第22話【LOVETR SONLY番外編C】


 スペイン絵画紀行後編Ⅱ

(パリに寄り道停車紀行)





「その、夜の仕事の帰りか?」

「まあ、そんなとこだね」


彗は悪びれる様子もなく答えた。

欠伸を噛み殺す横顔があどけない。

男にも感じる男の色香もあると知る。


面識はあるが学科が違う。

ちゃんと話すのは初めてだ。 


つい質問が口をついて出てしまう。

案外とっつきやすい印象だ。


噂の天才君は気さくな男だった。

何より殺伐とした空気が一変した。


先ほどまで熱に浮かされていた嘴。

ふと悪魔の王子は我が身を顧みる。


「手っ取り早く金になるからなあ」


実にあっけらんかんとした答え。

まいったな・・拍子抜けしちまう。


「いや、でも、そんな夜の仕事までしなくても・・なあ?よくなくね?」


「金がいるんだ、画材揃えたいし!描きたいし!観にも行きたいからな!」


願望全部言いおった。

確かに美大は金がかかる。

それでもそれなりに利点はある。 


美術だけに限れば。美大生であれば、他の学生より多少の優遇措置はある。


彗や、榎本や、彼らが通う大学では、都内の美術館の割引券がもらえた。


申請さえすれば、芸術鑑賞のための、交通費だって。多少は割引になる。


構内掲示板、大学のHPから、美術展などのバイト募集を探すことも出来た。


競争率は勿論それなり高い。それでも、現代アート先輩と知り合えたり、展覧会を自由に鑑賞出来たりもする。

そんなメリットがあった。


それで、一般の大学ではけして学べない、美術史やら知識で頭は満たされ、課題や創作のために日参する日々。

学生たちのプライドは維持出来る。

それなりに充実した日々が送れた。


実は有名美大ともなれば、就職率が絶望的な数字という訳ではけしてない。


それでも。


「全然足りてねえ」


そう田崎彗はいつも言うのだ。 

正確には言ってそうに見える。

いつも不満げな瞳をしていた。 

飢えていたと言ってもいい。

そんな若者だった。


「全然足りてねえ」

「全然描けてねえ」

「全然見たいものが見れてねえ」  


美大とは、将来のアーティスの卵たち、そこから芸術家を志す者が集う。

そんな場所だ。


彼らが講義で学ぶテキスト。音大同様、数十年も昔から殆ど変わっていない。美大に限ったことではない。

芸術を学問として学ぶならば。

それは仕方のないことだった。


クラッシックというジャンル故に、

それは変わりようがないものだ。


中世から、それ以前の先人の画家たちにより確立された古典絵画から、彼らは今も多くの事を学んでいる。


しかし、旧約聖書と新約聖書に書かれている、その違いは一体なんだ。 

どちらも読み終わらないまま。

卒業への時間は過ぎて行く。


西洋美術の講義である教授は言った。


「現代アートが、古典より複雑で難解であると言うのは・・まったくの間違いですね。何故ならば、現代アートは現代を生きる、我々と同じ作家の価値観や感性によって描かれたものです。ところが、それより昔の作品は違います。その作家と、彼らが生きた時代。その歴史と、人となりを理解し、学んでこそ・・真にその作品の描かれた意味を理解することが可能なのです」


ならアートとかもう終わってんじゃね?


自分たちは何を描けばいい。

今の時代を生きる俺たちは。

自分にしか描けない。

オリジナリティって。

一体なんだ?


