蛇に足を描くような
(付録)魔法目録 Ⅰ
魔素
水を媒介に世界を巡る粒子。
呼吸によって生物の体内、特に血中に取り込まれており、これを消費することで魔法の行使が可能となる。
基本的には自身の体内にある魔素しか使用できないが、魔剣など例外もある。
魔法三原則
この世界での魔法は、汎用魔法はもちろん、多種多様な固有魔法も含め、以下三つの原則に縛られている。
[一、魔素等価の原則]
魔法の効力は相応の魔素を消費することで発生・維持される。魔素の供給が途絶えた場合、いかなる魔法もその瞬間に消滅する。
[一、認識前提の原則]
魔法は基本的に術者の視界内にしか発現できない。
[一、概念限界の原則]
術者よりも高い概念値を持つものの操作は不可能である。
術者がヒトの場合、『精霊』『神』『魔王』『竜』『概念そのもの』などが操作不可にあたる。
固有魔法
人間一人にひとつだけ、神の許したもうた奇跡。
固有という言葉の通り、まったく同じものは決して存在しない。人間の最後の切り札。
概ね十から十五歳ほど、遅くとも二十歳には使用可能になる。女性は男性と比べて早く獲得する傾向にある。獲得時には頭に魔法の
Ex.固有魔法の属性 Ⅰ
多種多様な固有魔法だが、そこにはある程度の枠が存在するらしいことが分かっている。
属性ごとの数は大きく偏っており、『地球』属性だけで全体の七割を占め、『月』『金星』『水星』『火星』『太陽』の順に希少となる。
多くの場合冠名である程度推測できる。
実現の魔法。リオの固有魔法。
魔法存在を問答無用で同質の物理存在に変換する。
魔法を打ち消すわけではないので防御には使えない。
例えば自分に迫る魔法の火にこの魔法をかけたとして、物理の火に焼かれるだけである。
ただし、物理存在の担保に当然魔素は必要ない。
一度この魔法を受けた魔法存在は、例えリオが死んだとしてもその場に物理存在として在り続ける。
これこそは魔法三原則のうち『魔素等価の原則』を無視する奇跡。いわゆる神秘魔法のひとつ。
基本的にどんな魔法産物にも使うことができるが、本来生成物の維持が問題となりがちな錬金の魔法とは特に相性が良い。これもあってリオは平時より錬金の魔法を好んでいる。
魔法によっては術者のコントロールを阻み暴走させることもできるが、この場合ほぼ確実に相討ち目的になる。第二原理には通常通り捉えられている以上、視界内でしか扱えない=距離の問題で暴走に巻き込まれるため。
これは、英雄という幻想を現実へと繋ぎ止める、『英雄の息子』としての出生が色濃く現れた魔法。
神にも等しき男が、それでも人間であった証。
これは幻想を殺す魔法であると同時に、幻想を生かす魔法でもある。
楽団の魔法。ネージュの固有魔法。
自己を十八人まで複製する。複製された自己は『魔法存在である』という点以外は本人と同等の性質を持つ。各々で思考し行動しつつ、また他複製・本人とそうした思考を共有でき、その上それぞれ別に魔法も行使できる。
『各々で思考し、これを共有する』という性質から、単純に視界=魔法の行使が可能な範囲も増える。またそれは同時に、一度発動してしまえば分身が本人の視界外にあってもこの魔法は維持できるということでもある。魔法三原則のうち『認識前提の原則』を、事実上無視するに近い挙動。(厳密には課せられた条件を達成しているだけで無視しているわけではないので、神秘魔法には数えられない。)
反面、この性質は『魔法の終了後、複数の自我が混線する』という副作用も生む。これは魔法の直接の効果ではなく、例えば魔法の炎で焼かれた大地に焦げ跡が残るようなもの。この状態に陥ったネージュはほぼ行動不能であり、一度睡眠等で意識をリセットしない限り再起は困難である。
なお、あくまで『自己の複製』である以上、分身の生成状態は本人のコンディションに強く依存する。
竜化の魔法。大英雄ゼンの固有魔法。
自身に竜の形質を添加する魔法。
変化の程度は融通がきき、竜の性質を持つ人間から本物の竜まで自由自在。
これなるは、魔法三原則のうち『概念限界の原則』を無視する、いわゆる神秘魔法のひとつ。
更に竜を降ろすことで自身の概念値そのものも高まり、『魔王』『竜』『精霊』などへ魔法での直接干渉が可能となる。
この固有魔法と聖なる剣、そして何より己の意思を以て、英雄は戦い続けた。
月食の魔法。Bクラス冒険者ゾーフェンの固有魔法。
巨大な腕を生成し、これを操る魔法。
腕には侵食の魔法の上位互換が付加されており、あらゆるものを食い破るという特性を持つ。つまるところ防御不可。ただし回避は可能であるほか、概念限界の原則により竜鱗などは侵食できない。
魔剣
大気中の魔素を使用して、術者とは別回路で魔法を発現できる装備。形が槍や盾であっても前述の性質を持っているならば一括して魔剣と呼ぶ。
かつて水面に浮かぶ月から鍛えられたとされる聖剣。
魔素解放を行うと、周囲の魔素をありったけ使用して光の魔法の延長を発現する。
照明の魔法とも呼ばれる通り、本来照明程度にしか使えない光の魔法だが、この魔剣の場合その規模・密度・指向性が桁外れであり、対象を焼き尽くす熱光線として機能する。
ただし、一度解放を行うと周囲の魔素が希薄になるので、基本的に同じ場所で二度は使えない。
この世に二振りとない極めて強力な魔剣だが、唯一にして最大の問題として、この剣は勇者にしか抜けない。
勇者の判定基準は定かでないが、少なくともゼン・ベックマンは誰もが認める大英雄であった。
先の魔王との戦闘時に損壊したものを、現代の魔剣打ちであるエーゼ・ミーガ(ネージュの父)が鍛え直したものが
元来長剣であったが、打ち直しに足る部分を取捨選択した結果、やむを得ず短剣に形を変えた。このため出力はやや低下しているが、性質自体に変わりはない。
ネージュが愛用する、槍型の魔剣。魔素解放を行うと、非常に強固な障壁を発現する。エーゼ・ミーガの作。
父は立派な英雄でした 郡冷蔵 @icestick
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