「将軍号」講座

ごきげんよう。崔浩である。

当話にて取り扱うは、将軍号。


「〜将軍って呼ばれるけど、

 一体それぞれがどんくらい偉いの?」


という疑問に回答するものである。


そして、それだけを答える。

実際にどのような職掌であったか、

いかほどの軍を率いたか、

なる疑問には答えぬ。


「この将軍号はえらい!

 なぜなら劉宋の時代に

 設定されていたから!」


と言える程度の雑学として

ご認識いただければ幸いである。


なお、出典は宋書である。

劉宋の時代、いわゆる官人は

九つのグレードに分類されていた。

ここで皇帝は例外。いわば、ゼロである。

「皇帝のための組織」が、

どう組み立っていたか、という認識が良い。


では、参ろうか。



○一品


大尉、大司馬、大将軍

皇帝の代理人としての、軍の最高司令官。と言って、この三者が揃い踏みすることはない。最高司令官に、これらのうちどれか一つの称号が付与される感じである。



○二品


驃騎将軍、車騎将軍、衛将軍

ものすごくえらい。ちなみに劉裕の時代、劉裕が車騎将軍で、劉毅が衛将軍であった。つまり両者の対決は、押しも押されぬ二大軍閥の衝突だったのである。



○三品


征東 征南 征西 征北

鎮東 鎮南 鎮西 鎮北

いわゆる四征、四鎮将軍。

それぞれが各方面に「攻撃を仕掛ける」ときの総大将、というのがもともとの職掌であったが、徐々に方面司令的な意味合いが付与されるようになった。

後に他の四方将軍も登場するので、ここで予めその序列の考え方を紹介しておく。

まず遠「征」し、敵を「鎮」圧し、民を「安」んじることで、敵地の「平」定がなる、といった次第である。


中軍将軍

皇帝直属の中央軍を司る、と言った感じである。皇帝の側近も側近がつく。例えば劉裕がこの地位についたし、後の時代には劉裕の長男、すなわち少帝劉義符が就いている。


鎮軍将軍、撫軍将軍

軍を「鎮め」「慰撫する」役割。名前からしても重鎮ぶりが伺える。


安東 安南 安西 安北

平東 平南 平西 平北

四方将軍の後半。


左 右 前 後

本軍の前後左右を守る。

中軍に準ずる直轄軍の指揮官と言える。


征虜 冠軍 輔國 龍驤

いわゆる大幹部たちに与えられる将軍号、と見なせよう。



○四品


東・南・西・北中郎將

四方将軍に準ずる武将たち。


建威 振威 奮威 揚威 廣威

建武 振武 奮武 揚武 廣武

このあたりが、いわゆる幹部候補生といった雰囲気である。ただし「建武」については劉裕がついた将軍号であるため、やや権威が重くなっている。このように、後の貴顕がついた将軍号にやや重みをもたせるとそれっぽくてよい。



○五品


鷹揚 折沖 輕車 揚烈

甯遠 伏波 淩江

このあたりはほぼ職能に割り当てられている感じである。ただし「甯遠」については目覚ましい活躍をした武将たちによく与えられている。いわゆる出世ルートの入り口、的な将軍号であり、やや重みが高い。



○八品(雑号将軍)


宣威 明威 驤威 厲威 威厲 威寇

威虜 威戎 威武 武烈 武毅 武奮

綏遠 綏邊 綏戎 討寇 討虜 討難

討夷 蕩寇 蕩虜 蕩難 蕩逆 殄寇

殄虜 殄難 掃夷 掃寇 掃虜 掃難

掃逆 厲武 厲鋒 虎威 虎牙 廣野

橫野 偏  裨


近代軍制よりすれば、このあたりが尉官クラスに当たる。八品とは、県(二十一世紀日本では市に相当する)における幹部クラスの役職である。



以上である。漢代、隋唐ではまた

違った位階となっておるのだが、

ひとまず、ある時代の

ヒエラルキーが頭にあると

他の時代の理解も多少は早くなろう。


ちなみに、なぜ北魏を紹介せぬか。

そのあたりを記録しておいた内容を、

我が処刑された折に処分され、

実態が不明となっておるからである。


後に魏収なる者が改めて職官を記したが、

飽くまで「漢化した」、

つまり南朝のシステムを吸い上げた

代物であるため、それならば

宋書のグレードを紹介するだけでよい。


では、また。

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