其れは、突然に

 「ああああああ!やめてくださいませええ!」

 其れは、化け物染みた悲鳴にも似た叫びだった。女が穴に落っこちていった。空間に穴が黒い穴が開いて其処に腰から上の上半身が消えて、足だけがバタバタさせているのがみえた。

 「誰かああ!!!!!」

 響いていた。

 [ああああああ!」

 女は下半身も飲み込まれて何処かへ消えた。



 「悲劇のヒロインになりたいんです。」

 

 風変わりな女がとある都市の都内の芸能事務所にオーデイションにきた。芸能事務所には、役者や芸人を目指す人が、三千人は集まっていたが、この女は何か、異常なものを持っていると直感した。


 「藍坂 花梨、18歳、趣味は映画観賞。特技は演技です。」


 といって、役を演じる彼女は人格を入れ替えるようにして演技していた。化け物だと思った。

 

 「はじめまして。利腕 左です。」


 この仕事、映画監督の仕事を始めてからこんな逸材に出会った事はこれまでなかった。


 泣きの演技も、笑いの演技も、全てが、完璧で、その脅威的な集中力は恐ろしかった。

 

 「しかし、ヒロインはもう埋まっているんだ。」

 

 「厭です。私はヒロインしかしません。私は主人公です。何をしたって主人公なんです。」

 

 残念だ。主人公は別の人で埋まっている。

 

 「もしもし。  ええ。そうですか。」

 

 「主人公役の人が居なくなったらしい、失踪かな。」

 

 全ては彼女に味方する。彼女の都合のいいように世界は折り曲げられていく。

 

 「交通事故で無くなったそうだ。」

 

 「やったー。これで私が主役を出来ますね。邪魔ものが一人消えて清々しました。」 

 

 この世界は狂っている。 

 

 底辺YOUTUBERの赤崎 夜道は、動画を撮っていた。コンビニバイトをして稼いだお金で機材を揃えて、撮っていた。

 

 「YOUTUBERなんか、やめて勉強しなさい。」

 

 それは分かっている。僕 屍流 望 は浪人生である。勉強の合間を縫って動画を撮っているのだ。トーク動画。散歩動画。演奏動画。料理動画。なにやら色々試していた。登録者数は少しずつ増えていった。


 「しかし、インターネットは素晴らしいねえ。こんなに簡単に自分の考えや日常を発信できるなんて、便利な世の中になったものだよ。」


 と、夜道の祖父の屍流 積軌はいっていた。


 積軌は目立ちたがりの、男であった。政治家になって、よく説教をしていた。この積軌が生まれたのは、千九百四十六年で、終戦直後だった。彼は、決して裕福な家庭に生まれた訳ではなかった、寧ろ貧乏な家庭に生まれてきた。それに加え幼い時に両親が死んで、親戚に面倒をみて育てられた。

 

 その後、高校を卒業して、就職し定年退職と共に選挙をして、当選し、政治家となったのだ。


 政治の世界は恐ろしいものだ。討論の連続で失言したものは消される恐ろしい仕組みだった。


 しかし、彼は、曲者どもを抑え、自治にあたった。そして、死んだ。

 

 葬式で、父は泣いていた。 

 

 僕は、見て居られなかった。


 「気持ちの悪い。」

 

 式だ。


 僕は訴求されるんだ。碌な仕事しかしていない僕は訴求されるんだ。

 

 「僕を、バカにしないでくれ。」

 

 怖かった。こんな自分が怖かった。独身の、働いてもない、こんな自分が怖かった。誰も僕を叱るものも無かった。

 

 「これが、末路か。」

 

 と彼はいった。

 

 成人式も行かなかった彼に、もはや友達も居ないに等しかった。たとえ、僕が死んでも誰も悲しんではくれないだろうと思った。

 

 父は、泣いていた。自分の親が死んで泣いていた。

 

 ざまあみろ。と思った。

 

 父と母が死んで、僕一人になったら、この家も財産も僕の物だ。


 僕は、こんな家要らなかった。その財産で新しい事でも始めようとおもった。親が居なくなって清々しかった。兄弟は、子供を残していた。


 両親は、死んだ。僕が殺した。毒で殺した。土に埋めた。原因不明の死であった。


 死体を拳銃で何度も撃った。


 山の奥にその遺体は埋まっている。


 瞳暦。この暦は、瞳教の創始者である、雨傘 瞳が異端扱いされ世界から消されたが彼女が奇跡を起こして蘇ったその時を紀元一年とする暦だ。この宗教が起こったのは、アルファの国のレジデンス郊外市だった。瞳教は熱狂的な信者を集め、世界宗教になった。


