魏晋南北トリビア

称号のこと

「諡」講座

ごきげんよう、崔浩さいこうである。

当話のテーマは「皇帝の称号どうします?」

である。



武王ぶおう文王ぶんおう光武帝こうぶてい煬帝ようだい……。

歴代皇帝には、様々な称号がついている。

この称号は、おくりなとよばれる。

皇帝の死後、その業績をたたえ、

その名のとおり、「送られた名」である。


しゅうの時代からずいの時代までの皇帝は、

原則としておくりなで呼ばれている。

とう以降はいろいろあって

そのルールが崩れるのだがな。


また、功績著しい家臣、

最悪の所業の家臣にも、

同じような形で諡がつけられる。


で、その諡。つけられる基準がある。

それを記してあるのが、

逸周書いっしゅうじょ」に載る「諡法解しほうかい

と言う記事である。


それを実際に見てみよう、

そうすれば諸氏の国の皇帝にも、

それっぽい称号が付けられるであろう、

と言う次第である。




なにっ諡は死後に送られるものだから

称号として使うのはどうか、だと?


そんなことはどうでもよいのだ。

諸氏の国の皇帝をカッチョ良く呼ぶ。

これこそが重要なことであろう。


なお日本語は、作者のふんわり釈である。

あくまで参考にとどめ、諸氏の世界では

その下の(〇〇〇〇)を採用し、

「陛下は〇〇〇〇、

 故に□帝とお呼びするに値するお方」

的に運用するのがカッチョ良かろう。


では、参ろうか。



○称号


・すごすぎて形容しがたいお方。

 (民無能名)


・敬意、儀礼の良くいき届いた

 世界の現出者。

 (稱善賦簡)

 (敬賓厚禮)


・天と地の神をよく祀る方。

 (德象天地)


・民を法のもとに安んじるお方。

 (靜民則法)


・世のルールの規範となるお方。

 (仁義所在)


・信賞必罰をモットーとするお方。

・多くの人々を従える。

 (賞慶刑威)

 (從之成群)


・ルールを人々に知らしめるお方。

 (立制及眾)


・しきたりを広く伝える方。

 (執應八方)



○諡


・至上の徳を貫く方。

 (壹德不解)

・その政簡易にして落ち度無し。

 (平易不疵)


・天地の現象をあまねく知る。

 (經緯天地)

・道徳観厚きお方。

 (道德博厚)

・常に学び、問い続ける。

 (勤學好問)

・民草を良く愛する。

 (慈惠愛民)

・民をあわれみ、恵みを施す。

 (愍民惠禮)

・民をより高みへと導く。

 (錫民爵位)


・方正にして最強。

 (剛彊理直)

・その武威で徳を知らしめる。

 (威彊叡德)

・災いを退けた英雄。

 (克定禍亂)

・峻厳なる施政のお方。

 (刑民克服)

・その高き志に果て無し。

 (夸志多窮)


・先達をよく敬う。

 (敬事尊上)

・賢者を敬い、仁義を愛す。

 (尊賢貴義)

・貴きものを敬い、謙る。

 (尊賢敬讓)

・過ちは速やかに改める。

 (既過能改)

・堅実なる執政。

 (執事堅固)

・民を愛し、後進を育てる。

 (愛民長弟)

・儀礼を見事に取り仕切る。

 (執禮御賓)

・父祖を敬う。

 (芘親之闕)


・その志で遠方をも照らす。

 (照臨四方)

・讒言には耳を貸さない。

 (譖訴不行)


・その威儀を万人に示す。

 (威儀表備)


・民草の心を大いに安らげる。

 (大慮靜民)

・民を安らげ、古き法に従う。

 (安民法古)

・行いに過ち無し。

 (純行不爽)


・威圧することなく説得する。

 (諫爭不威)

・配下たちをよく慰撫する。

 (綏柔士民)


・遠征先に徳をもたらす。

 (辟地有德)

・自ら戦地に出ることを厭わない。

 (甲冑有勞)


・遠征で戦果を挙げ、帰還する。

 (有伐而還)

・諫言を受け容れる深みある資質。

 (質淵受諫)

・ぶっちゃけ小心者。

 (小心畏忌)


・物知りで能動的。

 (博聞多能)


・めっちゃ聡明。

 (聰明叡哲)

・聖人レベルの知恵の持ち主。

 (知質有聖)


・聖人レベルの柔和さ。

 (溫柔聖善)


・よく先祖を祀る。

 (五宗安之)

