一存



 子供の頃よく親がそうしてくれたように、僕は僕の兄弟の子供を可愛がった。けれど、僕は彼等の父親ではなかった。だから、僕は、そうした、家族の愛すべき団欒も、旅行も知らなかった。子供ときの感覚は残っていても、それは、随分愛しいものに思えた。


 どうして、僕は、人を愛せないのか。幸せな家族とは、正に、僕が幼い時の家族のそれその者だった。大きくなると、わからなくなるものだ。


 一心に愛された私は、其の愛しい、家族旅行も、あらゆる思い出もどうだか、随分頭痛の種になっていた。


 どうして、こんなに大切に育てられたのだろう。きっと、誰もが羨む幼少時代だったに「ちがいない。それなのに、僕は子供を作りたいだなんて思えないんだ。


 どうしてなんだろう。


 僕はおかしいのかもしれない。


 きっと、ひどい人間なんだ、僕は。生まれてくる子供を怯えているんだから。怖いのだから。これが仮面を被って生きてきた僕の末路なのか。


 ただただ。怖かった。子供を愛せる気がしなかった。これが不器用というやつかもしれない。どうすれば、あんなに子供を可愛がれるのかしらなかった。きっと、これが、能力なんだ。


 僕は、子供を山に捨ててきた。それも他人の子供を。


 そして、厳しく育てた。子供は、大変強くなった。そして、殺し合った。


 残酷だが、これが、本当の愛情だといった。強くなるには、父親を殺すのがいい。


 師匠を超えて弟子は強くなる。殺す勢いでなければ強くはなれない。


 僕は、次の世代を引っ張っていく子供に殺されて本望だ。もちろん生死を分けた戦いだった。


 子供は、私を治療して助けた。


 「どうして、助けたんだ。バカ者!」


 私は激怒した。


 「だって、死んでほしくなかったから。」


 世界とは何ともくだらないものだ。父の時代錯誤にもがっかりだ。父は、確かに私を殺す気で育ててくれた、しかしどうして、なかなかにつまらない親だった。高学歴で賢い人の筈なのに、やたらと根性だやる気だのと喧しい親だ。こんな便利な道具があるのに、どうしてそんな古臭い方法で強くならなくちゃならないんだ。


そう、それは、人工知能ナビゲータシステム。これを使えば、目標までの最適な道を提示してくれる。このシステムさえあれば誰だって成功できるのだ。其れなのに、お父さんは、山で修行ばかりしている。あれで本当に医学部卒なのか。疑わしいものだ。


 親は侍の家系だったという。生まれてきた時から真剣を握らされ、何度も殺されかけた。父は私と命を懸けて戦って負けたが私が治した。


 「。。。」


 「わかってるさ。しかし、これは、先代の祖先からの継承なんだ。」


 僕は、分からなかった。如何して屍瑠一族は、時代錯誤な剣術を屍瑠流の剣術を継承しているのかが。デジタルワールドが普及し始めた現代社会において、あらゆる経験は、其のあらゆる感覚痛みの感覚まで作り出し、経験できるのだ。


 「父さんは、時代遅れだ。努力なんて古いんだよ。デジタルデータを脳にインプットすれば、あらゆる経験が買えるのに。」


 「父さんの時代はインターネットっていうだけでも熱狂できたよ。全く近年の技術革新は素晴らしい。」


 といって、彼は腕時計を眺めていた。


 「デジタルワールド株式会社、その会社の集めたデータしかインプット出来ないんだろ?」


 といった。屍瑠流の剣術は無いわけだ。売り渡さないでくれよ。と父は言っていた。暗殺剣術、なんだ。それに強力すぎるから、体が付いていかないはずだ。といっていた。御前は山で修行しているから、この流派の剣術が使えるだけだともいっていた。

  

 「そうだよ。情報がないと駄目なんだ。」


 「お前は世界大戦を知らないんだ。だから呑気でいられる。」

 

 この、世界中が戦争したことがあった。そんな残酷で凶暴な時代があった。それは、データで経験したことだ。 


 「知ってるよ。」  

  

 「いいや。お前のは疑似的なものだ。この剣術は戦争の時にきっとお前を助けるんだ。」


 その僅か三年後、世界大戦は始まった。


 私の屍瑠の剣術の威力は凄まじかった斬れないものはなかった。戦争中の武勲で、表彰された。このようなデジタル化の時代に兵器を使った戦なんて馬鹿げてると思ったが、この戦争は、正にそのデジタルデータに関する各国の利害争いから始まったものだった。


