保健室

「それにしても、すごかったわねー。最初、イノシシでも突っ込んできたかと思ったわよ」

「痛いっ!!!直美先生もっと優しくしてよー!痛っ!!」

「も~、じっとしてないと痛くするよ?」

「あ、じゃあそれでお願いしまーす」

「えいっ!」

「いたーーーーいっ!」


なんだこいつら、、、


結局、僕たちは時間以内に登校できた。

顔や体中、擦り傷だらけだった僕らを見て、生活指導の先生が特別に保健室に行くことを許してくれた。


幸助と戯れているこの、なんか色っぽい人が保健室の先生らしいが、絶対にバカだ。

その証拠にこんなことを幸助と5分は続けている。

こんな光景をずっと見守っている僕自身も怪しいんじゃないかと少し不安になってきた。

ふと、時計を見ると9時前。


「あの、そろそろ教室に向かいますね」

「教室?あ、なんか君たちはそのまま入学式に合流でいいみたいよ!だからもうちょっとゆっくりしていきなよー!」

「いや、でもいきなり入学式にいくのは少」

「ありがとうございます!もうすこしいます!」

「、、、」


美人に弱い幸助はもう聞く耳を持たない状態だった。

確かに今教室に戻っても、遅刻してきた人として目立ってしまう。

だったら入学式にしれっと合流した方が良い気がしてきた。


「はい、温かいお茶飲んで」

「いっただいきまーす!」

「あ、ありがとうございます」


不思議と、この先生のふわふわした雰囲気に飲み込まれて、とりあえずお茶を飲むことにした。


「痛っ」

「あれー?もしかして君、猫舌?」

「違いますよ!口の中も切れてるみたいです」

「あらら、あんなことしたら当然よ。そうだ、なんであんな所から出てきたの?」

「遅刻しそうだったんで近道しようと思って」

「よくあの道見つけたわね、先生たちも知らなかったわ」


自分でもなんであの道を知っていたのかは、わからなかった。

でも、「デジャヴ」が初めて役に立ったのだ。


「先生、デジャヴってよく見ますか?」


ボソッと口に出していたことに自分でびっくりしていた。


「デジャヴって、『あ、この光景みたことある!』ってやつよね?」

「そうです…いや別になんでもないです」

「頭でも打っておかしくなったんじゃねーの?」

「ははは、そうかもね」

「ほんと、あなた達仲良しね」

「はい!僕たちこの学校卒業したらコンビ組んでお笑い芸人になるので応援してくださいね!」

そう言って幸助が決めポーズをした瞬間。


ガッシャーーーン


と豪快に保健室のドアが開いた。


「長谷川!小川!お前らいつまでここにいるんだ!!」

そこには、フェンスの外にいた僕たちを見つけてくれた生活指導の先生が鬼の形相で立っていた。

真っ赤なジャージにスポーツ刈りの頭、絵に描いたような熱血先生だった。


「入学式の時間過ぎてるぞ!いますぐ体育館に来い!!」


熱血先生に引きずられながら体育館に連れていかれる僕らを、直美先生は、口パクで「ごめんね」と申し訳なさそうな顔をして僕たちを見送っていた。


腐れ縁の幼馴染に、美人な保健室の先生、そして熱血教師。

俺は漫画の主人公にでもなったのか?

だとしたら次に出てくるのは、天然バカ美少女、、、いや天然バカは直美先生で埋まっている。

ってことは、ツンデレ美少女か。



そうこう考えていると、体育館の前に着いた。

あれ、この状況ってまずいんじゃないか?

「あれ、智也、この状況で入っていったらめっちゃ目立つよね?」

「ああ」


今になって思う、遅刻してでも普通に登校すればよかった。

入学式に遅れて参加なんて、何世代前のヤンキー漫画の主人公だよ。

「デジャヴ」が役に立ったなんて言葉、今すぐ取り消したい。


「いくぞ、目立たないように列に入れよ」

「あの、先生。僕たちまだ自分のクラス知らないんですけど…」

「お前たちは1組だ」

「俺たち?」

「あぁ、二人とも俺のクラスの生徒だ」

「うおぉ、やったな智也!さすがコンビだな!」


最悪だ、幸助と同じクラスで1年間静かに目立たず過ごす計画に支障がでることは間違いない。

そして担任がこの熱血教師。

先が思いやられる。

ただ、今この状況で幸助とバラバラにならずに済むのは、不幸中の幸いだ。

とにかく目立たないように、、、


ガッシャーーーン


は?

この熱血バカ何やってんの!?


体育館中に響いた音に全校生徒の視線が僕たちに向いた。








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死んだら過去に生まれ変わって、前世の自分が隣にいるんですが @kaede_tubaki

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