・親によく仕える。

 (慈惠愛親)

・祭祀をきちんと執り行う。

 (協時肇享)

・徳に従い、逆らわない。

 (秉德不回)

・広く配慮の行き届く方。

 (大慮行節)


・厳しい政治を行う。

 (執心克莊)

・臣下とともに政治に取り掛かる。

 (資輔共就)


・政治に対する深い知識。

 (淵源流通)

・豊作をもたらした。

 (豐年好樂)

・民をよく慰撫した。

 (安樂撫民)

・民を健やかにはぐくんだ。

 (令民安樂)


 民を安んじる政をなした。

 (安民立政)


・徳行を世によく振り撒いた。

 (布德執義)

・その情け深さが顔にも出ている。

 (中情見貌)


・素早い心配り。

 (敏以敬順)

・臆病、ゆえの勤勉。

 (祗勤追懼)

・慈愛の心で民を愛す。

 (慈仁和民)


・人格者であり

 ねぎらいの心を持つ。

 (昭德有勞)

・厳しくも恭しい。

 (威儀恭明)

・博聞にして、情報共有に熱心。

 (聖聞周達)


・老いてなお益々民を愛す。

 (保民耆艾)

・長寿の明主。

 (彌年壽考)


・ツエー、マジツエー。

 (彊毅果敢)

・過ちをよく修正する。

 (追補前過)


・柔軟な知恵もの。

 (柔德考眾)

・恭しく、みだりにしゃべらない。

 (恭已鮮言)

・死の間際までゆったりとしている。

 (寬樂令終)



・よく治め、災い無し。

 (治而無眚)

・よき法制を定めた。

 (執事有制)

・世の中によきルールを広めた。

 (布綱持紀)


・仁義に基づき世を良くした。

 (由義而濟)

・仁義を広め、国を強化した。

 (布義行剛)

・深く配慮の行き届いた政をした。

 (耆意大慮)


・清廉潔白な人柄。

 (清白守節)

・深謀遠慮でことをなす。

 (大慮克就)

・公明正大な振る舞い。

 (不隱無屈)

・近親の情で人事を行わない。

 (外內用情)


・ものすごい武勲を挙げた。

 (猛以剛果)

・めっちゃツエー。

 (猛以彊果)

・強くて頼れる。

 (彊毅信正)


・ルールをよく守り、みだりに殺さない。

 (治典不殺)


・遠方をも服属させた。

 (辟土服遠)

・人々を勤勉な暮らしに導いた。

 (克敬勤民)

・多くの領土を獲得した。

 (辟土兼國)


・道徳心の塊。

 (道德純備)

・多くの民を大いに思いやる。

 (大省兆民)

・深く思考する。

 (外內思索)

・過去の後悔を引きずる。

 (追悔前過)


・優しく民を慰撫する。

 (柔質慈民)

・民によく恵みをもたらす。

 (愛民好與)


・諫言を素直に受け入れる。

 (柔質受諫)


・多くを考え、多くを喋る。

 (能思辨眾)

・人々に仁義を説く。

 (行義說民)

・国を始めた人。

 (始建國都)

・仁義に基づき徳行をなす。

 (主義行德)


・戦争大好き。

 (兵甲亟作)

・聡明であり、果断。

 (叡圉克服)

・富国強兵の意志が強い。

 (勝敵志強)

・外で死んだ。

 (死於原野)

・遠征で虐殺。

 (屢征殺伐)

・戦争で負けた。

 (武而不遂)


・虐殺を政治の手段とした。

 (克殺秉政)

・「民の静けさ」を愛した(隠語)

 (安民好靜)


・人事を讃え、善なるを奨励する。

 (執義揚善)

・慈愛ある人であったが、夭折。

 (慈仁短折)


・夜も惜しみ警戒していた。

 (夙夜警戒)

・夜も惜しみ仕事していた。

 (夙夜恭事)

・法律をよく参照した。

 (善合法典)


・先人の仕事を受け継げない。

 (述義不克)

・迷いによって人間関係を悪化させる。

 (迷而不悌)


・凄まじい功績で人々を喜ばせた。

 (有功安民)

・徳行で仕事を成し遂げた。

 (秉德遵業)


・凄まじい戦果を挙げた。

 (剛克為伐)

・深謀遠慮のひと。

 (思慮深遠)


・不断の意志で功績を挙げる。

 (剛德克就)

・果断のひと。

 (執心決斷)


