私曰く

西野 セト

私曰く

腹の奥が窮屈に狭まる。息苦しく、それでいてどこか心地よいそれは吉兆であると勘が囁く。しかしながら、明日、あるいはこの先、瑞象の至りを目の当たりにはできないのだろうと私は呟く。

 空を見上げ、雲が動く姿を見て、永遠の無きを悟る。

 地を見て地球の丸さは語れぬが、己の無力は幾らでも染みる。

 趙州曰く、無

 言わずもがな。

 貴方が居ずとも私が説いてやろう。

 けれど、世界は華やかに回る。薄汚く、美しく動いている。確証の無い化学が進歩し続け、この世の理は本質を凌駕する。

 世界がいつしか消えたなら、私達はなんだったのだろう。

 世界が明日消えるなら、私達は愛を語るのだろう。


 趙州、ならば、世界は有だ。


 そう思うしか無いほどに、世界は無であるのだ。

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私曰く 西野 セト @seto_nishino

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