 2020年現在


 藍坂 花梨は、考えて居た。歴史の教科書には、二千年前のことが書かれていた。瞳教ねえ。随分な宗教だ。それ以前の歴史は紀元前の歴史という事か、面倒くさいな、宇宙の始まりは約百三十五億年前だ。地球は四十五憶年前に誕生。。。。人間は七百万年前にはいた。そして、七万年前に認知革命が起こり、知能が急速に発達した。そして、その後一万年足らずで農業革命を起こし、科学革命を起こし、現代文明を築いた。

 神話には、この世界は天から降りてきた神の使いの天上 善悪が創ったと言われている。

 善悪は、この世界に降りてきて、水と火を作り、其処から霧を作り出し、地上に神の樹と、巨人、人間、動物、海、川、湖、太陽系を作り出した。そして、人間に善悪の精神を与え、地球を作ったとされている。

 善悪のいう事には、この世界は監視されている。私は天上の世界から、この世界を作る命を受けてきたのだ。宇宙は、大天使様と大悪魔様が創られた。カオスから生まれたものだ。

 この善悪に関する記述は公には公開されていない。私の父、藍坂 充は歴史学者で、その謎に迫っているらしい、大天使様、大悪魔様とは何であるのか。異世界はあるのか。父は、遺跡を発掘に没頭していた。

 世界地図も、月へも到達した人類が、このような事に、いるはずのない、ものにロマンを感じるのはバカらしいと思っていたが、父がこの文書を見つけた時は驚いた。昔の人が書いたフィクションだとは思うが、この国の建国にかかわるものだとは一目でわかったし、炭素年代法でも、紀元前三千年以上前のものだと、分かっていた。

 

 「二千二十年、あの文書の予言によると、二千三十一年あと十一年後に、天上 一が世界を作り替えることになってる、天上の国の末裔が、役目を果たす年。」

 

 非科学的な現象を信じるようになったのは、私が、能力を持っていることに気づいた時だ。黒い穴を意のままに呼び出して、使える。初めは、無意識に気に入らない人間を消していた。この黒い穴は、存在を吸収する。私は、この能力のせいで、多くの人を存在ごと人々の記憶からも抹消してしまった。

 

 役者を目指したのは、自分の意識をコントロールするためだ。瞑想をして修行をした。私は、化け物を飼っている。

 

 しかし、ヒロイン役の誰かを消してしまったようだ。左利 徹という映画監督は私を採用するだろうか。私は主役しかできないのだ。邪魔なものは、消してしまう。

 

 「君、能力者じゃないのかい?。」

 

 その、唐突な、質問に驚いた。

 

 「どうして、分かったんですか。」

 

 「やはりか。君から能力者特有のオーラを感じるんだ。僕は、予知の能力と、空間歪曲の能力を持っていてね、ほらこの通りさ左手で触った空間を縮めたり、伸ばしたりできるんだ。」


 だから、君のブラックイレーサーは、僕には効かないよといった。空間を曲げて、遠ざけているのだ。


 「これは、驚いた。私以外にも、いたなんて。それに、ブラックイレーサーとは何?」

 

 「君の能力の名前さ。古文書に載っている程有名な能力だ。悪魔を使役しないと使えない類のものだ。一体、どのようにしてそんな高位の悪魔を飼いならしているのか。」

 

 「ペンちゃんのことですか。私が幼稚園の頃から見えるようになったペンちゃんがその悪魔でしょうか?」

 

 そこには、小さな角のと羽の生えた悪魔がいた。手のひらサイズの小さな悪魔だった。 

 

 「これは、これは。大魔神。アブソルート様。」


 黒の魔人アブソルート。まさか。これほどの魔人をこんな小娘が使役しているとは。


 「図が高いぞ。人間。我にひれ伏せ。」

 

 「どうしてこんな、小娘と契約したのですか?」


 「この娘は、天上文字が読める、天才だ。それどころか、天上の世界へのルートを発見しおった。」


 「ま、、、まさか。」

 

 「そのまさかじゃ。」 

 

 「儂なんぞ居なくとも、この娘は、ある程度の魔力は使える。幼い時から無意識に世界を改変させている。」


 まさか、此奴が。そんなにすごいやつだったとは。天上文字は何の手がかりも無い文字。単語

、文法に全く手掛かりがなく、魔力で、見るしか読む手のない文字だ。


 「しかし、天上一族もこのような神に仇をなす人間が現れるとは、予言できなかったようだな

。」 

 

 我ら、地上の神々如き、あの一族からすれば、ゴミに等しいだろう。例え、この小娘のような当然変異の異能が現れても、奴らの足元にも及ばない。軍神アーミーの力を持ってしても、天上 修には勝てなかった。あの、天上一族の最高傑作が。この世界のシステムを管理するシステムを作り出した、創造主。


