第81話 辞退 〜4〜

 俺は、その問いに対し無言で頷いた。


 「…そう…ですか。影井先輩が…そうしたいなら…私は応援します」


 …応援する?そう言ったのか?

 それじゃあ、東條は俺が負けて生徒会を辞めることになってもいいと言うのか?


 「…それって矛盾してるんじゃないのか…?さっき言ってたことと…」

 「いえ…何も。私は影井先輩に辞めてほしくないという訳ではないのです…。今でも…どうしてこのような選挙が行われて…そして先輩が負けようとしてるのか…その理由はわかりません…。ですが…先輩がそうしたいのであれば…それに私も協力したいです」


 予想外の展開になってしまった…。だが…本当にいいのか?意を決して生徒会へと入った東條が辞めてしまうなんて…。

 佐野のことと天秤にかけて…俺はそちらを先行してもいいものなのか、疑問に感じてしまっている…。


 「…本当にいいの?」

 「…はい?何が…でしょうか」

 「俺なんかの為に…生徒会を辞めようとしてまで手伝ってくれるのか?」

 「はい…。影井先輩のしたいことには…必ず意味があると思っていますので…」

 「でも、東條さんは自分の意思で生徒会に入ったわけで…」

 「…私は、もう…生徒会とかどうでもいいのです…。ただ、影井先輩のお役に立てれば…それだけで…いいのです」


 どうしてそこまで思ってくれるのだろうか…。

 そう思いつつも、俺は思い付いていたことを東條に話した。


 「それなら…手伝って欲しいことがある」


〜〜〜


 そして、俺の案を東條に話してその日はそのまま散会した。東條はその後部活へと向かったらしい。


 俺は何をすることもなく帰宅した。他の生徒会メンバーと会うこともなかった。

 会長とも、何も話すこともなくその日は終わってしまった。会長は今何を思っているのか…それは少し気になっていた。


 そして、俺はその後も考えていた。本当に東條に手助けなんてしてもらっていいのかと。

 東條のことを思って俺が勝つという選択肢を選んだって構わないはずだ。

 …しかし、今更変えられない。佐野の熱意、それは…俺なんかが対峙していいものではないからな。

 

 仮に、東條が辞めた場合に枠が一つ開くかもしれない。人数にも拘りなんかないのかもしれないので、俺は残ることだって可能かもしれない。ただ、これは俺と佐野の戦いで、どちらかに勝敗が決まらない限り意味はないのだろう。

 いっそ、話合って佐野を引き入れられないか相談する手もある。…しかし、それも佐野が納得しないであろう。


 …何れにせよ、俺はまだ諦めていない。東條が辞めるということをなんとかして撤回させたい。まだ、何か手がないかも考えておくか…。

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人嫌いの俺はお人好しの生徒会長から面倒を見られて困っている 火水義人 @kasui

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