気ままに短編集
ジョーカー
誰よりも愛しい人 (恋愛)
私の名前は
それにね、時々見えるハチミツを溶かしたような色でキラキラと輝く瞳がとってもキレイ。あの瞳を見た瞬間、心が一瞬で奪われて、その時からずっと好きになったわっ!
でも、話しかけようと思うと、彼の友達の
だけど……、いつも何か伝えようと思うと喉が詰まって声にならないんだ。でも、このままじゃダメだって思って、私の想いを籠めた手紙を彼の家に毎日届ける事にしたの! 恥ずかしくて自分の名前は書いてないけど、私の愛は伝わっているよね? わざわざどこに家があるか調べたんだよー。愛って偉大だよねー。なのに、彼からお返事の手紙がぜんぜん来ないんだ。
それとね、学校で聴いたんだけど、最近彼はストーカー被害に遭っているんだって! 心配だから私、距離を空けて登下校を見守る事にしたんだっ! 何かあったら、私が守ってあげるからね、徹くんっ!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「大丈夫か、徹」
「うん……ありがとう風太」
嘘だ。もともと白い顔を更に白くして体を震わせているのに。
「おれは、空元気が見抜けないほど馬鹿じゃないぞ」
「あ、それもそうだね。やっぱり、風太には隠し事はできないな……」
いつもこうだ。どうして徹に惚れる奴はまともな奴が1人もいないんだ。子どもの時からそうだった。徹に惚れた奴は異常に徹に執着し、果てはストーカー、酷い場合は殺そうと襲い掛かって来る。そのせいで、徹は恋人もつくれず、女という存在が苦手になってしまった。
今回のストーカー、名は確か菊池だったか。あいつは典型的な無自覚ストーカーだな。自分が行っている事が悪い事だって気付いていない。一番たちが悪いタイプだ。奴の悪事の証拠は手に入れているから、いつでも排除する事は可能だ。後はタイミングだな。あいつが言い逃れできない状況に追い込んで、徹の目の前でストーカーである証拠を突きつければそれでいい。
今までそうやって徹を守ってきた。誰よりも隣にいた大切な幼馴染で親友だから。……なんてのは建前だ。
俺だって、あの馬鹿な奴等と変わらない。徹の事が好きだ。だからといって、付き合いたいとかそういうわけではない。ただ、徹には幸せになってほしい。だが、徹はいつも変な奴等に目をつけられる。それも、男女問わずにだ。恋人がいた先生までおかしくなった時は本当に鳥肌がたった。信じられる人間なんていなかった。徹の両親は亡くなっているし、こいつの姉もまともじゃない。いや、1番まともじゃない部類だろう。逮捕されているのが唯一の救いだな。
だから、徹を守れるのは俺だけだ。だから、どんな手段を使ってでも守って見せる。特に、徹に近づく男どもは徹が近づく前に片づける。流石に男まで苦手にさせる訳にいかない。それに……
「いつもありがとう、風太」
付き合うつもりはないのは本当だ。俺みたいな奴が徹を幸せに出来るとは思えない。だが、徹をまともじゃない奴に渡す気はさらさら無い。それまでは、俺に依存させる。俺がいないと生きていけないようにする。例え、まともな奴が現われても、1番に頼るのは俺、そう仕向けさせる。そう考えている時点で、俺は奴等と何も変わらない。
なぁ、徹。誰よりも愛している。きっと一生言うことのない言葉を心の中でそっと思った。
気ままに短編集 ジョーカー @raru0141
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。気ままに短編集の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます