幕間. Barnard


 かつてないほど、清々しい目覚めだった。


「……んぁ゛?」


 水底から水面へ、ゆっくりと浮かび上がるような感覚。穏やかな陽光に、うっすらと目を開く。


 爽やかな風、程よい暖かさの空気。眠気が身体からスッと抜けていく。目元をこすりながら、上体を起こした。倦怠感にも似たある種の心地良さ、自然と盛大な欠伸が出てくる。もう一度地べたに寝転がり、思い切り体を伸ばした。全身の筋肉をほぐす。まるで獣のように。


『獣』――いや、むしろ『怪獣』と呼ぶべきか。


 全身を覆う褐色の鱗、ぎょろりとした黄色の瞳、筋骨隆々の体つきに、赤子を丸呑みにできそうなほど大きな顎。口腔にはナイフのように鋭い歯がずらりと並ぶ。歯の隙間から飛び出た細い舌が、ちろちろと空気を舐めた。顔つきも、明らかに人間のそれではない。逆三角形の、どこか爬虫類を連想させる輪郭――蜥蜴あるいは『竜』。臀部から伸びる太く長い尻尾は、上機嫌にゆらゆらと揺れている。


 まさしく、『人外』と呼ぶに相応しい容姿だ。ただ、地面にあぐらをかいて座る姿勢と、寝ぼけ眼のままボリボリと頭部の金色の毛髪を掻く仕草だけが、妙な人間臭さを漂わせている。


「……ん? どこだココ」


 と、竜人ドラゴニア『バーナード』は、そこでふと我に返り、少しばかり慌ててきょろきょろと周囲を見回した。


 日当たりの良い、のどかな木立。そして生い茂る木々の間に、ひっそりと隠れるようにして佇む石造りの廃墟。


 しばし、呆気に取られて目を瞬かせる。が、少しして、傍らに燃え尽きた焚き火の跡を認め、昨夜の記憶が蘇った。


 ゲーム内での追い剥ぎ。他プレイヤーとの戦闘。要塞村ウルヴァーン近郊に現れた謎の霧。そして――そして、何があったのか。まるで靄がかかったように、はっきりとは思い出せない。


 だが、霧の中で何かが起きた。


 故に自分は今、『ここ』にいる。


「そうだ、そうだ、なんか変なことになったんだ! 思い出したぜ」


 バシンと膝を打ってバーナード。その後、自分の馬をついうっかり殴り殺し、その肉を焼き、腹いっぱいになるまで食べて、満腹感のあまり眠り込んでしまったのだ。


『仲間』たちと共に――


「久々にぐっすり寝ちまったぜェ……おい、コウ! イリス!」


 尻尾の力を利用して、バーナードはぴょこんと立ち上がる。「いくらなんでも寝すぎだぜ、起こしてくれりゃいいのによ――」そう言おうとしたところで、口をつぐんだ。



『仲間』たちの姿は、どこにもなかった。



 チチチ……と鳥の鳴き声だけが、木立に響く。



「……あ゛?」


 怪訝な表情。その爬虫類じみた顔を歪めるバーナード。先ほどと一転、尻尾は落ち着きなく揺れている。そこに残されていたのは、焼け焦げたような焚き火の跡、食べきれなかった馬の肉、そして手持ちの粗雑な武具だけ――


 バーナードは、独りだった。


「…………」


 ――置いて行かれた。


 そのことに理解が及んだとき。


 木立に、形容し難い怪物の咆哮が響いた。



          †††



 それからバーナードが落ち着くまで、しばしの時間を要した。


「クソッ、アイツらふざけやがってッッ!」


 馬肉の残りを貪り食いながら、バーナードは『元仲間』の足取りを追う。


 ひとまず彼にとって、野営地から南へまっすぐ伸びる馬の蹄の跡を見つけるのは、さほど難しいことではなかった。


 不自然なまでに深い眠り――あれがコウの契約精霊、"夢幻の精"『ダルラン』による昏睡のまじないだったと考えれば、納得がいく。納得はいくが、油断してまんまと術中に嵌った自分には腹が立つ。そして腹が立つのはどうしようもなかった。


「クソッ、クソッ、アイツら絶対に後悔させてやる……!」


 ぐつぐつと胸の奥で煮えたぎる感情を吐き出そうとするかのように、走りながらバーナードは唸る。身体のコンディション、そして残されていた馬肉の傷み具合からして、コウたちが出立してからまだそんなに時間は経っていないはずだ。