 旅行会社は、旅行を売る。家族売りは家族を売る。子供売りは子供を売る。経験売りは経験を売る。


 経験コピー機は、人間の感性をコピーして売る。


 子供売りは子供を売り。陣痛売りは陣痛を売る。あらゆるものが売られる。そして経験が金になる。他人の経験が売られて金になる。そんな世界。死人の経験は全て無料で配布される世界。


 生きてる人間は記憶をコピーして売れる世界。とても奇妙な世界だが。そんな時代に戦争は始まった。 


 多くの人が死んだが、其れもデータ化され人格ごと蘇ったようにみえた。気味の悪い現象だった。が人々は何時しか、それらの技術を素晴らしいものだと崇拝するようになった。


 虚構の世界。現実に近い虚構の世界。偽物で、しかし、それは限りなく本物に近かった。


 屍瑠 纏はそんな事を考えていた


 傀儡政権の誕生です。雨傘一族の傀儡それが、この国の敗因でしょう。

 

 この世界には波があり、周期がある。最大値と最小値がある。この世界は、離散的で、その組み合わせによってでしか、存在に形を与えられない。白と黒でその組み合わせ。0と1の組み合わせ。そのような、二つの裏表の組み合わせでしか、表せられない。


 違うのかもしれない。裏表は有無とは事柄だし、強弱ともちがう。全ての物理現象を波の振動の最大値と最小値で考える。其れはこのを統一的に記述することにに他ならい。

 

 雨傘 瞳の瞳教信者は、その唯一神である、雨傘 瞳と、その父 日光 天使 とその母 雨傘 還(かえる)の神聖について激しく議論が交わされた。母、子、父の全てに神聖はあるのか。其れは、この瞳教の信者にとっては、戦争に発展する重大さを持っていた。

 

 「いつの時代も親子でその優位を争うものだなあ。」


 「三位一体は、クソだ。」 

 

 「雨傘 瞳こそ、唯一の神で、他の存在が神になるなど、許されない。偶像崇拝は許されない。」 

 

 「祈りを捧げよ。」


 「唯一神 雨傘 瞳。」


 この世界には、日光 天使を崇拝するものも、雨傘 還を崇拝するものもいるが、其れは許されない、雨傘 瞳のみが神だ。死んで蘇り奇跡を起こした神。日光 天使も 雨傘 還も、神ではない。雨傘 瞳こそが、この世界の神なのだ。


 日光派と瞳派と還派は、争い。世界最大の宗教戦争を引き起こした。


 その戦争の結果、瞳派が勝利し瞳教は世界宗教になった。教典の名前は、聖クレットビブリオ。この聖書には予言めいた事迄書かれていた。瞳は未来予知が出来たと言われている。

 

 聖クリットビブリオには、世界の始まりから終焉までが書かれている。そして、唯一神の天魔 闇光の子として誕生する瞳の入内告知を受けた、雨傘 還が処女妊娠を遂げ、瞳を生むシーンが書かれている。

 

 「ああ。麗しい。何と神聖な。」 

 

 生れてきた、瞳は光に包まれていたという。

 

天魔 闇光の子供は瞳のみ。その瞳は神の子なのか。その証明は彼女の特異な超能力が証明した。未来を予知したのだ。そして、滝を割った。地震を止めた。気象を予想して外したことは無かった。


 「貴方は、本当にあの天魔 闇光の子供なのですか?」

 

 ある者は尋ねた。

 

 「分かりません。しかし、この世界の創設者がいるとしたら、其れはきっと彼でしょう。私は、彼の子ではありません。彼への反逆者です。」 

 

 「あなたは、神ではないのですかああああああああああああああ!!!!!!」

 

 民衆は激怒した。

 

 「神の子です。天魔 闇光の子です。しかし、彼の事は殆ど知らないばかりかあったことさえありません。私は、ただ彼に創られ、そのDNAを創られ、母の腹に移動させられ、たのです。そして、私は、父の罪を贖う為に死んだのです。」

 

 衝撃の告白に信者は驚いた。神 この世界の創始者 天魔 闇光は、人間を見捨てたくそったれではないかと、がっかりしていた。 

 

 「すいません。私の父がこのような、酷いもので。私は父に代わって、この世界の神であります。」 

 

 彼女はそう言って、父の罪を、人間の罪を贖おうと、犠牲になって死んだのであった。その後奇跡が起こりよみ蘇ったのだ。神の子であるだけの事はあり、彼女は、父なる天魔 闇光の恩恵を一心に受け、死んでも蘇ってしまうのである。


 「おお。神よ。」 

 

 「貴方は、奇跡を起こしました。」

 

 彼女の信者達は、其れを福音書にそれらの瞳の起こした伝説を記録し、それを伝道し広めた。結果、瞳教は世界宗教となり、世界中でその宗教を知らないは、殆どいないのである。

 

 瞳は、その後自らがこの世界から除外されていることに気づきました。人々の目では、彼女の姿が見えなくなったのである。其れから、彼女は伝説的になり、急に姿を消した、世界的宗教家、唯一神の子供として崇められた。

 

 人々には、彼女の姿は見えなくなった。見えないのである。世界の仕組みが、彼女の存在を異端と判断し、消した。しかし、確かに彼女は其処にある、彼女には人々も、物体見えるので或る。

 

 彼女はその後世界を放浪した。時々、霊感(魔力)の高い者は彼女の姿が見え、彼女と話した。世界中に彼女の考えは広まっていたため、彼女は世界で一番有名であった。


 やがて、科学が世の中を支配するようになると、人々は次第に瞳教を信仰しなくなっていった。それでも、その歴史は長く、多くの争いの火種になった。その度に彼女は心を痛めた。

 

 彼女は、四番人とも、天上 善悪とも、知り合った。其れは、彼女の持つ引力、実際に神の子である彼女は、その定めから、引き寄せていたのだろう。この世界の核心に。

 

 「雨傘 瞳。この世界で唯一神からの寵愛を受ける異端児。お前は一体何者だ。どうしてお前のような奴が存在する、あのこの四世界の創始者にして、世界そのものである、天魔 闇光から、このような恩恵、運命を引き寄せる力、人間を味方に付ける力、その魅力、そに能力を持って神聖を持っているんだ。そして、アンデットなのも、彼に唯一、愛されているからか。」 

 

 天上 善悪は、驚いていた。まさか。全世界の創始者とされている、天魔 闇光に創られた、存在がいるとは思わなかったのだ、あの滅多に姿を現さない、覇者が、一体何の目的でこの娘を作ったのだろう。不思議にさえ思った。

 

 「私は、分からない。生まれつき人を引き寄せる能力があった。そして、私は魂の魔力の方向が分かった。それらは、私の意志に与えてくれる、魔力が見えるんだ。可視化される、そして未来が見える。生れた時からそうだった。私が神の子だと分かったのは、ある時声を聴いたときからだあああ。語り掛けるように神の意志をきいた。未来を述べていた。そして、お前は神の子だと、私に思念を送ってきた。お前は、世界の視察の為に創った人形だ。人間という生き物を参考に創った。人間は面白い生き物だから、僕も作ってみたくなったのだ。私の愛する人形よ。お前は、人間の子として、人間の家族の元に生まれるが、きっと、私の魔力が籠っているお前は自分が人ではないことに気づくだろう。己の役割を見つけ。人間を導いてやってくれ。」


 このような伝言を、私は三歳の時受信していた。だから、私は、腐敗した闇夜 闇光を唯一神として祀り厳しいルールにより、処刑のある、闇夜教に対抗するため、罪を贖って、民衆の面前で処刑されたのだ。


 暦に私の生誕の時が使われ、科学が神に変わって人々が合理性により、信仰するものが減っても、瞳教は支持され続けた。やはり聖クリットビブリオの予言染みた記述とその百パーセント当たる的中率ゆえだろう、偶然だというものも奇跡だという者もいた。

 

 しかし、悪い国はこの雨傘の名を威にかい、自らは雨傘の子孫だと妄言を吐き、それにより、ある国家を征服し実質の傀儡政権にした。

 

 国名はゼノン。先の世界大戦で、私(屍瑠)が武功を上げた土地、瞳教の聖地だ。其れにより邪教は廃絶された。実質この世界で残った国は、日の国、闇の国、光の国の主要三ヶ国、天上の国イライザ、ゼロの国、波の国、そして聖都のある花の国ゼノン。


 聖地ゼノンを巡って宗教戦争は後を絶たなかったが、世界大戦の結果、世界は統一され、ゼノンの傀儡政権は打破され、世界は貿易、経済を、科学技術を相互に発展させ、魔力の存在が公になった。それが、二千三百三十三年 九月七日の午後三時過ぎの晴れた日の事であった。


 

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