それは永遠に模範解答がない。

提出が出来ない課題だ。


カンバスにいい絵が描けさえすれば。皆が感嘆して、褒め称えて、高みへと、据えてくれる。そんな時代は過ぎた。


カンバスをジャンクから探し。

人目を惹く画題を見つけて。 

一丁奇抜さで人目を惹いて。


ただ絵だけ描いて、それで天才と呼ばれるなら。それにこしたことはない。

誰も苦労などしないのだ。


美大にはアートを志す人が集う。

未だアーティストになりきれない。


そんな若者が集まる場所でもある。


田崎彗の描く絵画に迷いの線はない。

ただカンバスに描いても成立する。

生き方も多分そうなのだろう。 

美術作品を見て感じることも。 


このヤンキーとつるんでるのも。

きっと何か意味があるはず。 

絵筆を手に描きさえすれば。 

後から意味はついて来る。 

そういうタイプだ。

俺たちとは違う。 


ロートレックのように。 

レンブラントのように。

ゴヤがそうだったように。


夜の街を彷徨い光を見つけるかも。

深夜夜警の大人たちの中に混ぎれた。

金色に光り輝く少女に出会えるのかも。 


夜の繁華街一際煌めく場所に、夜な夜な集う。そんな女たちを描いた作品。

中世なら盛り場に売春宿があった。

様変わりした現代のそんな風景。

この男なら描くかもしれない。


そんな絵は今まで見たことがない。


そんな意図があるのだろうか。

そんな風にはまったく見えない。


田崎のすることは不可解に思えた。

自分らには矛盾や謎に満ちている。 

しかしそれはおそらく。

正解なんだろうな。 

そう思えて来る。


俺ら仮にも芸術家の卵なのだから。

それくらいは皮膚感覚でわかる。


ただ一枚の絵画やポスターを見ても。


「お前は本物なのか?」


そう問い続けている。  

森羅万象すべてにおいて。 


そんなやつ遠目に見て陰口しかない。  

だって怖いじゃないか。

そんな目で見られたら。


「そんな格好でも・・今の時期なら、うちの大学じゃ全然目立たんよなあ」


なにかを誤魔化すように。 

それを悟られぬように。

気さくな感じで話した。


「あ?これ?」


ずっと夜の街に嵌って。 

気楽に金を稼いで。

酒や女に溺れて。


そのまんまいなくなればいいのに。

心ならずも思ってしまう。


「ホスト昨日で辞めた」


「へ・・そうなの?」


「そりゃ勿論!本気でホストやって、ナンバー1とか、夜の町でのし上がってやるとか野望があるわけじゃなし」


そんな生き方がしたいなら。

とっくに美大なんてやめてる。


田崎がやってたのは単なるお酒汲み。

ドリンクのヘルプや雑用みたいな。

短期のバイトに過ぎない。

そう教えてくれた。


「でもお客さんとか惜しんでくれて」

「結構みんな可愛がってくれたんだ」


この時間まで飲まされていたらしい。

それでこのなりか・・納得した。


別に長々立ち話する気なんて、毛頭なかった。横で腕組みしてる榎本同様、こいつらはトラブルの元なんだから。 

一緒にいても教授に睨まれたり。 

ろくなことにならないんだから。


それでも気になる。  

この田崎彗ってやつ。 

噂話をするより楽しい。

なにか話をしたくなる。


でもこっちから何を話したら。


さっきまで悪口言ってたやつに。 

いったいどんな顔で。

恥ずかしい限りだ。


この顔の偽りの皮膚とペイント。 

呪いのように剥がれない!