 馬の足は速いが、竜人の身体能力ならば追いつける、とバーナードは踏んだ。


 幸い、ぐっすり眠ったお陰で、体調万全だ。絶対に逃がさない、と固く決意する。


 ――なぜ、コウたちはバーナードと袂を分かったのか。


 実は、理由についてはそれほど興味がない。というより、薄々察しがつく。


 おそらく二人とも『平和な生き方』を選んだのだろう――ゲーム内ではそれなりに気の合う奴らだと思っていたが、所詮は上辺だけの関係だった、ということだ。


 それに関して、バーナードは何とも思わない。コウたちとは【DEMONDAL】で出会い、なんだかんだで二年ほどの付き合いではあったが、互いのリアルは知らないし、知ろうとも思わなかった。それにゲーム内でも、『こいつらは俺と違う』という感覚は、いつも何かしらついて回っていた。ゲームのアバターが剥ぎ取られてみれば、姿を現したのはただの人だった――それだけの話。


 裏切られたところで、被害者意識はない。


 ゲームだけの関係だったと、嘆くつもりもない。


 ただ、一つだけ許せないことがある。



 それは、何も言わずに自分を置いていったこと。



 見捨てられ、『置いてけぼりにされた自分』が――


 その、『惨めさ』が、バーナードには許せない。耐えられない。


 自尊心が酷く傷つけられていた。なんという屈辱。なぜ自分がこんな惨めな思いをしなければならないのか。そしてなぜ自分はこれを『惨めだ』と認識しなければならないのか。全てが腹立たしい。竜人の力そのままに、この場で火の息を吐いて暴れ回りたいほどに怒り狂っていた。


 この思いを拭い去るには――元凶を取り除くしかない。


『こんな思いをすることを強いた』あの二人だけは、許さない。


 絶対に報いを受けさせてやる、と。


 復讐心だけを胸に、今はただひた走る。


「馬で逃げようってもそうはいかねェ! 休むよなァ!? どっかでよォ!」


『独り言』というにはデカすぎる怒鳴り声。バーナードは道なき道を突き進む。地面に転がる尖った石ころも、茂みの枝も、棘の生えた蔦の類も、みな彼の鱗を傷つけるには至らない。


 竜人ドラゴニアの特徴は圧倒的な筋力パワー、そして持久力スタミナだ。身体が重いので豹人パンサニアほどの敏捷性はないが、それでも一定の速度で長時間走り続けられる。一日あたりの移動可能距離なら竜人も馬も大差ないのだ。


 コウたちはおそらく、全力で距離を取ろうとしているが、当然、どこかで馬の体力に限界が来る。あるいは人里――そんなものがればの話だが――に辿り着けば、そこに立ち寄ろうとするはずだ。バーナードが体力の許す限り、ひたすらに走り続ければ、確実に距離を詰められる。


 そして追跡し始めてから気づいたが、バーナードは新たに鋭い嗅覚も獲得していた。それは本来、ゲームでも設定はあったが、プレイヤーへのフィードバックまでは再現されていなかった竜人固有の性質の一つだ。


 それが現実化したことで、今やバーナードは、馬の蹄の跡とともにその場に残された濃い獣臭をも嗅ぎ取ることができていた。昨日、自分の乗騎を『臭い』と感じたのは、この嗅覚のせいもあったらしい。


 これで、万が一にも逃がすことはない、と。


 バーナードはそう思っていた。


 ――木立を抜け、川に行き当たり、足跡が水の中に消えていくのを見るまでは。


「なっ……」


 さらさらと流れる小川を前に、バーナードは呆然と立ち尽くす。


 足跡が川の中に吸い込まれ、綺麗に洗い流されていた。水のせいで臭いを辿ることもできない。慌てて上陸地点を探そうとしたが、少なくとも歩いて回れる範囲には見受けられなかった。どころか、川は下流で幾つかに分かれていた。これら全てを調べて回るのは今日中には難しい。そして、そうするうちにも、コウたちは遠ざかっていく――


 コウたちの方が、一枚上手だったというわけだ。そう思い至り、再び頭に血が上る。


「……ガアアアアアアァァッ、クッソがあああああァァァァッッ!」


 バーナードは吠えた。怒りが抑えられず、そのまま口から炎を吐く。


 竜人最大の特徴、『炎の吐息ブレス』。"飛竜ワイバーン"よろしく、特殊な歯を打ち合わせて火花を出し、体内で生成される可燃性のゲルに引火させて吐き出す物理的な火炎放射だ。少なくとも、今のバーナードの感情を表すのに、これ以上相応しいものはなかった。


