売れた日。
僕は、小説が売れてベストセラー作家になる。
そうして、僕は社会から、世間から認められる。
世間は、私の作品を酷評した。酷評された僕の作品は人々の話題になった。中には、熱狂的な人間も現れた。僕は、その印税を元手に新たなビジネスを始めた。ブログを書いたり、音楽をつくったり、動画を撮ってその広告収入で更に儲けた。
「そんな、うまい話があるか。」
と思われるかもしれない。
収入なんて、働いても何百万は稼げる。そのお金を事業の為に使う事も出来る。退職するのはちょっとと思っている人も居るかもしれない。snsは、忙しい人でもちょっとした合間にでもビジネスに出来る優れものだ。
スマートフォン一台で始められることだ初めの頃は見てくれる人は、ほとんどいないだろう。しかし、戦力的に、検索をかかりやすくする、キャラクターを建てる、専門性に特化させる、など、自分の強みを生かす事で化ける可能性は十分にあるのだ。
大金持ちになって、有名人とコラボしたい。其れを切っ掛けに更に、飛躍していく。
話題になれば、其処から延びるものだ。
彼は、そういってインターネットビジネスをはじめた。
中二病染みたところが、彼にはあった。彼は自分を特別な人間だと信じた。成功する。自分は他とは違う。認められる存在なんだ。世界は私の為にあるのだ。世界は私を味方する。そう信じている。
運を、引き寄せる。引き寄せて。上手くいかせる。これが私の能力。引力。世界の中心を引き寄せる。運命を引き寄せる。話題を持ってこさせる。
彼は実際持っていた。運を。
気づいた時には、有名になっていた。とんとん拍子で再生数は上がり、ビジネスは軌道に乗っいた。彼の事はどうも憎めない。人は彼を応援したくなる。そうした何かを彼は持っていたのだ。
「人間は三十二歳頃から急速に老ける。」
何処かで、そんな話を聞いた。
老いるのは怖かった。其れまでに、目標も達成しなければならない。必ず億万長者になるし、医学部を卒業する。そう決めて、ビジネスの傍ら勉強もやめなかった。
医師免許は取得したが、医者にはならず、ビジネスを続けた。
三本の指には入る有名人になっていた。世界を私を認知した。藪医者の詐欺師と。しかし、有名ではあった。人々の信仰を集めた。
「学位を取得してから、幾らか経つが、医者にはなりたくなかったんだ。」
彼はいった。医学には興味があった。医学のみならず、学問の探求は彼を魅了していた。しかし、彼は学者にはならなかったし、堅いインテリといった風でもなかった、純粋に真理の探究に取りつかれていた。
金。
金。
飼ってくれ。何か買ってくれ。金をくれ。
「私に金を寄越せ。脅迫だ。金を寄越せ、命は無いぞ。」
「そうだ。おとなしくお金を寄越すんだ。有り金全部だ。」
こんな、方法でしか御金が手に入らないんだ。脅迫してナイフで脅して、大金をむせび取る。御金が無くて困っている。仕方の無いことなんだ、御金の無いのが僕をそうさせるんだ。金の無いのが悪いんだ。
強盗した。覆面を被って、脅迫して三百万と銀行の口座番号を吐かせた。これで、有り金は全て私のものだ。これも、仕方の無い事だ、御金の無いのが僕をこうさせる。僕は、見ず知らずのこの男から、御金を盗るのだ。コツコツ働いて稼いだお金であろう、しかし、私は、このお金を盗むのだ。私の為に盗むのだ。
「この、男には、悪いが。これも、仕方の無い事だ。これしか御金を得る方法が思いつかなかったんだ。」
そして、盗んだ御金で、宝くじをすると偶然其れが当たって億万長者になった。
「あの、男は本当についてないな。」
私は、あの男が失業して、金も盗まれて、家族から忌み嫌われているのを知っていた。多額の借金をして、その利子が滞納して、もはやどうしようもない額まで膨れ上がっているのを知っていた。
「あいつ、自殺するだろうな。僕に金を盗まれたばっかりに、人生どん底だ。」
全く、悪いとも思わなかった。盗まれたあの男が悪いのだ。ざまあみろ。その男は一件家を持っていたが、借金返済の為に売った。家を売り。家族に見放され、正にどん底。