そんな気がして下を向いた。

その顔の額を彗の指が叩いた。


「これポリテック?」


「あ・・ああ!」


化物の顔から鳩時計が飛び出す。

そんな声で答えた。


「いいね!」


「美術用の人工皮膚はこれが一番いいかな・・色々試したけど・・安いし」


ヒエロニムス・ボスの快楽の園に登場する。おそらくは悪魔。魔界の王子と呼ばれる鳥の顔の男はそう言った。


「頭の鉄鍋?なんか・・ださくね?」


「え?でも原画がこうだろ」


「鉄鍋とかより、花の冠とかさ!」


大学の講義で習った。ルネサンス期のスペインの画家ヒロエニムス・ボス。

もっとも有名なその画家の大作。


【快楽の園】


その解釈は例えばこうだ。


聖書でお馴染みのアダムとイブ。

彼ら二人は人類の祖先である。

彼らは神によって作られた。 

楽園で楽しく暮らしていた。


しかしある日蛇に誘惑された二人。

神様に禁止されていた知恵の実。

それを食べて楽園を追放される。


ヒエロニムス・ボスの【快楽の園】それは、教会に飾られる祭壇画の様式。

よくある題材を踏襲している。


三廟から成る見開き画となっている。 

日本のお仏壇のような作りだ。


聖書の形式通りに失楽園の物語。 

しかしボスのアダムとイブ。

禁断の木の実を口にしない。

聖書の記述とは異なる。 


知恵の木の実を食わないまま。

生めよ増やせよと神様に従い。 

中央の絵画はその後の世界。 


【快楽の園】


その世界には人工物は何もない。

楽園と思える自然と人と異形たち。

溢れかえる人と百鬼夜行の怪物たち。戯れるような世界が描かれている。

老子の言うところの無為自然か。

脱構築ポストモダニズムか。


「政治や宗教不信への具現化です」


美大の抗議では確かそう習った。


しかしその中にも禁断の果実はある。 

よく見るとそれを食ってるやつもいて。


多分そいつらが落ちている場所が。

三枚目の絵画で多分地獄だろう。


そこには今目の前にいる魔界の王子がいて。人を頭から飲み込んでいる。

確かに恐ろしい絵には違いない。 


しかし、飲み込まれた人間はすぐ排泄されて無事に見える。この繰り返し。

悪魔と思しき王子頭には鉄の鍋。


お鍋だけではない、ヒロエムス・ボスの描く地獄には、当時から今日まで、見慣れた、ありふれた道具や物が描かれている。知恵の実を食べた結果。

物や道具か溢れている場所である。


それが地獄なら現代文明がそうだ。 

画家はそう言いたかったのだろうか。


この絵画が描かれた時代。

統治者はフェリペ二世。


ベラスケスが宮廷画家として仕えた、フェリペ四世の祖父に当たる人物だ。


そのハプスブルグ家は非常に熱心なカソリック信仰の家系として知られる。フェリペ二世とて例外ではなかった。


にも関わらず明らかに反キリスト的、カソリック冒涜に見えるこの絵画。


王はいたく気に入っていたとされる。


王はいたく気に入っていたとされる。


自ら庇護する修道院の祭壇画に【快楽の園】を飾らせたという逸話が残る。厳格なカソリック教徒であり。無類の絵画好きとしても知られていた。


ヒロエムス・ボスの描くような所謂変わった絵を特に好んだとされている。

美術概論などの講義で習った知識だ。


「この魔界王子の!再現度の高さよ!まあ微細いディテールまで、よくぞ・・なあ、これって、3Dプリンタとか?」 


「いや・・それやっちまうと、もう、ただのコピーだからさ、手作り感とか悪魔の羽毛のふわふわ感とか、自分で図面引いて、鳥の羽を一枚一枚・・」


「大したもんだ!さすが造形美術科!俺も今度課題の仕上げ頼もうかな・・」


「本当かよ!?」


悪魔の王子は恥ずかしそうにしている。鳥の頭をぽりぽり掻いた。


「おい!こら!さっきからお前ら!?この榎本薫を!壁の花扱いにして置いて、いいと想ってるだべか!


「でも頭の鍋はやっぱいらなくね?」


「振り上げた男の拳の行方・・お前等一体全体どうしてくれんだべ!」


「え!?でもでも、この鍋がないと、

ヒロエニムス・ボスの文明批判とか・・伝わらなくなくね?」


「眼中にない!」


「そんなのはさ〜描いた御本人にでも直で聞いてみなきゃだろ?正解かどうかなんて、わかんねし、だいち・・ハロウィン用のコスだろ?そこで文明批判とかしたいわけ?いやいやいや!ちゃうだろ!お祭りには、お祭りのための、お祭り仕様ってのがあるべ?」


