第17話 奴隷商5

「お待ちしておりました。主様。竜人族が戦士、ツバキと申します。若輩な身なれど身命を賭して主様をお守り致します」

「お待ちしておりました。旦那様。竜人族、シオンと申します。病弱な身ではありますが、出来得る限りの働きで旦那様にお仕え致します」


再び彼女達の部屋に入ると二人は床に膝を付いて頭を垂れていた。先ほどまでと雰囲気が違う。何か神々しいというか、胸が高鳴る。まるでこの世の者ではない、天女が降臨しているかのような美しさが二人にあった。


「ッ、あ、え、っと。お、俺が、二人の主人になったヤマトです。よろしく」


妖艶な笑みとあどけない笑顔が俺の思考を殺しに掛かっている。暗殺者だ。微笑みで俺を殺すつもりか!?


「ヤマト君、見惚れている所申し訳ないんだけど、私は領主の元に報告に行かないといけないから続きは今夜にでも宿でやってくれるかな?」

「私もヤマト様のご自宅の手配に向かいます。明日の朝には幾つかご用意しておきますのでメルビン様の詰め所で待ち合わせ致しましょう」


おっとやばい、背後に二人が居たのを完全に忘れていた。そうか、今日は宿だったな。流石に今日の今日で住める家は難しいと言われたんだった。

明日には内覧に行って早ければ明日の昼過ぎには転居して良いらしいけど。流石は領主の臣下。仕事が早い。


ツバキとシオンの二人も立たせて挨拶もそこそこに早速出ていく準備をしてもらう。メルビンさん達は部屋の外で待っているらしい。二人で話し合いたい事があるんだろうね。主に俺の今後についてとか。


ツバキ達の荷物は少量の着替えぐらいで小さな鞄一つで十分入るぐらいだった。…………うん。俺より多いね。俺今持ってる銀貨とポーションとギルドカードだけだし。

とは言え、まずは宿を決めて彼女達と俺の日用品の買い出しからしないとな。


「あ、シオンは身体は大丈夫なのか?」

「はい、旦那様に頂いたお薬のお陰でしばらくの間は動けます」

「いつもより効果の高いポーションだったみたいですわね。普段使って頂くポーションはもう少しランクを落として頂いても大丈夫だと思いますわ。余り無理をして支払いが滞る訳には参りませんから」


そうなのか? ポーションが効いている間は痛みが無いならEランクでいいのか? 高ランクポーションほど持続時間が長いのかな?

Eランクポーションなら十六本作れるから毎日半分ぐらい渡したら良いのかな? ここで話す訳にもいかないし宿で聞こう。

今は手持ちがDランクポーション一本とEランクポーショ三本とFランクポーション三本か。とりあえず全部渡しとけば明日まで持つかな?


「じゃあ、今日のところはシオンにこれを渡しとくよ。キツイ時は使って良いから。足りなくなりそうなら言ってね」


シオンは13歳ぐらいの妹みたいな感じだから少し話易いな。今の俺は身長が縮んでいるからシオンの方が俺より少し背が高いんだけどね。身長は150センチぐらいかな? 俺も成人前のはずだけど背が低いよな? まさか12歳ぐらいとか言わないよな? 


「――え? こんなに宜しいのですか!?」

「うん。ポーションは中毒性とかないらしいから何本飲んでも害はないらしいよ」


正確には中毒性が合ってもポーションが癒すらしい。これは商業ギルドのミリスさんに聞いていたことだから間違いないだろう。

森の中で全種類飲んだりしてたからね。普通に考えたら体に悪そうだ。


「随分と羽振りが良いですわね? 支払いが滞る心配が無いのでしたら私も少しだけ欲しい物がございますわぁ」

「ええっと、何でしょう?」


ツバキさんは二十歳ぐらいだと思うけど色気が凄い。仕草が一々エロイ。人差し指を唇に当てておねだりする必要ありますか?

身長は今の俺からしたら見上げる必要がある。190センチはありそうだ。バレーボール選手みたいに背が高くて引き締まった身体付きなのに出るとこはしっかり出ている。普段の姿勢が両手を組んでお胸を持ち上げているから更にエロイ。


「私ほんの少しだけお酒を嗜みますの。贅沢品だとは理解しておりますけど、ほんの少しだけ、ご都合つきません?」


俺の肩にすりよって胸を背中に押し付けながら耳元で色気たっぷりに囁くのを止めて欲しい。背中がゾクリとしたぞ。色っぽいのに恐怖を感じる。


「お姉さま! 旦那様が困っておりますよ!」

「あら? まんざらでもない感じですわよ? それにシオンばかりズルいですわ。私も主様の愛が欲しいですわ」

「あー、はいはい。後で日用品を買いに行くからその時に手持ちが足りたらね?」

「旦那様、お姉さまを甘やかしてはいけませんよ? 直ぐに調子に乗りますからね?」

「ふふふ、良い女に欲しい物を買い与えるのは男の甲斐ですわよね?」

「そうだね。十分に働いてくれるなら酒代ぐらい経費だって思うことにするよ」

「あら? シオン、聞きました? これが出来る男と言うものですわよ。貴女もこの様な殿方に身を捧げるのですよ」

「お姉さま! いい加減お黙り下さいませ!!」


シオンの怒気に何事だとメルビンさんが部屋に入って来たところで話は終わった。深窓のシオン、怒らせたら怖そうだ。


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