第2話 方針

「よし!俺はそろそろ出ますね」


カズは当然初めての異世界召喚から一日目を生き抜くことが出来た。


今現在アメの家が営業している宿屋『水瓶亭』からチェックアウトしようとしていたカズの姿がそこにはあった。


「カズ兄ぃー、もぉ行っちゃうの?」


「うん、やらなきゃいけない事やこの先のことも考えなくちゃ行けないからね」


「うぅ…」


アメは相当カズを気に入っているらしく離れたくないらしい


「こーら!カズさん困ってるでしょう?」


アメの母親の『クラウォン』さんがアメとカズの別れの手伝ってくれる。


「大丈夫だよ、この先もこの宿にはお世話になるつもりだから。あっ!あと今日の分のお金もちゃんと稼いで払いますから!」


「気にしなくていいですよ。アメを連れて帰ってくれた事もあるので。次からはちゃんと払って下さいね」


クラウォンさんが片目を閉じてみせた。


(この人普通に美人なんだよなぁ)


女性の顔を見続ける変態の姿がそこにはあった…


ボケーと見ていたカズが我に返ると顔を赤くして首を強く左右に振った。




「おーと、いけない!そろそろ出なくてはぁー。あ、じゃあまた会おうなアメ!」


カズは銭袋とクラウォンから貰った弁当を持ってしばらくお世話になるであろう水瓶亭を後にした。


クラウォンさんから貰ったギルドへの経路が示された地図を片手にカズは歩き出した。


「そう言えばこのカナル王国って色んな種族が多いんだっけ?」


カズはふとあの親切な白髪イケメンだを思い出す。


冒険者になればラークにまた会えるだろうか


そんな期待をしながらカズは少し足を早めた。










「ここがギルドか…」


カズは『ギルド』に到着した。


その大きな建物の中から沢山の人達が出てきたり入ったりを繰り返していてその9割が冒険者達でごった返していた。


「い、異世界やべぇー」


流石に異世界とは言え迫力がある


(た、多分俺も大丈夫だよな…)


今さらカズは『冒険者』と言った日本には絶対にありえない職業に対してのプレッシャーがカズの足を引っ張り始めた。


「ブー ブー ブー…ブー ブー ブー…」


右ポケットからバイブ振動がやって来た


「え?」


(あ、俺ってそー言えばスマホ持ってたんだっけ…え?!電話来た?!)


急いでカズははスマホを確認した。画面には全く読めない文字が出ていたがカズは震える手で耳にスマホを当てた。


「もしもし!誰?!ねぇ!マジで誰?!誰ぇぇぇぇぇ!!」


「あ、あのぉーすみません、少しだけ声を下げて貰えると嬉しいです。」


聞いたことの無い声だった。日本人じゃない事は確定した。恐らく女性だろう、その声は絶対に美少女の声だとカズは勝手に確信したり。


「本当にすみません!すみません!いきなり召喚してしまって」


「は?」


何を言っているのか全く分からない。


「えっと?」


「だからっ!私が貴方の召喚主なんです!」


「……」


「……」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!!!!!!!!!!」


「私はカナル王国の大冒険者『シェルファ・ラリオ』って言います。」


「いやっ!いやいやいやいや!待って!!勝手に自己紹介して話進めないで?『召喚主』って『召喚』する『主』の召喚主?!」


「すみません。あと、60秒しか喋れないから説明します。私はもう既に死んでいます。」


早速意味がわからんがカズは黙って聞いてみる


「今喋っているのは私が最後に残した魂です。」


「は、はぁ…」


分からないけど取りあえず理解に力を入れる


「『大魔術師シェルファ』と言えば知名度はなかなかあると思います。」


「あ、はい」


「私は雇われてある貴族の護衛を務めさせて貰っていたのですが…あの豚っ!失礼…あの貴族にハメられていた事に気が付かず殺されてしまうと言った結果で終わってしまいました。」


途中で豚とか聞こえたけど中々気の毒な話だ。


「召喚で助けを呼んで蹴散らしてもらおうと思ったのですが、手元が狂って召喚場所が全く違う場所になってしまいましてこのような最後です。脳通信で仲間に貴方を助けに向かわせたのですが仲間もしっかりと殺されました。」