そう言って彗は榎本に微笑んだ。


それは過去やりつくされたことだ。

たとえ今更でも、ボスの造形に注目して立体化を試みる。「美大生にしてはセンスいいぜ!」そういう意味だ。


「ねえ?榎本君そうだよねえ〜」


美の女神は彗の身体を借りた。

そして片目を瞑って見せた。


「そ、そうだべ!・・って!てめ!この田崎!さっきから、わざと、ずっとこ、俺のこと、無視してたべ!」


先程からずっと、気弱そうに見える、おどおどした様子でこちらを見ている。ルドンの描いた一つ目の巨人。


つぶらな一つ目がこちらを見てる。

もじもじしながら。身長は170に少し足りない。一番小柄な青年だった。


おのれのことはまだよく知らない。

そんな生まれたての怪物のように。


「ぼくはどうなの?」


そう訴えるように問いかけている。

彗には彼がそのように見えた。





【次回予告】


「おや?彗君?スペイン経由で、ロンドンに戻る予定はどうしたべ?」


「ちょいとフランスのパリにでも、立ち寄りたくなっただけさ・・」


「まあ・・ルドンの生きた時代は、19世紀から20世紀初頭となってるべ!」


「おいらは所詮気まぐれな彗星!行き先なんて聞くだけ野暮ってもんさ・・」


「19世紀のフランスと言えば・・榎本メモによれば、英国のラファエル前派の時代とも重なる、なかなかエキサイティングなアートの時代だべ!」


「前回の予告で「クリスマスラブコメだべ!」とかなんとか言って・・」


「だまらっしゃい!お前が出来ないなら、ここで不詳この榎本薫が!次回予告の大役の旗持ちをば!」


「香水・・予告・・無関係じゃねえ」


「な・なんだべて!?香水が次回の話に!?それは失礼したべ!このK・ENOMOTOタオル使ってくれ!ふきふき!I LOVE YOU OK?だべ!」


「・・このお清め日和「Lovers Only」の本編、そしてこの番外編の・・」


「ふむふむ?」


「次回作品は!香水がテーマのホラー作品になります!しるぶぷれ!」


「てててめぇ!ゴルァ!溶剤のシンナーで頭溶けてんのか!?なに最終回後の次の作品の予告しとんけワレ!?」


「だってえ、もうそれは出来てるからそっち宣伝しとけって作者様が・・」


「こっちも!本編も!あっちの作品も!あちこちで進行超遅れてるのに!作者も!お前も!パラノイアこいてんじゃねぞ!かちこむぞ!コラ!」


「ああ・・髪や服にペインティング オイルが・・まあ、この匂い・・嫌いじゃないけどね!」


「溶剤その他ペインティングオイルは絵具同様美大生のマストだべ!オイルを浴びてようやく正気に戻ったべ!」


「昔から油彩絵具をパレットで解く、溶剤とかシンナー入ってたりで、ちゃんと換気せねば体に悪いべ!」


「そもそも、絵具自体、昔の画家は、土や石や貝殻をすり潰して自作してて、昔はそれで中毒になったり、寿命を縮めたりしたらしいな・・」


「それは本編でも触れてたべ」


「まず、油絵具で体調悪くなる人は、油彩画は向かないんだよね・・」


「カドミウム・レッドはその名の通りカドミウム入りだべ!」


「カドミウムオレンジも、イエローもあるけどカドミウムは毒だからな!」


作者注:カドミウムが入った絵具は、とても発色が良く。そして高価です。

なので安価な学生の教材用や、基本色セットなどにはまず入ってません。


「自分で画材屋にでも行かないと手に入らないブツだべ!」


「もちろん手元に置いといても平気、絵筆で使用するに問題もなしだ!ちなみに、バーミリオン、シルバーホワイトの絵具にも毒があるけれど。まあ加熱しない限り大丈夫だろ!」