「ヴァアアアアアアアァァァ――――ッッ!」


 炎の舌が水面を撫でる。川岸の倒木が黒煙を吹いて燃え上がる。鱗に覆われた異形が火を撒き散らしながら暴れ回る様は、まさに心胆を寒からしめる光景だ。


 だがそんな狂乱の時も長くは続かない。限界まで火を吐き、文字通り燃料切れとなったバーナードは、虚脱状態で座り込む。


「……クソが」


 右手の古びた戦槌メイスでガリガリと地面を削りながら、毒づく。


「……クソッ、腹が減ったッ!!」


 やおら立ち上がるバーナード。火を吐いたせいか、無性に空腹を覚えていた。これはゲーム内にはなかった感覚だ、などと思いつつ水面を睨む。そのまま飲用に耐えそうな透き通った水の中には、魚が元気に泳いでいる。


「……食うか。カハハッ、焼き魚なんてしばらく食ってねえなァ!!」


 獰猛に笑い、傍らの岩を拾い上げる。ボウリング玉ほどの大きさのそれを、振りかぶって思い切り川面に叩きつけた。


 まさに、豪速球。ド派手な水しぶきが上がり、衝撃で気絶した魚がぷかぷかと浮かび上がる。怒りも忘れ、バーナードは子供のように、喜々として獲物を手掴みした。


「よっし、串は……えから枝を刺して、っと。鱗も食いたくねーよなぁ、内臓も引っ張り出すか」


 指先の鋭い爪を使い、適当に下拵えする。幸い、というべきか火には困らなかった。燃え盛る倒木の近くに何本も枝を刺し、適当に焼き上げていく。幾つかは火に近すぎて黒焦げになってしまったが、バーナードは気にしない。


 鋭くなった嗅覚で香ばしい匂いを楽しみ、大顎を開けてかぶりついた。


「…………。まァこんなもんか」


 もごもごと小骨ごと魚肉を味わい、少し白けた様子でバーナード。


 美味いことには美味いのだが、いかんせん味が薄かった。コウがいれば塩があったのだが、と思ったところでまた腹を立てる。数分前までの機嫌の良さはどこへやら、尻尾をゆらゆらと振りながら、再び不機嫌顔になったバーナードは無言で魚を食べ始める。怒るのにも、エネルギーは必要なのだった。


「……あー食った食った。でもやっぱ肉の方がいいよなァ。クソッ、鳥ならそこら中にいるのに、俺ァ飛び道具は苦手なんだよなァ~」


 魚の串焼きを全て平らげ、それでも不満そうに、バーナードは木々の間を飛び回る鳥に視線をやった。野鳥たちは敏感に、不穏な気配を察したのか、すぐにその場から遠ざかっていく。


「チッ、まあいい、行くか」


 栄養は補給できた。無論のこと、追跡を諦めたわけではない。仕方がないので、己の勘に賭けることにした。


「……下流にすっか」


 仮に自分がコウたちなら、どうするかという話だ。平和な生き方を模索しようとするなら、人里に行こうとするだろう。バーナードはこの時点で、自分がゲームに酷似した世界にいると信じて疑わなかった。故に、全ての考え方にも、ゲーム内及び人間社会の常識を適用する。


 清涼な川があるなら、人が集まるはず。


 木々の生い茂る、森のようなこの地形を鑑みたとき、集落が発生しやすいのはどちらだろうか? ――考えるまでもない、確率的には下流だ。


 バーナードはもはや迷うことなく、胃に負担にならない程度の速度で走っていく。


 そして川が枝分かれするごとに、自分の勘と、嗅覚――第六感に近いもの――が導く方向へとさらに進んだ。



 ――それから、どれだけ走ったことだろう。



 いつしか辺りは薄暗くなりつつあった。しかし行けども行けども、馬の足跡は見当たらない。どころか、周囲の植生は濃くなり、人里から離れつつあるような気がする。


「コイツは失敗したかァ……?」


 これ以上ないほど、静かに不機嫌なバーナードは、思わず舌打ちした。引き返すべきか考えるが、それではこれまでの道程が全て無駄だったと認めることになる。


 気に入らない。全てが気に入らない。落ち着きなく、ベルトにぶら下げたメイスと棍棒を弄ぶ。


 だが苛立ちが頂点に達しかけたところで、やおら立ち止まった。


 ――匂い。どこか、人工的な。


 ふと見上げれば、夕暮れの空にたなびく細い煙。火事のそれではない。白い、おそらくは煮炊きをするための――


「村だッッ!」


 頭部の金髪を逆立たせ、バーナードは走り出す。その足取りは軽い。竜人らしからぬ俊敏さで、風のように駆ける。


 やがて、視界が開けた。


 森のほとり、ひっそりと隠れるように、小さな集落。


「……ヒ、ヒ、ヒ……ッ!」


 茂みに伏せって身を隠したバーナードの口から、抑えきれず、引きつったような笑い声が漏れる。胸がときめくのを感じた。まるで――ゲーム内で初めて、他のプレイヤーを襲おうとしたときのように。


