔しい。
「じゃあ、簡単だろ。風で飛ばされたんだよ。」
「あのね、土居さんや先生が来た時からあの状態って言ってたでしょ。窓は閉まってたわ。」
「でも、黄砂のことを考えると風が入ってきたのは間違いないだろ。」
まさか犯人が外から砂を持ってきて上から降りかけるようなことはしないだろう。
「んー、黄砂の件はとりあえず置いといて、他の手がかりを考えましょ。他にあったことと言えば…」
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・途中で増田君が加わる
・土居さんが花びんの水を入れ替えに行こうしてこけそうになる
→増田くんに受け止められる
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「このくらいしかないかな。このタイミングで増田君が来たのは怪しいけど、これだけでは何とも言えないな…」
「美術部はもう終わったのか」と江戸川先生が言っていたので怪しくはないと思う。しかし、ここで口にすると何か言われそうなので、あえて黙っておいた。
ん、そう言えば江戸川先生と言えば…
「玲、年間スケジュールは江戸川先生に渡したんだよな?」
「何言っての、ちゃんと…あ!」
何か思い出したように玲は急に席を立った。
「渡しに行ったら『教室の机に置いといてくれ』って言われて机に上に置いたんだった。きっと、あのプリントの中にまぎれ混んでる。ちょっと様子見に行ってくる!」
そう言い残すと勢い良くドアを開けて部室を出て行った。入口越しに外を見ると雨が降りだしたようだ。
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