 

 「未だ、時期ではない。二千三十一年の予言まではまだ時間はある。」


 「其れまでに、戦力を集めなければ。」


 アブソルートは、利腕 左が何者なのか。わからなかった。人間風情が神々の話を知り、魔力を持っている、警戒心を覚えていた。二千三十一年の予言を知るものは、ごくわずかな地上の神のみだ。


 「お前、一体何ものだ。」


 「私ですか。私は、元四番人 左利 徹です。今は名前を変えて、利腕 左で芸能事務所の社長兼映画監督をしています。」 

 

 「四番人。実在していたのか。」


 四番人。其れは、この四つの世界の番人であり、実質の統治者。世界のあらゆる現象を解き明かす装置の製造から、経験のコピー機、迄あらゆる不可能を可能にするのが彼らの目的であるが、その存在は伝説上のものだと考えられていた。 

 

 「当時、四番人は天上、左利、数色、紅葉柱の四人だった。僕の統治していた世界は、このような世界ではなかった、生き物は金属でできていた。呼吸はなく、電気で動く生命を私は作った。その惑星をアイアンという。しかし、私は、地球に来た。番人の座を捨ててでも地球に行く必要があったのだ。それが、二千三十一年に生まれる、天上 一の予言だ。一はこの世界の法則を書き換える技術を確立し、世界を征服する。この予言は、四番人がつくったコンピュータが予言したものであった、碑文にはそう書かれていた、未来からメッセージが届いたのだ、碑文に文字が刻まれ、地球の創設者と契約を交わせの文字が書かれていた、誰が書いたのかは分からない。」  

 

 「地球の創設者といったら、大天使と大悪魔の生みの親の天魔 闇光 しかいない。天上の世界にいけるのは、四番人の天上しかいない。御前さんは、どうしてこんな仕事をしているんだ。」

 

 闇光は、この世界に四番人制度を作り出し、エネルギーの塊となり、光と闇をつくったという。この世界に違いを作り出した創造主であり、マイナスとプラスをつくりだした。その中央に般若波羅蜜が0の概念を作り、0と1による世界の記録が可能となった。


 「どうしてだろうね。地球人のする演劇にはまってしまってね、これが面白くって。」 

 

 「人間をつくった、天上は天才だよ。僕のつくった金属の生き物は死ぬことが無いから、こんなすばらしい芸術は生まれなかった。」 

  

 般若 波羅蜜さんは、この世界に存在していない、何もないという存在だ。空っぽの真実。其処に、天地開闢のカオスが現れこの世界に切れ目も作り其処から宇宙は広がった。宇宙はこうして創ることが出来る。


 「サイテー。」

 私の事を忘れるなんて。と彼女は言いました。

 

 彼が、付き合っていたかつての彼女も、そうでない幼な馴染みの腐れ縁の友人も、彼の変わり果てた姿と、よそよそしさに愕然としました。

 

 「誰ですか。」 

 

 「ちょっと、それ本気で言ってるの。本当に忘れちゃったの。」

 

 全ては演技で或る。

 

 「知らないですよ。人違いではないですか。」

 

 これは、人違い。僕は死んだんだ。

 

 「そうですか。残念です。知り合いに似ていたもので。」 

 

 「へえ。そいつは、どんな奴でしたかい。」 

 

 「面白い人で、優しくて、私は好きでしたよ。」 

 

 「そうですかい。」 

 

 僕は、そう思われていたようだ。本とかウソかは甚だ分かったものではない。

 

 「僕は、冷酷で酷い人間なので、やはり他人の空似でしょうなあ。」

 

 僕は、そういってそいつの首を刎ねた。首から上が宙を舞って、血が噴水の如く噴出した、シャーという音が聞こえる、物理的にあり得ない血の量と飛び出し方だ。

 

 「人間じゃ、無いですね。あなた。僕の同級生に取り憑いて、僕を狙っていたのですね。子の血の飛び出し方は、魔物しかいない、消去法ですぐに分かった。」

 

 あと100人か。同級生を殺すのも大変だな7あ。

 

 そういって、彼は、大量虐殺を成した。なんだ、人間なんて脆くてくだらない生き物じゃないか、不老不死のほうがずっといいよ。と利腕 右はいった。

 

 僕の兄さんは、人は死があるから美しいだとか意味の分からない事をいっていたけれど死なないほうがいいに決まっている。絶対に不死の実を食べて不死身になるんだ。

 

 金属の体で、完璧な存在だったのに、兄さんは、僕をこんな惨めな人間に堕とした、許せない。殺してやる。左利 徹。

 

 


 


 

 


 

  

 

 

 

 

 


 


 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る