 いや、


 ぎょろりとした、爛々と輝く黄色い瞳が、村の外れで薪割りに勤しむ村人を捉える。


 中年の、貧相な格好の男だ。色の褪せた服、吹けば飛びそうな痩身、見るからに頼りないが――『生きた』人間。


 ゲーム内のNPCとは違う。疲れたような表情も、その額に浮かんだ汗も、時折痛そうに斧を持った手をプラプラとさせる動作も――その全てが、愛おしくすら感じる。


 あまりの興奮に、バーナードは視界がきらきらときらめくのを感じた。


 その瞳孔が、ギュウッと極限まで切れ長に、縦に収縮する。


「……ハハッ」


 小さな村だ。あまりにも。――


 もはや、隠れる必要もない。


「――ッ?! なっ、なっ!? 化け物Monsterッ!!」


 薪割りをしていた村人は、仰天して目を剥いた。突然、近くの茂みから、異形の影が飛び出してきたからだ。


 バーナードは嬉しかった。村人の叫びが英語だったからだ。


 ――言葉が通じる。


ごきげGoodんようゥッafternoon!!」


 だみ声で挨拶しながら、蛇に睨まれた蛙のように硬直して動けない村人へ駆け寄る。感動的な出会いだった。バーナードにとっては。


 眼前まで怪物が迫ったところで、我に返った村人が仰け反るが、バーナードは構わずそのまま首根っこをひっつかんで引き寄せる。


「Nice to meet you!!!」


 叫びながら、唾が飛びそうなほどの至近距離でその顔を覗き込む。


 しかし返事はなかった。


 思わず力が入りすぎて、首の骨を折り砕いてしまったからだ。


 ぶくぶくと口の端から血の泡を吹く村人の男は、恐怖の表情を顔に貼り付けたまま、今まさに息絶えようとしていた。徐々に生命の輝きを失いつつある両眼はカッと見開かれ、声なき悲鳴とともにバーナードを見つめている。


「なんてこった……なんてリアルなんだ!!」


 手に伝わる細かな死の痙攣、肉の温かみ、ねっとりとした血の匂い、微細な表情筋の動きも、救いを求めるように彷徨う視線も、全てが、夢にまで描いた現実リアル


 思わず恍惚としていたが、からんっという乾いた音に、バーナードは引き戻された。


「……父ちゃん?」


 見れば民家の陰から、少年が一人、こちらを覗き見ている。十代前半だろうか。そばかすの多いその顔は、どことなく先ほどの村人の面影がある。その手からこぼれ落ちたらしい数本の薪が、地面に転がっていた。


「よォ」


 バーナードは朗らかに声をかける。その手に、痙攣する村人の死体を握ったまま。


「……あ……あっ、ああッ!」


 サッと顔面から血の気を引かせた少年が、ふらふらと覚束ない足取りで逃げようとするが、もちろんバーナードが逃がすはずもなく。


 死体を放り投げ、跳躍。ドンッと民家の壁に手をつき、自分の体と壁で挟み込むようにして少年の退路を塞ぐ。


「ヒッ、ギッ、いいいいッ……!」


 言葉にならない悲鳴を上げた少年は、そのまま腰を抜かしズルズルと尻もちをついてしまった。見上げるほど大柄な、筋骨隆々な爬虫類の化け物に、生臭い息がかかるほどの距離まで迫られれば誰だってそうなる。


 一方で当のバーナードは、兎のように無力な獲物の姿に、恍惚としていた。あまりにも脆い存在だ。


「よォ、坊主」


 自分では猫撫で声のつもりの、気色の悪い優しいだみ声で、バーナードは口を開く。ついでに、かがみ込んで視線の高さを合わせる気遣いを見せたが、それは少年の更なる恐怖を煽っただけだった。