「不幸な人間を見るのが趣味なんだ。」
「へえ、君悪い趣味をしているねえ。」
「とんでも無いよ。いい趣味さ。絶望にゆがんだ人間は実に面白いじゃいか。」
その、男は、絶望のあまり、崖から飛び降りて死んだ。死体は見つかりもしなかった。
「死んじゃったよ。あいつ。」
「友達だったんじゃないの?」
「知らないよ。あんなの。金持ちだったから、目を付けていただけさ。」
蔑んだ眼で僕を見ているのは、新橋 茜 僕の悪友だ。
「よくも、まあそんな事が言えたもんだね。」
「君だって、泥棒だろ。此れ迄どれだけの盗みをやってきたことか。」
「私は、あんたみたいな、せこい盗みはしないわよ。堂堂と予告をしてからしか、盗みはしないわ。」
死後の心配。この年になると、死ぬ事もそうだが、死んだ後の心配もするようになる。もう死期は近い。私の子と孫は、私が死んだ後上手くやっていけるのだろうか。
「死という事が、近づいているのが、最近よくわかるのよ。」
「私、みたいな老人の言葉は聞きたくもないと思うけれど、貴方たちの事が心配よ。能天気なあなた達の将来が心配だわ。」
彼女は、自分の死後、家が衰退していき、滅びゆくのを畏れた。
「頼りになる人がいないわ。しっかりものがいないわ。誰が面倒を見てやるのでしょう。」
彼女の心配事は実に的を得て居ました。
しかし、彼の蛮行は留まることを知らず、日に日に拡大していくのでした。不規則な生活に、ギャンブル、キャバクラ。其れらを、やめられるはずもなく。寧ろ、私たちが死んだ後の方が、加速するのではないかといった勢いでした。
「そこまで、良い収入の仕事に就いていないこの家の息子や孫達は、どのようにして生計をやり繰りして行くつもりなのでしょうか。」
怖ろしくて。恐ろしくて。私たちが、この家の電気代、水道代を払えなくなったらどうするのか。御金を出せなくなったらどうするのか。どうしようも、ないのです。借金だけはしないでくれよ、私の、子供と孫達よ。
「大学にはお金がかかるし。どうするつもりだい。収入は追いついているのかい。」
そんな、ことをきかれれば、子供扱いしやがってと、私たちを目の敵にして、恨んでくるのだ。
これは、、、。この家の未来は非常に危ういでしょうな。
彼は、その未来を覆そうと、売れない作家を続けていた。インターネットを利用したブログでの広告収入や、動画での収入、で生計を立てようと考えてのことだ。そんな、姿を見ても、やはり、夢見がちな子供、若者だと、将来をさらに憂うのであった。
そんな、彼が売れっ子になった日は、もう祭りになった。
祭りのように、彼は祝われた。此処までの憂慮があったのだろう。売れた瞬間の彼らの安堵と言ったら果てしないものだった。おめでとうの嵐だった。
僕は、嬉しいというより、困惑と驚きの方が大きかった。忘れられたと思っていた、学生時代の友人も、教師も、家族も、私の成功を一緒になって喜んだ。僕にはできないことだと思った。このように、他人の成功を一緒になって喜ぶことなんて、僕にはできない。それなのに、僕の知った人は僕を崇め奉った。
ただ、売れるとは、こういう事だ。という事だ。ありがたがられ、頼りにされるという事だ。責任も重くなり、如何した訳か、発言力も付くのだ。
成功者の言葉を聞きたがるものは後を絶たない。あなたの演説をきいて成功しました。そんな話はもう聞き飽きたくらいだ。僕は、孤独になった。
成功者の孤独は、こういったものかと思った。人は僕を特別とみなし、話してはくれない。凄い人だといわれ、プレッシャーがかかる、そして、孤独に仕事をするのだ。
背中には、何処か哀愁が漂い、其れが還って彼の非凡さを物語っていた。
今でも、あの賞を取った日の事を、注目される切っ掛けとなった、その動画を投稿したひの事を、忘れてはいない。
何処から知ったのか、僕の連絡先に沢山の祝いのメッセージが来たことを、知らない、あったこともない人からも、コメントやメッセージが届いた時の事を、こんなに、変わる者なのだと、驚いたし、ファンができて、私のアンチと戦ってくれていて、ここまで来たかあ。と感嘆していた。
