エピローグ
私は気が付くと一か月前の、10月29日に戻って来ていた。
カクヨムからのお知らせをみると、あの悪趣味なデスゲームの招待状ではなく、
『カクヨムロイヤリティプログラムスタート!』とだけ書かれていた。
それから一か月後、私はインタビューの帰りに声をかけられた。
「葉月さん。小説化おめでとうございます。」
「もう嫌味ですか~?自分はアニメ化決定のインタビューでしょ。」
うふふ、と柔らかく笑う彼女は橘くるみだった。
世界が巻き戻った後、私はニュースを見ていたがどうやら、あのバトルロイヤルのことは一切報道されなかった。
どうやら記憶が残っているのは、最後に彼女と関わった、私と橘くるみさんだけのようだった。
「そういえば、まだあの作品情報は有効ですか?」
彼女は首をかしげる。
「続きを書きたい方は連絡してくださいってやつですよ。私あの時の非日常を作品にしてみたくて。」
「大丈夫ですよ。きっともう一人の私も喜ぶと思います。」
そういって彼女は屈託のない笑みをこちらに投げかけた。
世界が巻き戻ってから変わったことがもう一つだけある、それは私達から『能力』が消えたことだ。それ自体は悪いことではない。そのおかげでくるみさんはのびのびと作品を書いている。
ただ不便だと感じることは,私はパソコンの前にいれば、世界の全てを分析できた前の状態から、これからは自分の足で面白いネタを探しに行かなければならなくなってしまったのだ。
というわけで今日は、最近流行しているというタピオカドリンクの専門店にやってきた。
混雑する店の入り口で男性と肩がぶつかる。
「おっと失礼お嬢さん。おや?」
その髭を蓄えた男性は私の顔を見ながら
「これが君のとっておきの結末か。」
そう呟き、ニヤりと笑いながら店を出ていった。
なんだあのおっさんは。そう思いながら、当店のおススメとやらを注文していると
「もしかして、葉月心さんですか。うっわ、すごい本物だ。インタビュー記事見ました!握手してもらっていいです?」
私は名札に「町田」と書かれた店員に話しかけられた。
「確かに私は”葉月心”だけど、あなたもカクヨムで作品を書いてるの?」
「そうなんですよ。なんだか最近は調子が良くて、読んでいただければ絶対気にいると思います!私のユーザーネームはですね”強すぎる~」
なによこの子、内気そうに見えて結構グイグイ来るわね。
そのまま彼女のペースに押し切られてしまい、ついつい連絡先を交換させられてしまった。
目の前ではしゃぐ女の子を見ながら、この世界から唯一消えてしまったあの人の言葉を思い出す。
「『カクヨム』は作品と作者同士を繋げる。」
これからも私はカクヨムを通じて様々な作品と出会い、そして時が経てば読み終えてしまうのだろう。
だけど、カクヨムが開設されてからまだ3年目、私達の物語はまだまだ連載中だ。
【カクヨムバトルロイヤルティプログラム 完】
カクヨムバトルロイヤルティプログラム はつみ @hatumi-79
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