金さえあれば

  単なる金持ちではなく尊敬できる金持ち起業家なんてのがいたとして、私は酷くそうしたものが、正義に見えた。お金は正義で、貧乏は悪に思えた。其れは、生まれた時からそう見えた。

 片霧 賢は考える。決して裕福ではない自分の家庭を、親を祖父母を。そして「駄目だな、この家は。」と吐き捨てた。きっと、大金持ちになり、この家から出よう、こんな将来性のない、ゴミの家にいるとだめだ。と5歳の頃にはそう思っていた。

 そして、家族を殺して、家の財産を元手に商売を始めた。

 商売は繁盛し、億万長者に18歳でなった。その後、世界中に商品を売って周り一躍大企業となり、世界経済を支配した。

 しかし、まあ甘い奴は駄目だ。どいつもこいつも使えない甘ちゃんばっかりだ。戦争経験者も使えねえ甘い人間だ。恐怖で支配しないと駄目だ。使えない人間ばかりだな。

 ちっ。遅い仕事だな。もっと、優秀な奴はいないのか。ったくよ。


 この世界は偉そうな奴ほど使えない。特に年寄り何ていうのは、扱いずらくて適わない、邪魔になるだけだから、即刻廃棄処分に出すべきだとさえ考える。年寄りはコストでしかないのだ。


 しかし、中年も実に使えないものだ。能力のないこの中年は言われたことはやるのだが、それが余計な事になってしまう見事な不良品なのだ。


 無能ばかりだ。どうしてこんな無能が生きていられるんだ。甘すぎる社会に反吐が出た。


 邪魔なんだ。


 若い人間は使える。洗脳して従順な労働者として、会社の歯車に仕立て上げるのには打って付けだ。

 

 お金で買えないものはない。いずれそういう社会になる。数字でしか正確にこの世界をす術がないのだから。交換の方法がないのだから。


 しかし、考える。御金に新技術は必須だと。科学の進歩は金儲けと結びつく。人類の発明は御金になる。この世界は金では買えないだろうが、この世界はお金で動かせる。御金は人を黙らせる。敬虔な人間も黙る。


 お金を増やすシステム。其れは、銀行か。金の価値を下げるもの其れは負債だ。金は増えればいいってものではない。価値あるもの、や技術革新が無ければ、金は無益だ。銀行を支配しても、さしたることは起こらない。人民にお金には価値があると納得させなければお金は紙切れに過ぎないのだ。


 そして、御金は今のところは何でも買える。人民はお金を信じ、御金と商品は交換できると信じている。食っていくとは、御金を稼ぐという事である。食べ物とお金は交換できるし、車も、生活に必要なものは御金になるし交換もできる。

  

 非合理性にはお金は作られない。新技術なしには、御金は作られない。御金。技術の高さは、御金になる。人の望むところにお金は集まる。御金は虚構の産物であるながら、決してウソはつかない。その額は、覆らない。法則があるし、人からの需要からしか、生まれない。


 銀行強盗をやってしまう奴の気持ちもわかる。なんっていったって、銀行でお金は作られているんだ。

 

 お金は、人々の信仰でもある。信者。便利なものへは、信仰が集まる、人は、それをありがたがる。信用なのだ。そして、結果なのだ。僕は、努力が嫌いだ。結果の実らない努力が嫌いだ。


交渉術。商人は交渉能力が異常に高くなければならない。相手の利害を考え、綿密に裏を回して有利に交渉を進める。其れが商人だ。と大守 千里は言った。


 大守 千里。彼女は、その交渉術によって、敵対国家からも商売の話を取り付け、金を取り付け、儲ける。交渉の達人だった。


 しかし、彼女は敵国の兵に殺された。


 「千里さん。どうして千里さんが死ななくちゃならないんだ。」

 

 当時の僕は、千里さんの元に商いのいろはを学んでいた。


 千里さんは、情のある商人だった。御金稼ぎも上手かったが、御金より大事なものを教えてくれた。けれど、信用していた、取引先の兵士に殺された。


 「許さない。よくも、裏切ったな。メロン王国。」

 

私はその時から、一層金しか信用できなくなった。人間は簡単裏切る。金は裏切らない。そして、金は人を黙らせる。

 

