第10話、新章

あれから1週間が経過した。


サクトとリンカとステラの3人は飯を食べて寝ることを繰り返した。


ステラはことあるごとに「異世界へ行こう」と勧誘するが、俺達は「戦うのは怖い」「もうちょっとだけお願い」という魔法の言葉を多用することで、今日も料理を気が済むまで食べることが出来ている。


ついでに言うと、料理を作っているのはステラだ。


しかも、ステラにしては意外と味もまともである。


ていうか普通に美味い。


今食べているカレーもとても美味しい。

癖になるくらいの辛さ。そして、その辛さと寄り添うように共存する肉と野菜と白米達が辛さを中和していく。


そして、今も2杯目のカレーをおかわりする為に炊飯器を開けた、そのとき天上界へ繋がる扉がガチャリと開けられた。


そこには銀髪ショートの黒いタンクトップを着た少女の姿があった。


「ステラ招集だ。来いっ!!」


「レベリア。招集ってまさか女神8人が集まるの?」


「ああ、緊急事態だ。ていうか誰だそこの男と‥‥‥えーと、そいつは人間か?」


レベリアは、リンカを指指し困惑の表情を浮かべる。


「えーと‥‥この二人は転生したけどまだ異世界に行けてなくて‥‥」


バツが悪そうに弱々しく口にするステラ。


「ああん!?まだ向こうに送ってなかったのかよ。まあ、別にどーでもいいけど」


「それで、緊急事態って?」


ステラが今がチャンスとばかりに本題へと話を戻す。


「その話は聖なる空域サンクチュアリでする。とにかく行くぞ」


「分かった」


そう言ってステラは食べかけのカレーを置き、立ち上がった。


「じゃあ、二人共そこで待ってて。絶対外出たらダメよ」


「ああ。頼まれても外なんか出ねーよ」


俺がそう言うと「まあ、そうね」とうんざりした感じでステラは扉の向こうへと姿を消した。


レベリアもステラの後に続いて扉の向こうへ行こうとしたとき、振り返りポンッと剣を投げた。


剣はクルクルと宙を舞、俺の足元に転がった。


「それ持って隠れときな。そっちのあんたは‥‥必要なさそうだしな」


レベリアはそう言って扉の向こうへと姿を消した。


「あの人‥‥たぶんすごく強いです‥‥」


横でリンカがポツリと呟く。


見ると、リンカの手にはバズーカーが握られていた。

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この勇者、転生したけど女神の部屋から出ようとしません 尾上遊星 @sanjouposuka

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