「俺そこにいても普通に殺されるよ?多分…」


「元々『召喚』と言うのは禁術であり莫大な魔力を使う事から使用は重罪だったのです。」


「何故使った?」


「死ぬか生きるかなら行きたいでしょう?」


「確かに…」


普通に納得出来てしまった。


「まぁ結果から言って貴方の魔力と身体能力は時間が経つに連れて強化されていくのでご安心を…あと!魔力に関しては桁外れだと思うので悪用は絶っ……ツー、ツー、ツー、」


時間使い果たしたっぽい。だがちゃんとチート能力は、あるっぽいので生きていけるかもしれない


「ん、んじゃあ !気を取り直してギルドにぃー、とーちゃーくっ!!」


扉を勢いよく開けて中に入ると横にずらーっと並んだ受付窓口が目に飛び込んだ。


「銀行見たい…」


カズはこう言った光景を見るとどうでもいい事が言いたくなる病気に犯されていた。


だが実際に銀行のような場所であった。


冒険者達は受付窓口に行くなり薄いプレートの様なものを水晶にタッチしてから順番がやってくるシステムらしい。


「俺そんなの持ってないけど…」


いきなりの分からないことだらけに汗ダラダラの彼に聞き覚えのある声がふっかかってきた。


「よぉ!兄弟!元気してたか?」


「ラーク!!」


白髪イケメンが更にイケメンに見えた。


「今から冒険者登録か?」


「あぁ、そうなんだよ。だけど何処に行けば良いのか全く分かんなくてちょうど困っていた所なんだよな。」


よく見るとラークは三人の仲間たちと一緒にいた。きっと昨日言っていたパーティーメンバーだろう。


「しょーがねぇなぁ…流石に兄弟が困ってたら助けない訳にゃいかねぇもんなぁ。お前ら先に行っといてくれよ」


「あぁ、了解!ラークもあまり遅くなり過ぎるなよ?」


手短に仲間との会話を済ませたラークは「そんじゃぁ」と続けた。


「登録だったよな、じゃーまずは…あそこだな!」


ラークが指を指した場所は沢山列がある中の一つだけ空いた列だ。


「あそこは登録用窓口つって初めての『冒険者』になる奴はあそこで魔力量や名前を調べてプレートを作るんだよ。それで血判状書いて冒険者だ!」


「あぁ…血判状ね…」


そう、彼ホソダ・カズは血がメチャクチャ怖いのだ!!
























あれは俺が小学校低学年だった時のこと…


「細田和君ー!採血ですよー。」


「ほらっ和?あんたの番でしょ?後ろつっかえてるのよ」


「嫌だぁー!血の契約は既にアント・ロメオと成立している!だからダメなのぉー!」


「何訳わかんないことっ!すみません…」


母と看護師に無理やり処刑台に座らせられた。その瞬間母親の顔が鬼に見えた気がする。


「はーい三秒チクッとするから我慢してね?」


「や!やめっ、辞めてくれぇぇぇぇ!!」




その日からカズは採血と病院が嫌いになった。


その後…


「なぁ、カズ!それモ○ハンだろ?なんでずっと素材ばっかり集めてんだよ」


「血が怖いからに決まってんだろ?」


「じゃーなんでモ○ハンやってんだよ?!」


「モ○ハンには別の楽しみ方があるからに決まってんだろ?」


「な、なんだよ?」


「まずはアイ○ーのファッションショーだろ?そして魚釣ったりだろ?そして素材集めてそして売る!!」


「なんでなんで集めたもん売るんだよ?!大した金にならねぇのに…」


「コツコツお金貯めるのが楽しいからに決まってんだろ?」


その言葉を聞いて友達がカズの肩にぽんと手を置いて言った


「どう○つの森やれよ」


「……」


「……」

























と言った黒歴史が会ったぐらいだ。


「うう、採血…採血…採血…」


黒歴史のフラッシュバックで足が床に張り付いて動けない


「そー言えばお前まだ裸足だったのかよ?」


「あ、そう言えば」


「出たらすぐの店で装備整えれるからそこで買えよ」


「おお、おっけ」


「お、おっけ?」


カズは左ポケットに入れてある銭袋をポンポンと叩いた。


「じゃあ行こうか!」


「う、うぇーい…」


カズは達は受付に足を運んだ。


「じゃあなカズ俺は外で待ってる仲間んとこ行くから!後は一人で大丈夫だろう?またな!」


カズはボーッとして何呟いている


ラークは首を傾げてから一人で外に出ていった。


「なんだアイツ?なんかあったか?」







「ホソダ・カズさんでよろしいですか?」


「採血……怖くない採血…怖くない」


「ほ?ホソダ・カズさん?」


「ひゃい?!…あっ、すいません。」


「ぷっっ…」


みっともない返事をしてしまった。受付のお姉さんも笑いが堪えれていない。


「次にこの水晶に触れて下さい」


「これが例の魔力量を測るとか言ってたヤツ?」


「はい、ご存知でしたか?水晶玉の光の強さで魔力量を測ります。」


「まぁ」


カズは水晶に手を近ずけたら瞬間水晶玉が粉々に弾け飛んだ。飛んだ破片がカズの触れようとしていた親指に突き刺さった。


「ギャァァァー!!痛てぇよぉ!」


「嘘!ありえない…こんな事、カズさん大丈夫ですか?」


「血が!血がこんなに!!」


親指が少しだけ切れて血が出ている


「じゃあ先に血判状を書きましょう」


「な、なるほど!その手が」


カズは不幸中の幸に自ら指を切らなくて済んだ。


血判状を書き終えたカズは再び魔力量の検査を行おうとしていた。


「それではこの水晶に触れて下さい」


「はい、」


(流石に二回目は…)


