第11怪 サトリ
今日は色々あったけど意外な話が聞けて良かった〜。
でもこの刀…たしか髭切って言ってたよね。少し調べてみよう。
―――おっ!載ってた。簡単に言うと源氏重代の宝刀で、罪人の首をはねたところ、髭もろともに切ったことから名づけられた……かぁ
漸十郎が言っていた加護の事も記されていた。
……と書かれている。
こんな代物を何故私にくれたのだろうか……取り敢えずこれは短縮化させて、バックに入れておこう。
対妖魔戦での護身用として持っておくのだ。
この間だって大天狗が居たけど私は無力過ぎて、天狐ちゃんに頼りっきりだったしね。
まぁ人間だし、対妖魔で無力なのは当たり前なんだけど。
……今日はもう疲れたし少しお昼寝しよう。
―――目が覚めた時には既に日が落ちていて、夜になりかけていた。
寝すぎた……と一人言を言いながら、自販機で買っておいた天然水を一杯分コップに注ぎ一気に喉に流し込む。
そして、シャワーを浴び、外に行くといつもながらに山があったので、今回は懐中電灯を片手に持ち森に入る。
すると、商店街では祭りがあってるのだろうか、山に足を踏み入れた瞬間陽気な音楽が聞こえてきた。
しかし私はまだ商店街には行かず、天狐の居る神社へと向かった。
―――けれどそこには天狐の姿は無かった。
商店街にでも行ったのかな……見に行ってみよう。
あやかし商店街と表記されたアーチ看板を潜った瞬間私は驚きを隠せなかった。
なんと、私が予想した通り本当に祭りが行われていたのだ。
提灯は赤く光っており、手猫提灯を持った妖怪なども沢山歩いていた。
それに、読めない字で書かれた立て札なども設置してあった。
さらに、ここだけ別次元かの様に、外の音が全く聞こえないのだ。
昨日は普通に車の音が聞こえていたのに……と心の中で思っていると、誰かが話しかけて来た。
振り返ってみるとそこには、艶のあるショートボブで髪色は水色それに、服装は
淡紅色の着物の裾に桜を散らした羽織の女の子が居た。
「今日はお祭りですから商店街には加護がかけられてるんですよ!」
あれ、私声に出したっけ……
「ボク、心の声が読めちゃうんです!」
「こ、心が読めるの?それは凄いね。」
「そうですか?不便なことも多いですよ。ボクの悪口なんかが聞こえたらとても傷つきます……」
「そっか……」
少し沈黙があったが、この子は少し暗い顔から一気に笑顔になり、また話し始めた。
「それより人が来るなんて珍しいね!何百年振りだよ。」
何百年!?ここってそんな前からあるの?!
「うん、あるよ。それ以前からあったかもね〜。ボクが生まれたのが……確か百三十年前だから。」
見た目は少女なのに、年齢は遥か上……まさか天狐もそのくらいなのかな……
「……そうだ、君の名前聞きたいな。」
「私?私は美影 李華 貴女は?」
「ボクはサトリ。姓も名も無い只のサトリだよ。」
「そっか!宜しくねサトリちゃん!」
「うん。よろしく!何かあったらいつでも呼んでね!名前呼ぶだけで李華の妖力で伝わって行けるから。」
妖力……?まぁ今はまだ知らなくていいや。
―――サトリと話してるうちに時間だけが過ぎていった。
「サトリちゃんそろそろ家に戻るね」
そう言うとサトリは少し悲しそうな表情をした。
「李華……また来てね?あと呼び捨てで良いよ!」
「うん、サトリ今日はありがとう!楽しかったよ。じゃあね!」
そう別れを告げて、来た道を引き返す。
後ろを見ると、段々と靄がかかって商店街は消えかかっていた……
―――いつの間にか山も消えて、私は空き地に一人佇んでいた。
そしてアパートのドアを開けようと鍵穴に鍵を差し込むが何故か逆に鍵を閉めてしまった。
私は慎重に部屋を見て回っていると、寝室で物音がしたので、恐る恐るドアを開けた。
真っ暗闇だったが、月の光が部屋に差し込み何者かの影が良く見えた。
その正体は直ぐに分かった。
「何で荷物を持って天狐ちゃんが居るの!?」
そう天狐だった。
「今日から宜しくなのじゃ!」
「えぇぇ!!ダメだよ!」
と驚き断ると、天狐はうるうるとした目で、
「ダメ……か?」と聞いてきた。
……私は天狐と住むことになった。
あやかし商店街 さしみ/鱵 @0__Sasimi__0
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