第22話 少女の苦悩。

「くっ……うぅ。すごいですよ、レナ様っ!」


「……んっんっ。もっと、もっと突きなさいっ!」


甘い声が響く。


必死に男――。


騎士団員だ。


そいつはあの、ジキムートに敗北を喫した者。


それが上に乗り、甘い声を出すレナの腰に必死に、自分の腰を打ち付けていく。


「はぁ……はぁっ! そうっ! すごいわね」


気持ちよさそうにその動きに腰を使い、深く受け入れていくレナ。すると……っ。


「ぐぅ……ううっ」


男が果てた。


「頑張ったご褒美よ」


「はぁはぁ。あっ、ありがとうございますっ」


果てた男に笑いかけるレナ。


すると次の男。


やはり騎士団員だ。


それに指で近くに来て欲しいと、誘う彼女。


「さぁ、御褒美よ」


そう言うとレナは、お尻を向けた。


するとそこに、新手の騎士団員が舌なめずりし、自分の一部を深く……。


豊満に揺れる尻の肉を掴んで、深く差し込んだっ!


「くぅ……ん。はぁ。やっぱり……。ふふっ。若いって良いわ」


嬉しそうに、えぐられる感覚を楽しむレナっ!


「しかしレナ様。この具合では、ヴィエッタ様にはお分かりいただけそうにないですな」


激しい、肉と肉のぶつかる音が響く中、男がレナに聞く。



「どうだかしら……ねぇ。はぁっ、あぁっ! でもなんとしても、〝ブルーブラッド(蒼白の生き血)″は奪わないと……。あぁんっ、もぉっ! そこはだめぇ」


笑いながらしかし、切なそうに、自分の尻をつかむレナ。


「そうですな。この神の英知さえあれば……」


そう言うと、レナの口に青い水を流し込む、副団長。


「我らは無敵になれる」


舌を這わせあう、裸の副長とレナ。


副団長はやおらレナを起こし、前に立つ。


そして――っ!


「くっ……ん~っ!?」


後ろで突き込んでいた兵が、もう一つのほうへ入り、副長が前から入る。


「くぅ……んっ!? はぁはぁっ。そうね、そうなる為にも……。あの娘にはきちんと教育してあげないとっ。どんな手を使っても、ね」


彼女は楽し気に、胸を弾ませた。







「ふぅ……。いざ聖地を手にした物の、大変ですわ。まぁ、さすが世界の4柱が一人、ダヌディナ神が鎮座する、聖地などと言う物よね。それを王族以外が手にするのは、法外と言えます、か。」


風が吹き抜ける廊下。


美しい少女が、薄い茶色の髪の毛が揺らしながら、一人で歩く。


陽光を反射させる、白い肌。


独り言をつぶやきながら歩く、ヴィエッタ。


「それも見越して軍に関しては、先に手なずけたまでは良かったのだけれど。そのせいで王家は反発状態。しかし、このままでは……。難しいわね」


少女が外を見ながらゆっくりと歩き、これからの計画を練り込んでいく。


「ですがこの聖地と言う物は、魔窟に他ならないわ。いくらでも問題を生み出してくれる。解決するにはわたくしだけでは無理だと、思い知らされました。とすると次は『ソレ』だけれども……。それは、タイミングが重要よ。私の計画に沿って、動いてもらわねば。……あら?」


考え事の途中。視界の端。


思いもよらぬものを見つけた少女。



「……すぅ……すぅ」


そこには揺り篭に収められた、小さな生き物。


ヴィエッタがそれに、目を這わした。


「ヴァン。こんな所で寝かされて……。乳母のギザベラは、どこに行ったのかしら?」


困ったように、辺りを見回すヴィエッタ。


その顔は何か――。


哀しそうだ。


自分とは半分血を同じくする小人。


それをまるで、視界に入れないように目を逸らす少女。


「んっ……」


「……。寒いの? 我慢なさい。あなたはこの、ニヴラドを継ぐ者なのですよ。どんな時も負けてはいけません」


「ぅっぷしゅ」


「……」


すると、ヴィエッタが何を考えたか、にじり寄っていく。



半分しか自分の血のつながらない、小さな次期当主の男児の下へ。


「ふぅ……。ふぅ……」


手を伸ばす。ゆっくりと確実に。


「はぁ……はぁ……」


呼吸が荒い。


だが確実に、その手は子供に届き――。


「ヴァン様っ!」



ビクッ!