 血を流す、戦争の最中にお金が動いて、儲けが出るのも皮肉なことだ。戦いには、協賛金が必要だ。どんなスポーツだって儲かる。戦いには金が動く。それが、例え人が多く死ぬ戦争でも。

 

 世界経済を動かす迄には、非道な事もしてきた。どれだけの人の命も将来も人生も奪ってきたかわからない。此処まで、企業を大きくするのに、世界を欺き騙してきた。 

 

 世界シェアを誇る、うちの、パソコンも、人工知能も、空飛ぶ船も、核兵器も、核融合発電技術も、多大なる利益を生んだ。この会社が、財閥となり、世界一金を動かす存在になった。


 商人の耳には自ずと様々な情報が入ってくる。その一つが、この仮面の集団だった。。興味を持った私は、彼らに接触した。

 

 彼は、世界革命。世界政府の転覆を目論んでいた。玉座を狙う、座標を取る。国際都市の中心にある、玉座の間の全貌と、世界の中心について知らされた。衝撃だった。政府はこんなことを隠していたなんて。

 

 この、人間界が、変動相場制を利用し始めたのは、これまで固定相場制で世界経済を支配していた世界大国 デウス が経済不況に陥り、移行したものであった。

 

 それは、私が子供の時の事でもう四十年程以前の事になる。占領下にあった 日の国が独立して十年余り経った時の出来事あった。

 

 私は、世界銀行に仕組みを、世界金融機関の設立をし、この世界から固定相場制を排除し、自由競争の経済を加速させた。世界には、その動きに反対し固定相場制を存続しようとした国もあったが、交渉し、遂にその国さえも、変動相場制に移行した。


 ドミナント・アタシオンはその時、力を貸してくれた。彼は、交渉の場で、鎖国状態にあった国を、敵対関係にあった国との、交渉に成功し、その窓口に片霧 賢を指名した。ドミナントは、驚くべき情報や、力と引き換えに、話を持ち掛け、国家はその条件をのみ、成立したのだ。


 片霧 賢は、彼と初めて接触した時、此奴は人でないと思った。生き物の匂いがしないのである。それでいて、美しく神々しかった、右半分が黒で、左半分が白の仮面を被っていた。声は透き通るように綺麗な高い声と。鈍く重たい低い重低音を使い分けて話していた、話し方から、天才だと一瞬で分かった。

 

 「はじめまして。片霧 賢です。」

 

 「はじめまして、ドミナント・アナスタシオンだ。」 

 

 面会は、深い山の奥の屋敷だった。


国の利害を考え、貧困を、食糧不足を、経済を、人種を、宗教的考えの違いからくる争いを、領土争いを、嫌い、永遠の存在になる事を信条とする彼には、御金などどというものは、あくまで、費用であり、革命の為の手段に過ぎなかった。

 

 「君の異常さはよく知っている。その歳で世界市場の覇者となり、あらゆる製品のシェア率は半数を超えると言われているそうじゃないか。」 

 

 「はい。けれどあなたに比べれば、大した事はないでしょう。」 

 

 「いいや。金稼ぎでは君の方が格上だ。僕の組織は、財政が下手糞な奴ばかりでね。君のような天才は、メンバーに必要だったんだ。」

 

 「仮面の組織。手配をして、その存在に接触した時は、実在したのかと驚きました。そして、私をメンバーに加えようだなんて、私はこれでも、世界一の金持ちですよ、そんな私を、メンバーに加えれば、きっとこの組織の存在も危なくなるでしょうに。」

 

 「なあに。心配はいらないよ。君は今までどうり商売をすればいいのさ、この組織は君を束縛しないよ、君がするのは、組織への資金繰りだけだ。只でとは言わないよ、各国の貿易を優位に進められるよう手配をしよう、その他にも君の商売の手助けになる事をするよ。」


 戦争している国の戦争を調停し、裏で金を流し、商会に返し切れない恩を売りつけ、多くの国の市場に介入した。独占企業。それは、禁忌だが、彼らの商売は、独占的でありながら、他の企業の売り上げ貢献にいくつもの影響をあたえた。民衆に物を買う、金を使う事の恐怖を減らしたのだ、ものの値段を統一、世界通貨の統一、物価の高騰、貨幣価値の下落は、急速なインフレーションを引き起こしたが、世界銀行は御金を流し、世界市民はお金を使った。新技術の開発と、食糧の完全人工化、エネルギー革命による、核融合発電の開発、それらが世界市民の無駄遣いを加速させ、世界は大量消費のさらなる奥深き罠にかかり、市場には、新たな技術によるビジネスで埋め尽くされ、従来の、質の悪い商品は無くなり、質の良い商品で溢れ、人々は金を使い、市場は大いに盛り上がった。


