少年と怪物
甘目冴香
少年と怪物
むかーし昔、ある所に少年と父親がいました。少年は小さい頃に母親を亡くしており、今まで父親と2人で助け合って生きてきました。
とある晩、父親が病に倒れてしまいます。
少年は直ぐに医者を呼びました、しかし医者が容態を診ると、何かを言って直ぐに帰ってしまいました。
その後、少年は家を出て、必死に父親を助けてくれる者を探しました。
村には医者が2人いましたが、1人はさっき帰ってしまいましたし、もう1人は眠っていて気づいてくれませんでした。
隣町には医者が4人いましたが全員お酒を呑んでいたようで、酷く酔っていました。
少年は藁にもすがる思いで、怪物がいるという禁断の森に入りました。
少年は言葉にならない声で、何かを叫びながら森の中を走り回りました。すると少年の元に、独りの怪物が現れました。
怪物は言いました。
「どうしたんだ?迷子か?」
少年は必死に父親の事を伝えました。
すると怪物は、
「よし、だったらおれがお前の父親を助けてやる。家の場所を教えろ」
怪物はそう言うと少年に家の場所を案内させました。
家の中で、父親の容態を診た怪物はおもむろに黒い水を取り出しました。
「こいつを飲ませればお前の父親は元気になるぞ」
怪物がそう言うと、少年の表情は一気に明るくなり、喜んで黒い水を父親に飲ませました。
少年は見た目は怖い怪物でも、本当はとても優しい存在だということを知りました。
...次の朝、少年の父親は余程お腹が空いたのか、家にある食べ物を食べ尽くしました。
しかしそれだけでは足りず、今度は少年を食べました。頭を、腕を、脚を、喰い千切ました。
その後、薬を持ってやってきた昨晩の医者を喰らい、その後は村や隣町にいる人々を喰い尽くしました。
そして最後には、禁断の森に入っていきましたとさ、
めでたしめでたし
少年と怪物 甘目冴香 @abiko
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