登校
今日もいつものように、見たことのあるようなニュースを横目に、入学式に向かう準備をしていた。
「おっ、遂に我が弟も高校生かー!」
そう言いながらネクタイを微調整する姉、
「自分でできるよ、弁当作ってあって、僕は入学式終わったらお昼前には帰ってくるから。洗い物してから出かけてくれよ」
「えー、お弁当隠して、学校に私が届けてクラスのみんなから、お前の姉ちゃん美人じゃん!って言われて学校の人気者にさせてあげようとしたのにー」
「頼むからやめてくれ、じゃあ後は任せたから」
「かしこまりました!いってらっしゃいませ!!」
と、背中を玄関まで押されていつも通り元気よく見送られた。
エレベーターを降りて、マンションを出るとまだ姉の声が聞こえたような気がした。
ふと見上げると、ベランダから何か叫んでいた。
「智也!お弁当忘れてるよー!」
姉よ、さっきの会話はなんだったんだ。
「今日!!入学式!!終わったら!!帰る!!弁当!!いらない!!」
「え!ラッキー。いただきまーす!」
いつもこんなだ。
姉は僕と10個以上離れてて僕が物心つく前に家の火事で死んだ両親に代わって僕の面倒を見てくれていた。
アホだけどお母さんみたいな存在。
「おや~、相変わらず仲良し姉弟だね~」
「うるさい、いつからいたんだよ」
幼馴染の小川幸助だ。
「そんな冷たいこと言うなよー、幼、小、中、高って腐れ縁の仲なんだからさ、この流れだと二人でコンビ組んでお笑い芸人になる計算だからな!」
「だったら地下労働施設で死ぬまで働いてたほうが幸せそうだよ」
「おお!そしたら鉄骨綱渡りは支えあって進もうな!」
こいつ、意地でも俺に付いて来る予定だな、、、
そうこうしているうちに駅に着いた。
「おい!智也、電車通学なんて夢みたいだな!」
あまりの幸助のテンションの高さに周りのサラリーマン達にチラチラ見られている事に気がつき、僕は携帯をいじって無視することにした。
しばらくして、幸助が僕の肩を静かに叩いた。
「ねー、降りる駅って能登山駅だっけ?」
「そうだよ」
「今、これ何駅?」
「見たらわかるだろ、能登山えk、、、うおおぉ!早く降りろ!」
その瞬間にドアが閉じた。
乗っていた電車は急行、時間には余裕を持っていたつもりだが、コンビニに寄る時間くらいしか計算していなかった。
「えーー!初日から俺ら遅刻!?なんでよー、運転手に言えば降ろしてくれるかな!?」
今度はパニックになった幸助に周りのサラリーマン達がうるさそうにチラチラ見ていることに気がつき、静かに冷静に振舞った。
「まだ大丈夫。」
結局、学校の最寄り駅に着いたのは、登校時間3分前。
「、、、、、」
さっきまでとは別人のように諦めて静かにしている幸助。
歩いて10分の道を3分は走っても厳しい、なんとかならないか考えながらとりあえず改札を出ると、酷い頭痛と既視感に襲われた。
駅前の大きな桜の木、古びたコンビニ、変な形をしたバスロータリー。
「デジャヴ」だ。
「幸助、付いてきて、まだ間に合う」
「は!?学校はあっちだよ!!」
「いいから早く」
そう言って学校と反対の道に走った。
20秒ほど走るとそこには、汚い駐輪場があった。
「やっぱり、、、」
「智也、、天国だ!!」
「好きな自転車選べ!!行くぞ!」
そして僕たちはアクセル全開で通学路へ急いだ。
でもこれでもまだ間に合わない、思い出せ、思い出せ。
そうだ!この道!
「えーーー!こんな道知らないよ!!」
「いくぞーーー!」
ガタガタ暴れる自転車、こんな獣道を走ってたら当たり前だ。
お尻が四つに割れそうなくらいガタゴト弾んでいた。
ハンドルを取られないように必死になっていたとき、目の前に緑色のフェンスが現れた。
「やばい」
ガッシャーーン
2人してフェンスに体当たりして自転車のタイヤはグニャリと曲がっていた。
「おい、お前たち何してる!」
「あら先生、この子たち、うちの制服着てますよ」
図太い声と、優しそうな女の人の声で目が覚めた。
それと同時に学校のチャイムが鳴り響いた。
「間に合った、、、」
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