 「これが、片霧 賢の手腕か。」


 あの、ドミナント・アナスタシオンでさえも、驚き、の能力を称賛した。


 「御金は、人を繋ぎます。」


 「私は只、餌をぶら下げただけです、人々は、その餌に飛びついた。人間が市場がなにを望んでいるのかが私には見えた。これが私の能力、何が売れるのかがわかる、市場の動きが予想できる。」


 ドミナントは、いった。貴様もやはり異能の持ち主だったか。後天的であれ先天的であれこの世界には物理的に証明できない能力を持つものが少なからずいる。世界のバグのような存在だ。ドミナントは続けた、この世界は一体どうなっているのか、僕はその真理を解き明かそうと思った、その時、この世界のバグに気がついたのだ。世界にバグが或るということは、即ち、世界の設計、元があるという事。その場所が、世界政府の中心地、ゼロ にあるのを突き止めた。


 「ゼロ。政府の重役しか知らないこの世界の中心。伝説上の産物だと思っていた。そもそもその情報を知っているのは、一部の人間のみ、しかし、私は古代文字を解読しその存在をしった。」


 「そんな、ものが本当に実在するのか。私は初めて聞いた時は驚いた。世界の中心の場所さえ分からない、条件は、何だ。」


 「世界の裂け目だと一説によると、条件が揃うと空間に穴が開き、其処からゼロに繋がる道が出来るとされている。」


 「条件は、...。」


 ドミナントは、条件を知っているようだったが、私には教えてくれなかった。


 「私は、この世界の人間ではなかった。遠い昔、違う世界から船に乗って時空を超えてやってきた、未来人異世界人だ。」


 その世界では、魔力は理論家され。その使い方、発動の仕方が、数式で記述できた。


 「そんな。まさか。」


 「その、まさかだ。その船が、この山奥の屋敷の地下三階に保管されている。」

 

 彼に案内されて、エレベーターで地下三階に降りるとそこには、極秘の研究施設とその船があったのである。 

  

  僕の暮らしていた世界は、その時終焉を迎えようとしていた。其処で、この船を製造して、別世界に移住してきたのだ。僕達アナスタ氏の家系は、この地球にこの船でやってきた。地球に当時住んでいた生き物に魔力と、進化の法則を与えた物は進化するようになり、遂に人間ができた。私たち、異世界人はその星の神として祀られた。その世界の事を サインといった。サインの世界の支配者の国ダイヤモンド国は、現在の地球社会とそう大差はない文明であった。異なる点は魔法があるという事だけだ。しかし、この魔法の仕組みも完全には解き明かされてはいなかった。宇宙のエネルギーが尽きて、世界が終焉する時、多くの民族、生物は絶滅した。アナスタ家はこの箱舟を作り、難を逃れた。その時連れてきた動物群が、龍、妖怪、となった。

 

 「つまり、あなたは、この世のものではないと?」 

 

 「そうだ、人間と化け物のハーフ、其れが私だ。化け物は生き物の目には見えない、世界の設計上僕達は居てはいけない存在、時々霊感の強い人間が、私たちを見つけては殺される。」 


 「あの、霊退治の陰陽師と、悪霊払い、以外は。」 

 

 「私たちは、この世界の生き物と契約を結ぶ事で人間に奇跡の力を与えた。」 

 

 悪魔憑きの力だ。


 サインの世界。四番人の一人 紅葉柱の統括していた世界。

 

 彼等は四番人の存在を知らない。この世界の統治機構を知らない。


 「わからない。ことばかりだ。どうしてサインは滅びたのか。エネルギーの消失とは何なのか。宇宙に終わりはあるのか。僕の先祖の生きていた世界は、滅びたとされているし、その伝承が残されていた。けれどその原因は分からないんだ。一体どうして滅びたのか。この舟だけが手がかり難だ。」 

 

 


 

 

 

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