「……ヒッ、ヒイィ」

「聞きたいことがあるんだ。俺の言ってることはわかるか?」


 はっきりとしたバーナードの問いに、視線を逸らすこともできない少年は、半泣きでコクコクと頷いた。


「そうかそうか。そいつァ良かった。……俺が聞きてェのは、旅人についてだ。最近、この村に、旅人は来なかったか?」


 バーナードが聞き出そうとしていたのは、他でもない、コウとイリスについて。


「黒髪の童顔の男とよォ、頭にネコみてェな耳を生やした若い女だ。……どうだ?」


 少年はブルンブルンと勢い良く首を横に振った。正直にそう答えれば、わかってもらえば、自分が助かると思っているかのように。


「そっか、そっか……来てないか……」


 相槌を打つバーナード。それが本当なら、残念ではあった。


 だがまあ、ひとまずそんなことは脇に置いておく。


「じゃあ教えてくれ。この、素晴らしい村の名前は、何てェんだ?」

「……ヒッ……んぐっ、らっ、らッ」

「んン?」

「……ら、ラネザ……」

「おうおう、ありがとうよ、教えてくれてよォ」


 口の端を釣り上げたバーナードは――笑顔のつもりだ――ゆっくりと立ち上がった。


「親切に教えてくれたお礼によォ。坊主、オメーは見逃してやるよ」

「……? へっ、えっ」


 突然の言葉に目を白黒させる少年だったが、少しして言葉の意味を理解したのか、若干の安堵の色を見せる。


 しかしその瞬間、バーナードの気配が豹変した。


「……。ヴァアアアッやっぱり我慢できねェ!」


 ゴウンッと唸る拳が、少年の顔に叩きつけられる。


 民家の壁と、石の塊のような拳の間に勢い良く挟み込まれた頭が、まるで風船のように弾け飛んだ。


 ビチャビシャァッと飛び散る脳髄、血液、そしてピンク色の肉塊。


「フウウウゥ! すっげ、やっぱりすげェェ!」


 灰色の民家の壁に咲いた鮮やかな赤い花に、血濡れた拳を掲げるバーナードは興奮を隠せない。その瞳はきらきらと輝き、呼吸が荒く、激しくなる。


「アッ、ガアアアッ……オアアアアアッ!!!」


 その場で己の身体を抱きしめるようにして、怪物は軽く数度、痙攣した。


「……ハァッ……ハァッ……クヒヒッ、やべえよ、出ちまった。マジで、すッげェよ、ゲームじゃこんなの味わえねェ」


 己の股間に視線を落としながらバーナード。ボロ布のようなズボンを盛り上げる何かがそこにあった。そしてそれは、一向に萎える気配を見せない。


「……ハハッ、ガハハハハァッ! 楽しもうぜェ、みんなァ!!」


 ぐしゃりと倒れる少年の躰にはもはや見向きもせず、ベルトの棍棒とメイスを引き抜いて、バーナードは村の中へと走り出した。


 ドタンッドタンッと異様な足音に、そしておぞましい笑い声に、村人たちが何事かと民家から顔を出しては、悲鳴を上げて中に引っ込んでいく。


「ただいまァ! なぁんてなッ!」


 民家の一つのドアを真正面から蹴破り、バーナードは侵入を果たした。中にいた若い女と男が揃って悲鳴を上げる。


 跳躍。メイスを振り上げ、振り下ろす。男が飛び散る。撒き散らす。血飛沫を浴びた女が、手で顔を覆って絶叫した。盛大な失禁、床を濡らしながら尻もちをつこうとしたところで、それより速く怪物の手が首を掴む。そのまま持ち上げ――ああ、不幸なことに怪物の方が遥かに上背が高い――まるで肉屋の商品のように、ぶら下げる。


 宙吊りにされ、もがき苦しみ、足をばたつかせる哀れな姿を、バーナードは高らかに笑いながら楽しげに観察した。


 そして穴という穴から体液を垂れ流して絶命するさまを楽しんだところで、肉塊を放り投げ、次なる家へ。



 まさしく、バーナードにとっては薔薇色の時間だった。


 それは酷く生臭く、どろどろとしていたが。



「イヤアアアァ!」

「やめてええええ」

「来るなァ化け物ォッッ!」

「助けてえええッッ!」


 老若男女問わず、悲痛な叫び声が木霊する。村人たちは、あまりの異常事態に、そのほとんどが家に引きこもることを選択していた。まるでおとぎ話に伝わる化け物のように、目をつぶって息を潜めていれば、いつかは過ぎ去ると信じているかのようだった。


 だが、違う。


 これは、化け物であり、そして人だ。


 残虐性とともに、高度な知性と、理不尽な目的意識を兼ね揃えた存在だった――


 バーナードは全力で遊んだ。ぬいぐるみを抱きかかえた幼い娘が泣き叫ぶ前で、両親を棍棒で散々にいたぶって肉塊に変え、最後は娘自身も股から真っ二つに引き裂いて、鮮血のシャワーを浴びた。痩せ細った老人を砲丸投げの要領で壁に投げて叩き殺し、村から逃げようとしていた恋人同士と思しき男女を、お互いの顔と顔とを熱烈にキスさせて捻り潰し、箱の中に隠れた子供を箱ごと井戸に落として沈んでいく様子を楽しんだ。


