【六人のバージンロード】1000字以内のラブコメ

雨間一晴

六人のバージンロード

 私達は女性同士で結婚する。今日は、その結婚式だった。


 私の母は、反対して出席していない。女性の私が女性を好きだと、母に告白したのは三ヶ月前で、それから口も聞いてくれなくなった。父は不思議と何の反対もしなかった。


(やっぱり来てくれないか……)


 そう思いながら、バージンロードを彼女と歩く。二つのドレスで並んで歩くのは夢だったが、やはり、母が気になっていた……


「待って!」


 教会のドアが開かれて、母が立っていた。


「お母さん!」


「ごめんね、私、あなたに隠してた事があったの。え?嘘でしょ……」


「久美子!」


 私の婚約者の母親が、私の母に駆け寄って、抱きしめて声をあげて泣き出した。私達は何が起きたのか分からなかった。


「こんな事、あるのね……。私達も女性が好きだったのよ。でも親に反対されてしまって、もう会わない事にしてたのよ。あなたの相手の母親が、私の愛していた人だったなんて……。周りから色んな事も言われたし、あなたに同じ思いをして欲しくなかった。でも、無理して男性と結婚させるのも違うと思う。私はどうしたら良いのか分からなくなってしまって、ごめんね……」


 お母さんは、悲しそうに話していた。お互いの父親は、過去の事情を知っていたのかもしれない、慌てる様子もなく優しく見守っていた。


「ううん、それでも結婚式に来てくれたのは嬉しいよ。ねえ、お母さん達も結婚式しようよ!四人でドレス着て歩こうよ。それで許してあげる」


「そんな、私達は良いのよ。それに主人にも悪いわ……」


 お互いの父親は顔を見合わせてから、優しく首を横に振った。


「いや、久美子達も一緒に歩きなさい、今日の主役の願いなんだ、聞いてやれ。それに、もう君の両親は亡くなってしまったけれど、きっともう反対していないさ」


「あなた……」


「ほらほら、仕切り直して、ドレス借りに行くよ!お父さん達も来てね」


 こうして、私達親子は一緒にバージンロードを歩いた。私と彼女に続いて、母親同士。仲間外れにならないように、少し面白いかなと思って、父親同士も腕を組ませて続いてもらった。会場は温かい笑いに包まれて大成功だった。


 後で、友人が録画した映像を確認したら、うちの父は顔を引きつらせていたけれど、相手の父親が私達以上に、ノリノリで腕を抱きしめていて、笑いが止まらなかった。


 父は嫌がっているが、満更でもないようなので、今度、六人でトリプルデートに行く予定だ。

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【六人のバージンロード】1000字以内のラブコメ 雨間一晴 @AmemaHitoharu

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