「油彩絵具には、鉱石や鉱物が含まれてることを忘れてはならんのだべ!」


「絵の具の中で最猛毒なのがコバルトバイオレットだ!」


「おお!チントと書かれてる物だべ!とてもお値段が高い絵具だべ!」


「これの大チューブ1本で人間の致死量に達すると言われています」


「もし小腹が空いて、いくら美味しそうな色でも食べては❌だべ!」


「ちなみに、毒性のある絵の具には、チューブにオレンジの四角に黒いXマークが入っているので・・油絵初心者の方はぜひ確認してみてね!」

「なんかためになるべ!」


「俺たちのような、美大の絵画科の人間にとって絵具の選択は勿論だけど、それ以上に大切なのが、さっき榎本君が俺の目に噴射したペインティングオイルね!」


「通常はスプレーじゃなく香水のような瓶入りの透明な液体だべ!でも本当は失明の危険があるので敵に囲まれた時以外目にかけては絶対ダメだべ!」


「実はこのペインティングオイルにもすごい種類があって・・」


「そうだべよ!東京にある、モナリザが、お安くてびっくりしてる看板でお馴染みの画材店【世界堂】なんかに行くと、絵具やペインティングオイルの在庫だけでなく【ペインティングオイル大全】なんてガイドブックも売られているほどだべ・・あれ便利な!」


「絵画に全然興味ない人でも、西洋の古典小説なんかに、ヒマシ油やテレピン油なんて、あまり聞き慣れない油が出て来ると思う。それって油絵にも使われてるオイルなんだよね!」


「このお話のナショナルギャリーに入館した時に香りがしたというワニス」


「そうそう!それもペインティングオイルなんだ!」


「使用する目的は主に揮発と結着、作品保護のや質感のために絵の表面に塗り込んだりもするべ!」


「そのワニスとかオイルの使い方で」


『「これはルネッサンス時代の絵画』とかすぐに見分けられたりもする」


「それって・・」


「次話の重要ポイントだったりして」

「ちゃんと予告してるべ!」


「だから画家にとってキャンバスは女性の顔と同じこと、絵具がコスメならペインティングオイルは・・」


「最後に雰囲気を仕上げる香水!」


「まあ・・オイルの用途は、単純に絵具をパレットに解く溶剤の役目もあり、実に多様なんだ!あえて使わず、絵具も指で直塗りしてのばす人もいるし」


「昔からそれで絵の雰囲気や個性が大きく変わるから選ぶのも大変だべ!」


「ちなみに現代では、オリーブオイル、アマニオイルなんかも使われてるし『ペインティングオイルどれ選んでいいかわからない』なんて人のために保湿性や揮発性を兼ね備えたオールインワンなオイルも発売されてるぞ!」