こういった事をしていると、アンチも沸いてくるが、私はその分だけ注目されるようになり、信者のような人達も出てきた。すごい勢いで、波に乗っていたし、波を作ってもいた。
もう、一生遊んで暮らせる程稼いだ頃には、私の社会的立場は大きく向上していた。僕の事を知らない人は殆どいなかった。其れくらいの知名度と人気を手に入れていた。
こうして、御金に余裕が出てくると、嫌いだった親にも親孝行してやるかという気に自然となり、家のリフォームと、新車、家電をプレゼントした。家族は大喜びで、良い子に育ったわ。と涙さえ流していた。
そうして、いるうちに、僕も年を取り、おじさんになっていた。次世代の新人が来ていた。そうした新人達に負けないように、務めた。新しい技術や、流行を読んで、時代に遅れないものを創ることを意識した。
世界的に有名になり、王族や貴族、大企業の社長、国の首長に呼ばれる事もあった。僕は国から表彰された。新聞や、テレビでも大きく取り上げられ、世界の といわれ、世間の注目の的となり、栄誉ある人物、偉人のような存在にさえなっていた。
僕は、人を雇うようになり、専用の弁護士と、記録係、スタッフが三人と、豪邸に住むようになった。
住所はばれないように、気を付けた。危ない集団に目を付けられるようになり、警備として、護衛の人を雇った。相当な影響力を持つようになってしまったので、世界が私の言動に敏感に反応した。
僕は、僕のアンチから殺人予告が届いていた。僕は、その度に引っ越しを繰り返しい、警備を強化した。
政治家は、わたしに賄賂を贈り、支援してくれないかとせがんできた、あるテロ組織が、資金援助をしてくれないかと頼みに来た、財団のようなものを作り、上場しないか、と話を持ち掛けられることもあった。長者番付に載った事は、別段驚く事ではなかった。ビジネスでも成功したに過ぎないからだ。そのビジネスは、僕が首謀者ではなく、あくまで宣伝役だったが、経理と、事業が優秀で、如何した訳か、僕が取り締まり役になり、世界一の大企業になってしまったのだ。
政治家も、テロ組織も私にアクセスを取ろうと必死だった。
自家用ジェットで、世界中を飛び回ったし、ジェット機のチャーターの依頼も殺到した。パイロットを雇った。
宇宙にロケットを飛ばし、人工衛星で医学の研究をする、事業が成功した。
学問の発展にも貢献するために、赤字覚悟で、研究資金を寄付したが、其れが功を制して、数々の歴史的発見を促した、研究者は金がなくて困っていたのだ。そうした研究者を支援することで、国は科学の発展が目覚ましく進んだ。
その発見による新技術でさらに、儲けて、不動の地位を獲得した。その家系が神ヶ崎財閥である。
神ヶ崎財閥。世界一の売り上げ、生産量の巨大財閥。其れはもう国のようである。
従業員の数は、百万人を超える。巨大組織で其の下請け会社の数も著しいものがある。
神ヶ崎 葵 神ヶ崎財閥の創設者にして、白の空間に干渉できる、極めて稀な存在。其れは、偶然実験中に海底の中に出来た穴だった、そこから白の空間につながっていたのだ。天上 与一は技術者 兼 天上工業の代表取締役で、潜水艦の実験をしていた、その時物理的にあり得ないエネルギーを察知し、海底深くを探査している時見つけてしまったのだ、その穴を。
この出来事が、世界の運命を握っているともしらずに、彼等は、穴に飛び込み、その白の空間に入った。
「ほう、まさか。この空間に四番人以外の存在が入って来るとは。」
「地球人ですな。これは。天上さんの不手際ですよ。」
「すまない。まさか。あの、穴に気づく人間がいるとは。」
「いよいよ、人間も神の領域に近づいたか。」
「全く、ガルドの世界の人間という生き物の成長は著しい。一体どうなっているのやら。」
そこには、四人の人間がいた。僕たちは、来てはいけない所、人間の踏み込んではならない神域に入ったと、惧れを覚えた。幸い言葉は通じるようだ。
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