「……っ。ギザベラ、どこに行っていたの? ヴァンが寒そうですわよ」


「すっ、すいません、ヴィエッタ様っ! その……。あなた様のお手を煩わせるような事は、決してっ! わたくしめが全てを行いますので、どうぞ。どうぞお行き下さいませっ」


ヴィエッタのすぐ目の前の子供を、急ぎ乳母が取り上げたっ!


そして、ヴィエッタから隠す様に抱きかかえるっ!


「……」


立ち尽くすヴィエッタ。


すると……。



「そうですわよ、ヴィエッタさん。あまり、ヴァンに近づかないで下さるかしら?」


後ろから声がかけられ、ヴィエッタが目をつむる。


「お義母様」


「これからご来賓の方との折衝があったので、身なりを整えてきたと思ったら、ふふっ。ヴィエッタさん、何度か言いましたわね? 貴女はヴァンに触らないで欲しいの。いくら元々の当主の娘とは言え、次期当主の幼い身を触れさせるのは……。ねぇ?」


乳母が抱く自分の子供を見やり、安否を入念に確認し始めるレナ。


「何かあったら困りますもの。自ら次期当主の権利から退いた、当主の娘。だけれども、ヴァンにとってその娘が安全とは、ねぇ?」


ひとしきりヴァンの体を確認すると、黒い髪が揺れる。


ゆっくりと靴音を鳴らしながら、レナがヴィエッタに近づいていくっ!


「いつ翻意を持つか分からない。お兄さんの事もあるでしょう? 不審死だったらしいじゃない」


近づくレナの、その威圧的な眼に、ヴィエッタは動じる事はない。


しっかりと相手を見据えている。


「あれは、救いようがない事故ですわよ、お義母様。お兄様はその……。お気を病んでらしたみたいでしたし」


「確か、同性愛者だったかしら? ふふっ、良い恥さらしよね。馬車で乱痴気した結果、その馬車が落ちるなんて。それと全く同じ血を引く貴方は、大丈夫なのかしら?」


「血――ですか?」


そのレナの言葉に、敏感に反応するヴィエッタ。


少女は殺気にも似た厳しい眼差しで、義母を睨み返していくっ!


だがレナは、動じる素振りはなく、顔を歪ませ笑う。


「不思議なのよ、私は。突然、何の前触れもなくあなたは、次期当主の座から降りた。理由を知る物はいない」


「……」


「お兄さんも突然、死んでしまった。貴方達兄弟には、何かしら問題があるのかもしれないわねぇ。同じ血を引き、よく似た顔。まるで双子みたいだったらしいじゃない?」


レナの顔が、ヴィエッタの間近に迫った。



「……」


ヴィエッタは動じず、義母とにらみ合う。


「何かあったんじゃないの? お兄さんの死に際して、あなたも何かを感じた。呪いでもかかっているのかしら、貴方達兄弟は。あなたの血筋には、何かがある。 違う?」


その瞬間っ!


「お母様、ひいてはお兄様への侮辱はやめなさい。 絶対に、なりませんよっ!」


カランッ!


ヴィエッタから殺気がほとばしるっ!


後ろで何かが壊れた音がしたっ!


だがレナがその、殺気を放つヴィエッタに一歩近づき……っ!


「あら……何か? そのような怖い空気、嫌だわぁ。質問しただけよ。ふふっ。城の誰もが不思議がっている事を、ね。」


「……」


「あなたはやはり、要注意かしら。ヴァンに何をするか分からないのですもの。そんな殺気立った目で、次期当主の前に出る事は認められませんわよっ!」


睨み返すレナ。


一触即発の空気に、乳母が怯えているっ!


「……。そうですわね。次は気を付けさせていただきますわ、お義母様」


義母から目を逸らし、足早に去り行くヴィエッタ。


足早の彼女は、その震える自分の手、それを押さえ……。


泣きそうな顔で、独り言ちる。


「危なかったわ。わたくしは何をしようと言うのかしら」

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