「お肌の美白から保湿まで、化粧水はこれ一本みたいな・・便利だべ!」


「とこで榎本君は?絵具やオイルにこだわりとかある?」


「絵具はバニシングレッド!オイルはトルエン!いつもハイオク満タンだべ!」


「聞いたことねえ・・」


「ちなみに田崎にはこだわりのオイルとかあるべか?気になるべ?」


「俺は最近はこれだな・・しゅ!」


「なんだべ!?このオイル!?アンパンとかじゃなくて花の香りがするべ」


「ラベンダーオイルさ」

「おしゃれ・・ぽっ!」


「つまり絵具な鉱石や無骨な貝殻や、土塊から発色を引き出す。それに対して、油彩のオイルは植物由来なのさ」


「そんで?」


「次回のお話の画家、ルドンは花にとても縁が深いのさ・・おっと香りを効かせ過ぎたか、続きは次話で・・」


「ちゃんとした予告!?」

「まあね」


「やれば出来るべ!田崎ィ!お前はやっぱり出来る子だべ!!」


「そうかな・・てへへホストの先輩にもお客様にも『よく気のつく子!』なんて言われて『』この仕事向いてるからもっと続けたら?なんちてね!」


「そうか・・そうだべな!結局どんな仕事も最後は人間性が大事だべ!それに、今回は絵画メインの作品らしい、予告が出来て本当によかったべ!」


「言っても俺たち美大生だし!」

「だべ!だべ!気分よく次回も!」


「おや?」

「ん?」


「榎本君・・そのツナギの胸ポッケからのぞいてるのは・・ショッポ?君の煙草なんて吸ったっけ?」


「あはは・・これはショートホープとちがうべ!(スチャ!)これは駄菓子のココアシガレットだべ!」


「おお!見たことある!懐かしい!」


「な!だべ!そうだべ!今日、大学に来る時、たまたま、通り道で駄菓子屋さんを見つけたべ!やっぱ、駄菓子屋ってのは誰の思い出にも繋がってる、小さな道の駅だべな〜」


「なんかうまいこと言おうとして締めようる〜」


「そう言えば俺が高校の時・・」

「いらん!」


「高校の時の心温まる話を」

「長くなるからいい!」


「高校に入ってツッパリヤンキー道まっしぐらだったこの俺榎本薫!2年の春に地元の中学から俺を慕った後輩たちが入学して来たべ・・」


「読者の皆様!また次回!」


「俺を真似して!いきがって!トイレや、校舎裏でタバコを吸ってる、そんな後輩たちを見た俺はココアシガレットを手渡してこう言ったんだべよ!」


「は?なんすか先輩?これ・・ガキの菓子じゃねえすか!?こんなん、俺たちいらねえっすよ!」


「馬鹿者たちよ!お前らがタバコ吸って、停学や退学にでもなったら!ここまで苦労して、育ててくれて、進学させてくれた親御さんが悲しむべ!いいべか!タバコ吸うなとは言わねえ!」


「言わないんだ」


「ただ、先生に見つかってガサ入れなどされた時は、これを使えい!これを見せて笑顔で・・俺の後に続けい!」


「センコーが来たら!はい!カカオ!」


『センコーが来たら!はい!カカオ!』


「笑顔が足りん!やり直し!」


『ご教授ありがとうございます!』


「うむ!」


「そうゆうのいらない!(ふくれ)」

「うむ!」


「うむ!じゃない!やっぱりヨタ話、しかもそれヤンキー漫画とかならまだしもじゃりン子チエとかのパクリだよね?今時誰も知らないぞ!」


「駄菓子だけに、じゃりン子だべ!」


「これで満足したか?」

「思いの外満足だべ!」

「では今度こそ次回!」


「ココアシガレットいる!」

「!」

「ん?どしたべ田崎・・」

「ただいま!(ひざまずいて着火!)」


シュボ🔥


ギャ──🔥∑(;゚Д゚ノ)ノ∑(゚Д゚; )🔥─ァァッ!!


