第4話


入学式の時に通った、桜の花が舞う通学路はすっかり緑色になっていた。


空を見上げると、もう見慣れた曇り空が広がっていた。


空気もジメジメし、あまり良い気分ではなかった。


昇降口に着いて、靴を履き替えようとすると、不意に夢桜の頭に激痛が走った。


「いった……」


うずくまり頭を抑えるが、痛みが消える様子はない。


「大丈夫?」


たまたま通りかかった同じクラスの望月楓(もちづきかえで)に声をかけられたが、返事が出来なかった。


そのまま楓に支えてもらい、保健室へと向かった。


保健室には、保健の先生の春萌真生(はるもまい)がいた。


真生は2人に気づき、駆け寄ってきた。


「私が登校してきたら、靴箱のところでうずくまってて……」


喋れない夢桜の代わりに楓が説明してくれる。


「分かったわ。あともう少しで朝のHRが始まるから、楓さんは教室に戻りなさい。」


「分かりました」


そう言って楓は「失礼しました」と行儀正しく保健室を出て行った。


真生はベッドの上に夢桜を座らせ、隣に座った。


「まだ痛い?」


コクコク、と小さく2回頷くと、真生は夢桜をベッドに寝かせた。


「あと1時間休んで、もしそれで治らなかったらお母さんに連絡して迎えに来てもらうわ。」


「わかり……ました……」






あっという間に時は過ぎ、真生は「調子はどう?」と問う。


「さっきよりは……でもまだ少しズキズキします……」


「そう……一応迎えに来てもらうわね」


「わかりました」


(私、どうしちゃったんだろう……今までこんなことなかったのに……)

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咲けば散りゆく運命なのです。 夢穂@みずほ @mizuhoririka

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