「バリーン!!!!!!!!!」


また水晶玉に手を近ずけた瞬間に強く発光して粉々に砕け散った。


今度は何とか回避出来たが二回目は流石にカズも故障とは考えにくかった。


「カズさん…測定不能です。」


「それって俺が強過ぎたりしちゃう?」


「はい、そのようです」


「なんつっ…ん?」


周りの人々の視線が一気にこちらに集まった。


「見たかアイツ?!今触れても無いのに光って粉々だぜ?」


「あぁ、見た見たどんなだよ…」


周りの人々がざわつき出した


「ど、ドッキリでしたー!!」


カズが流石に気まずくなったのを感じた為、日本じゃ当たり前の全部嘘だよ作戦にする事にした。


(こんなの通じるのかよ?)


ゴクリと固唾を飲んだ


「んだよ、驚かせやがって…」


「アハハハハハハ!!」


とびきりのスマイルを作り出してカズは難所を、突破した。


「ですが、測れないんじゃどうしましょう…」


受付嬢が本気で困り始めた。その時


「182000じゃと?!…」


「か、会長!」


「え?誰?」


そこに現れたのは片目に水晶玉の様なものはめた老人だった。付け加えると結構金持ちっぽい…


「そこにおる坊主の魔力量が182000と言っとるんじゃ」


「じゅっ!!182000?!」


「じゅっ!!182000?!ってどうなんだ?」


カズはこの世界の常識を知らない為取りあえずその場の雰囲気に、合わせてみる


「水晶眼のワシが言っとるんじゃ!間違い無い!」


「か、カズしゃんの魔力量が出ましたぁ…」


受付嬢も、混乱しているらしい


「この魔力量ってどんなもんなんですね?」


カズが尋ねると受付嬢はかなり驚いていた


「自分の実力で分からないんですか?敵無しですよ!!」


強いらしい…なんなら最強らしい。異世界あるあるアッパレである。


「こ、これ!プレートです!ブロンズですけど…ブロンズって、納得いかないなぁ」


「あ、あざます…」


銅でできているプレートを受け取った後会長と呼ばれる老人が話しかけてきた。


「お主、名はカズと言ったか?」


「はい…」


「実はここのギルドはワシが会長をやっとるのじゃよ。」


「お、お世話になります。」


「ワシもガンガンお世話になっちゃうから気を付けとけい。」


急になっちゃうとか言ってきたけど…


それだけ残して会長はどこかに行ってしまった。


「それではjobは何になされますか?」


冷静さを取り戻した受付嬢が再び丁寧に聞いてくる


「何があるの?」


「えーと、こちらがリストになります。」


「実は俺字が読め…る?!」


「はい?」


「何でもないっす!」


(見たこと無いのになんで読めるんだよ…)


「えとっ、えー…そーだな、この『アサシン』にします。」


カズは昔から影が薄かった為自分から話しかけないとだれも気付いてくれなかった。隠れんぼだって参加の存在自体を忘れられるぐらいだった。


「『アサシン』ですね。かしこまりました!それではこちらの初心者の方にはこちらの物が支給されます。少しお待ちを…」


(中々サービスの良いギルドらしいなぁ)


「こちらになります!」


「ど、どうも」


支給されたのは『長剣』一本『短剣一本』『はじめてのアサシンと書かれたガイドブック』そして布でできた白い『コート』だ。付け加えると少しボロい。


「初心者の方にはこれから一週間専門学校に行ってもらってから冒険者になって頂きます。」


「え?」


(ラークの野郎大事なこと言い忘れやがってぇ…)


「『アサシン』を選ばれたカズさんは明日からここに泊まり込みで戦い方を叩き込まれますので御了承下さい。私からは以上とさせていただきます。」


受付は用意された地図をカズに渡してから一礼した。


「頑張って下さいね、そこの師範中々厳しいらしいから」


「マジでか…」


カズの冒険者までの道は少し伸びた。












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ゲーム中に異世界召喚されました とら @taitaro

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