・民を愛し、よく治める。

 (愛民好治)

・典礼を忠実に執り行う。

 (典禮不塞)


・死して初めて志を成し遂げた。

 (死而志成)

・乱にあっても生き延びた。

 (亂而不損)

・よく祭祀を知る。

 (極知鬼神)

・特に働いていないのに

 名を挙げた。

 (不勤成名)

・死後霊となってあらわれた。

 (死見神能)

・祭祀大好き。

 (好祭鬼神)


・夭折のため何もできなかった。

 (短折不成)

・結婚する前に死んでしまった。

 (未家短折)



・ひっそりと政治を行った。

 (不顯尸國)

・まじめだったが功績無し。

 (隱拂不成)


・30前に死んでしまった。

 (年中早夭)

・臣下や民を不安に陥れた。

 (恐懼從處)


・民を思いやらず、愛さない。

 (不思忘愛)

・諫言を退け、災いを招く。

 (愎佷遂過)


・国内外を荒れ放題にする。

 (外內從亂)

・遊んでばかりで政治を疎かに。

 (好樂怠政)


・治世中に大乱に出くわした。

 (在國逢難)

・多くの民の死に出会った。

 (使民折傷)

・治世中にひどいことが立て続けに。

 (在國連憂)

・災いばかりに出会った。

 (禍亂方作)


早くに父を亡くし、自らも夭折。

 (蚤孤短折)

良い子であったが夭折。

 (恭仁短折)


・早くに父を喪い、自らも夭折。

 (蚤孤隕位)

・政令を行き渡らせられない

 (雍遏不通)

・なんかそわそわ落ち着かない。

 (動靜亂常)


・威儀にて物事を解決。

 (克威捷行)

・威儀あり、かつ礼法にも明るい。

 (克威惠禮)


・クソ。

 (去禮遠眾)

・身内びいきのクソ。

 (好內遠禮)

・サボりん坊のクソ。

 (好內怠政)

・好き勝手なクソ。

 (肆行勞神)


・おどおどしてて情けない。

 (醜心動懼)


・めっちゃ強い。

 (威德剛武)


・意見をよく聞き、よく広める。

 (善聞周達)


使

・民を見事に治めきる。

 (治民克盡)


・内外によく気を配る。

 (行見中外)


・勇者。

 (勝敵壯志)


・民をよく讃え、安んじる。

 (昭功寧民)


・よく古例を参照し、今を収める。

 (狀古述今)


・よく節度を保った人。

 (心能制義)


・平和を望み、争いを嫌う。

 (好和不爭)


・内なる良き心を言葉に発する。

 (外內貞復)


・国外で生まれた人。

 (不生其國)


・暴虐非道。

 (暴慢無親)

・無実の人を殺す。

 (殺戮無辜)


・配下たちの内情に明るい。

 (官人應實)


・凶作を招いた人。

 (凶年無穀)


・名と実が伴っている。

 (名實不爽)


・以前の過ちを顧みない。

 (不悔前過)


・温厚で楽しいことが好き。

 (溫良好樂)


・えばりちらす。

 (怙威肆行)


・徳深く、温和。

 (德正應和)


・滅私奉公のひと。

 (勤施無私)


・トラブル大好き、民を動揺させる。

 (好變動民)


・慈愛の心で誰もが感服する。

 (慈和遍服)


・心配性すぎ。

 (滿志多窮)


・自らを犠牲にして上の者に尽くす。

 (危身奉上)


・千里眼のひと。

 (思慮果遠)


・外交を軽んじる。

 (怠政外交)


・後継者問題に対して適当。

 (疏遠繼位)


・仁義に忠実。

 (彰義掩過)


・物事を素早く解決する。

 (肇敏行成)


・人々が感服せずにいられない。

 (內外賓服)


・口先だけのひと。

 (華言無實)


・お説教が長い。

 (教誨不倦)


・いたずらに残虐刑を行わない。

 (愛民在刑)


・けちんぼ。

 (嗇於賜與)


・天位に逆らい、民を虐げる。

 (逆天虐民)


・節度を保ち、自己を高める。

 (好廉自克)


・よりよきものを選び出す。

 (擇善而從)


・朝令暮改のひと。

 (好更改舊)


・見せ掛け倒し。

 (名與實爽)


・その思慮に間違いなし。

 (思慮不爽)


・おおらかな器の持ち主。

 (貞心大度)




以上である。

諸氏の諡ライフが

より充実してくれることを祈る。


では、またいずれかに。

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