 中には、抵抗する者もいた。それはなんと幼い男の子だった。おんぼろな納屋の前で小さな包丁を手に、真っ向から歯向かってきたのだ。


 気の毒なほどに震え今にも倒れそうではあったが、「これ以上近づくな、化け物!」と啖呵を切る姿はあっぱれと言わざるを得なかった。面白いことに、ちらちらと背後の納屋を気にしており、そこに『何か』を隠していることだけは一目瞭然だった。


 なので、バーナードは納屋に炎の吐息ブレスを吐きかけた。


 枯れ木のように燃え上がる納屋に、子供は包丁を取り落として悲鳴を上げた。中からも何者かのか細い、そして幼い悲鳴が聞こえてきていた。「アリスーッ!」と火の中に飛び込もうとする子供を、引き止めたバーナードは、それ以上危ないことをしないようにと、その両手両足を丁寧に砕いた。


 それでも、焼け落ちていく納屋に近づこうとして芋虫のように這いずりながら、その子があんまりにも泣いて感謝するものだから、バーナードは面白すぎて笑い転げてしまった。終いには笑いすぎて腹が痛くなってきたので、皮肉にも、その子供がバーナードに一番の被害をもたらしたと言えるかも知れない。


 そんなこんなで、全力で遊び終わる頃には、すっかり日が暮れようとしていた。


 しかし村は明るい。何軒もの家が燃え盛っているからだ。


「やっぱりバーベキューに限るなァ」


 拾い物のハムを民家の焼ける炎で炙りながら、満足げに頷くバーナード。炎に照らされるラネザ村の光景は、凄惨の一言に尽きる。少なくとも村の大部分が壊滅し、血の色で彩られ、焼け焦げていた。


「んでもまだ全部じゃねェんだよなァ、村外れにも何かあるっぽいし、ここはもっと楽しまねェと。なんてったって最初の村だからなァ!!」


 グハハハッと大声で笑うバーナードだったが、しかし次の瞬間、ハムを放り捨てて飛び退った。



 ガツンッ! と衝撃。



 バーナードの胴体があった空間を巨大な槍が抉り、地面に突き立った。


「何だァ!?」


 素っ頓狂な声を上げるバーナードは、空を振り仰ぐ。その槍は、なんと、頭上から降ってきたのだ。


 果たして、怪物の黄色い両眼は、真ん丸に見開かれる。



 巨大な、鳥。



 真っ黒な、羽を広げれば十メートルはあろうかという怪鳥が、ばさばさと羽の音を響かせながら、徐々にこちらに近づいてくる。


 その脚に、ぶら下がる人影。


「ッと危ねェ!!!」


 阿呆のように見惚れていたバーナードは、再び転がるようにして地に伏せた。きらりとその人影の手元が光ったと思うと、先ほどと同じように槍が飛んできたからだ。


 尻尾を使って跳ね起きる。その間にも怪鳥は地上へと近づき、やがて脚から離れた人影が、ズンッと重い音を立て、地上に降り立った。


「おうおう、随分とウチの村を荒らしてくれてるじゃねえか」


 ――大男だ。バーナードも人間に比べるとかなりの大柄だが、この男はそれよりさらにでかい。


 巨人、という言葉を連想する。その背丈は優に二メートルを超えるだろう。


 そしてそれに見合うだけの、凄まじい覇気に満ち溢れた、がっしりとした体つきだ。逆立つような黒髪。凄惨な死体の数々を前に、微塵も揺るがない不敵な表情。筋骨隆々の体躯を重厚な鎧で防護し、それでいて動きには『重さ』を全く感じさせない。その手には使い込まれた無骨な戦槌バトルハンマーを握っている。並の人間なら両手で扱うであろう代物を、片手で軽々と。


