第7話 8月3日 動き出す政府② ☆

「本日早朝、都内のJR八王子駅北口ロータリーにて、1人の男が大根を引き連れて走っているのが監視カメラと目撃情報で確認されました。」


「そ、その男は何者だ。」


「東京都八王子市に住む33歳の男性で、名前は八菜丈太郎、職業は会社員、一人暮らしのようです。駅で大根と別れたあとは駅内の通路を使って京王線に乗り、新宿にある会社に出勤したことまで確認が取れております。」



「よし、皆さん、まずはその男を査問するのが重要だと思いますが、いかがでしょうか。」


反対はいないようだ。


「私は彼を騒乱罪で捕らえた上で取り調べにかけ自白を促し、自宅捜査までするべきだと思う。」


防衛省大臣の岩手が発言した。


「私は反対です。小説の場合、大抵彼は巻き込まれた一般人であり、黒幕が別にいることが多いからです。第一、私が犯人なら、彼のように大根を連れて駅に行くような目立つことはしないでしょう。」


プロSF作家の西野が発言した。


「若造が無責任なことを言うな!現に交通に影響が出ている今、我々は一刻も早い事態の解決が望まれるのだ!」


「ですから、彼が犯人では無いという可能性が高いんです!冤罪を被せてもいいんですか!?」


「創作と現実を一緒にするな!多少の犠牲は何事にも必要なのだ!大体、小説家というのは現実の知らない夢想家どもが多すぎて困る!」


ヒートアップする二者。しょうがない、私が止めに入ろう。


「ハイハイ、そこまで。皆さん、岩手大臣の方法を採用しましょう。西野君、君の言いたいことも分かるが、我々としては多少乱暴な手段を取ってでも対応を急ぎたいのだよ。もちろん冤罪だと分かったら謝罪は行うさ。それから岩手大臣は相手の職業を貶すような発言を謝罪してください。」


「む、だが、「謝罪してください!」…すまなかった。これで許してくれ。ふんっ!」



「ではこれで第一回目の会議を終了します。皆様におかれましては事態の素早い対応のため、今日は家には帰らず各官庁の休憩室でお休みして頂きたく存じます。」


根木君の締めで解散となった。

全く、岩手大臣には困るな。

昔は私に何かと突っかかって来たが、最近は誰彼構わなくなってきたように感じる。

大臣まで上り詰めた彼を、一体何が駆り立てるのだろうか。

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大根コンクエスト やまもン @niayamamonn

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