「服に火が!燃える!燃えるべ!?」

「さっき吹きつけたオイルがあ!?」


親愛なる読者様へ  Au Lecteur


『愚行と錯誤、罪業と貪欲とが、

我らを捕らえ、我らの心を虜にする 

乞食が虱を飼うように

我らは悔恨を養い育てる

我らの罪は深く 

我らの悔いはだらしがない 

気前良く信仰告白をするごとに 

心も新たに汚辱の道に戻っていく

一滴の涙で罪を洗い流したように

悪の枕元でサタン・トリスメジストが

我らのとらわれた心を揺さぶり

我らの鉄の意志さえも

錬金術で霧消させる


我らを操る糸は悪魔の手にある

おぞましきものに心をとらわれ

日ごと地獄へと落ちていく我ら

恐れもなく悪臭放つ深淵を横切り

放蕩者が年老いた売奴の乳首を

食らいつきしゃぶりつくすように

道々密かな快楽を盗み取っては

干したオレンジのように

噛み締めるのだ

夥しい蛆虫のように群をなして

我らの頭には悪魔の手下どもが

うごめいている

我らが息を吸い込むたび

死は我らの肺に入り


見えない流れとなって下りていく


強姦、毒薬、短剣、放火

これらを痛快な絵柄として

我らが自らを描かないのは

まだまだ大胆ではないからだ


ジャッカル、パンサー、猟犬ども

猿、蠍、禿鷹、蛇


吼えつつ蠢くこれらの怪物

我らが悪徳の獣たちの中でも


一際醜く、性悪で、汚いやつがいる

大げさな身振りや大声は立てないもの


好んで大地を廃墟と化し

世界を一飲みでのみ込むやつだ


それはアンニュイというやつだ

水煙草を吹かしながら

断頭台を夢見る

この怪物を読者よ

君も知っていよう

偽善者の読者よ


私によく似た人びとよ・・』


「田崎君・・つられて俺も朗読してしまったがべが・・このうすら怖い詞の朗読はなんだべか・・熱!?」


「こここれは・・19世紀のフランスの詩人ボードレール先生の【悪の華】の一節【読者へ】だよ!あちち!?」


「そそれは・・熱!?次回のお話と何か関係があるのだべか!?」


「あるよ!ボードレールは英国滞在中に英国の作家エドガー・アラン・ポーに深く傾倒し、ルドンもまたボードレールやポーに深く傾倒し、ルドンもまたボードレールやポーの作品にインスパイアされた絵画を・・熱うい!?火が!火が!?喉元まで・・!?」


「な・なるほど!?炎にこの身を焼かれながら見事な告知だべ!?でも俺たち火に焼かれながらなんで!?」


「それは・・作者が中学の時に観てトラウマ級の衝撃を受けた【小さな悪の花】という映画・・焼け死ぬから説明は省く!?以上だ!消化!」


「ほ・・助かったべ!」


「す・すぐにそこの消火器を!!!」

「待て!それはダメだべ!」

「なぜだ!このままだと焼け死ぬぜ」

「ジャー先生が消火器はダメだと!」

「ジャー先生って誰だよ!?」

「俺の尊敬する・・タイのアクションスター!トニージャー先生だべ!」

「知らねえし!」


「そのジャー先生がアクション中に火だるまになり消火器を持って来たスタッフに「消火器はやめろ!」と言ったべ!なんでもジャーの先輩がパイロアクションで火だるまになった時消火器の粉が喉に詰まりお亡くなりに・・」


「割愛しろ!死んでしまう!」

「わかった!床に転がれ!」

「転がって火を消すのか!?」

「トニージャー式消火方だべ!」


『ゴロゴロゴロゴロ』


「ふーなんとか消化出来たな・・」

「ジャー先生ありがとうだべ!」

「しかし服も髪もすっかり燃えて」

「髪がアフロになってしまったべ!」 「本当だな!」


「ヤンキーからファンキーだべ!」


「まさか・・これだけ文字数使って、それが言いたいだけとか?」


「どき!」


「・・まあいいさ!実はアフリカ彫刻や仮面というのは実は19世紀以降の絵画に大きな影響を与えたんだ!」

「へえ・・そうなんだべか」


「もっとも、アフロヘアはアフリカの原地民ではなく、60年代のアメリカ在住の黒人文化から派生して・・!」

「どうしたんだべ?メ〜ン!?」


「アフロヘアの語源は・・一説にはアフロディーテの髪型が由来とも言われてるんだ!」


作者:注アフロディーテはギリシャ神話で美と愛の女神です。 ゼウスとディオネの子。もしくは、泡から生まれたとも言われています。 愛神エロスは軍神アレスとの子。 ローマ神話の美の女神ビーナスにあたります。


「アフロ!」

「アフロ!」


「われらが探し求める美の女神様よ」

「こんな身近な頭上に巣が!」

「女神様と繋がったべ!」


「もうこの予告!最終回でいいじゃん!」


「ちっちっち!まだまだ続くのだべ!それでは(こほん)次回も読んで欲しいだべ!パラリ・・」


「NON!」


「へ・・なして?いつものパラリラでびしっとしめるべ!?」


「フランスではNON!フランスでは、ルルル・・シルブブレ!」


「ルルル・・フランスのヤンキーは、パラリラではなくルルルだべか?」


「それは次回以降のお話で!」


「由紀さおり?」







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