「……何だァ、領主様のお出ましかァ?」


 目を細めて、バーナードが問いかけると、大男は意表を突かれたような顔をした。


「おい、お前、話せるのか!?」

「当ッたり前だろ。何を騒いでやがる」

「……竜人が人の言葉を解すとは、初めて聞いたが」

「……ああ。そうか、確かになァ」


 自分が怪物の姿をしていることを、そこで初めて思い出したかのように、バーナードはぼりぼりと頭を掻いた。


「俺は博識なんだ。まあそんなこたァどうでもいいだろ、領主様よォ」

「ハッハッハ、『博識』ときたか、こいつは傑作だ。墓守のジジイから『害獣駆除』と聞いていたが、これはなかなか楽しめそうじゃないか」


 くるりとその手の戦槌を回し、獰猛に笑う大男。「ギヒッ」とバーナードもまた、獣のように笑った。


「そうだなァ……俺もなんか物足りねェと思ってたんだよォ!!」


 言い終わる前に、地を蹴る。


 尻尾と両足を使った、全力の跳躍。


 十歩以上の間合いを一瞬で食い尽くす。真正面から、メイスを叩きつけた。


 岩をも砕く竜人全力の一撃は、しかし鉄の壁に阻まれた。いつの間にか、大男が左手に盾を構えていたのだ。まるで鐘を打ち鳴らすような盛大な金属音が鳴り響き、盾の表面を削ったメイスが火花を撒き散らす。


 大振りの打撃をいなされ、体勢を崩すバーナード。大男のマントがばさりと広がる。


(……やべェ!)


 本能的に、再び尻尾で地を蹴って無理やり飛び退った。バーナードの尖った鼻先を、唸りを上げてバトルハンマーが掠めていく。


 ジャッ、と砂利が擦れる音。二人の間合いが、開く。


「よく避けたな、トカゲ野郎」


 間一髪で致命の一撃を回避したバーナードに、大男は不敵に話しかけた。バーナードは何も答えなかったが、その鼻先からたらりと血が垂れる。あまりの圧に、血管がやられていた。


「テメェ……半端ねェな」


 鼻血を拭いながら、バーナードもまた笑った。鼻先からズクンズクンと疼痛を感じたが、気にしない。血に酔いしれる今は、その感覚すらも愛おしい。


「【DEMONDAL】のガチ勢にもテメェほどの怪物はいねえよ」

「『DEMONDAL』? 何の話だ? それに怪物に怪物呼ばわりされる謂れはないぞ」


 呆れたように首を傾げる大男は、フッと小さく笑った。



「俺様のことは、『デンナー』と呼べ」



 大男――"巨人"デンナーは、堂々と名乗る。



「……ククッ。ハハッ、ヴァッハッハッハッハッ!」


 目を見開いて、バーナードは笑った。轟々と燃え盛る民家の炎が、夕闇の世界に二人を明るく照らし出す。


「ならッ! 俺のことは『バーナード』と呼べッ!」

「ほう? 一丁前に人間みたいな名前じゃねえか」

「ヴァッハッハッハハッ、確かにッなァッ!!」


 右手にメイスを、左手に棍棒を握り、バーナードは再び駆ける。


 この大男――『デンナー』は、ゲーム内ですら見かけたことがないほどの、凄まじい強敵だ。


 だが何を恐れることがあろうか。こんなにも嬉しいのに。こんなにも清々しいのに。


 これを楽しまなくてどうする――


 薄闇の中に幾度となく火花が散る。


 打ち鳴らされる鐘のような金属音、怪物と傑物はここに激突する。


 目にも留まらぬ速さで振るわれる棍棒とメイスを、デンナーは危なげなく盾でいなしていく。その荒々しい気配とは裏腹に、戦いぶりは冷静で堅実そのものだ。虎視眈々とバーナードの一挙手一投足を観察し、隙が生じた瞬間、風圧だけで仰け反りそうなほど豪快な一撃を見舞う。


 その反撃カウンターの威圧感たるや、人外のバーナードをして受けようという気にはならない。自慢の筋肉と鱗の装甲も、このバトルハンマーの前では濡れた紙ほどの役にしか立たない。


 攻める。叩きつける。薙ぎ払う。避ける。


 バーナードの尻尾を活かした不規則な挙動を前にしても、デンナーはまるで山のように微塵も揺るがない。


 そして散々な酷使に耐えかねて、とうとうバーナードのメイスが真っ二つに折れた。追い剥ぎで拾った戦利品、ゲーム内でも下から数えた方が早い程度の低級品だ。むしろここまでよくもったというべきか――だが、バーナードは慌てることなく、尻尾で地面を薙ぎ払った。砕かれた家屋の小さな瓦礫が、デンナーの顔に向けて弾き飛ばされる。武器を失ったバーナードを注視していたデンナーは、流石に意表を突かれたか、初めて少しだけ視線を逸らした。


「楽しいなァ、デンナーッッ!」


 高揚のあまり、バーナードは叫ぶ。


「素敵なアンタにプレゼントだァァァァァァッッ!」


 その胸が、ぶわりと膨らむ――


「ヴァアアアアアアアアア――――ァァァッッッ!!」


 回避不能の至近距離で、炎の吐息ブレスを浴びせかける。


 咄嗟に盾を掲げたデンナーは、一瞬で炎の壁に呑み込まれ、盾ごと火達磨と化した。


「ヴァ――ハッハッッハ……はァ?」


 炎に焼かれるデンナーの悲鳴を期待していたバーナードは、しかし、次の瞬間、呆気に取られて立ち尽くした。



 ぬらり――と、炎が消えていく。



 まるで見えない手に拭い去られていくかのように。



「ふぅ……流石に今のは肝を冷やした。そうか、竜人ドラゴニアだもんな、火吹芸を忘れてたぜ」


 何食わぬ顔で、無傷のデンナーが姿を現す。その胸元に、橙色の光が輝いている。


「……火避けの加護のアミュレットかァ? マジかよ」


 それが、火の精霊の力を封じた希少な魔道具マジックアイテムの類であることを見て取り、思わず茫然と呟く。


 逆に、火炎放射を受けても動揺しなかったデンナーは、バーナードの的確な認識に呆れ顔を見せていた。


「本当に何なんだよお前、ドラゴニアの賢者か何かか?」


 賢者にしちゃ凶暴だが、と付け加えるデンナー。ハッと我に返ったバーナードは、今更のように再び距離を取る。


(やべェな……武器はねェ、ブレスも効かねえとなると……)


 正確に言えば棍棒が残っているが、全身をガチガチに固めたデンナーに対し、有効打たり得るとは思えない。


「……ククッ、クソッ盛り上がってきたぜデンナーァ! 楽しもうぜェ!!」


 ぶるぶると震えながら、逆境に酔いしれるバーナードだったが、しかしデンナーは空を見上げて首を振る。




「いいや、時間切れだ」




 ばさりと。




 複数の羽音が、風圧が、その場を呑み込む。




 バーナードもまた、天を振り仰いだ。暗くなった空の色に紛れるようにして、巨大な黒の怪鳥が数羽、遥かな高みを旋回している。


 ――と。


 夜暗より更に濃い、闇色の点がぽつぽつと。


 怪鳥の背から、『何か』が飛び降りてきた。


 それは、漆黒のローブを纏った人影。


 常識的に考えれば絶命必至の高度から、何の装備もなく降下する。ダダダダンッ、と派手な音を立てて着地。


 デンナーとバーナードを円形に取り囲むように。


 その数、八人。


 バーナードでさえ無事では済まないであろう高さから降り立ち、しかし、何ら痛痒を感じさせることもなく、無言で立つ。


 ローブを纏い、フードを目深にかぶっているため、顔を検めることはできない。ただ全員が、何かしらの武器を携えていた。あるいは、剣。あるいは短刀。あるいは戦槌。あるいは槍。


 そしてその武具には、ことごとく黒々としたおぞましい紋様が刻まれていた。


 もし、バーナードが普通の人間であったなら、全身に鳥肌が立っていたことだろう。


 あまりにも禍々しい気配に。



 ――それらは、全て、強力な呪詛が刻まれた呪いの武器だった。



「残念ながら終わりだ、バーナードとやら」


 トントンとバトルハンマーで肩を叩きながら、デンナー。


「チッ」


 舌打ちしたバーナードは、咄嗟に跳躍して不気味な包囲網を突破しようとしたが、すんでのところで思いとどまる。


 先ほどから一言も発さない、闇色のローブの戦士たちからは――恐ろしいほどに何の気配も感じられなかった。


 だが、その無音の圧を、バーナードは敏感に感じ取る。


「おっと、命拾いしたな。……気をつけろよ。こいつら全員、俺より強えぞ」


 思いとどまったバーナードに、感心したように笑うデンナー。


 流石の人外の化け物も、これには困った。手元にはロクな装備がなく、炎の吐息ブレス抜きでは勝ち目がないと思わせられるような強者が、八人も完全武装で包囲している。


 この闇色の戦士たちに火炎放射を試みるのも手だが――何となく、無駄であるような気がした。どうせこいつらも火避けの魔道具を持っているか、当然のように回避されるか、そんな未来ヴィジョンしか浮かばない。


 手負いの獣のように、ある種の闘争心と諦念を秘めたような顔で、バーナードは眼前の傑物――デンナーを睨む。


「おう、バーナード。……お前、ここで死ねよ」

「あァ?」


 何を言ってやがる、と顔をしかめるが、続く言葉に固まった。


「そんで、死んだと思って、俺のトコに来い。……お前は面白いヤツだ。ここでただ死なせるのは、ちと惜しい」


 不敵な笑みを浮かべたまま――そう、それは覇者の貫禄とでも言うべきものか。一種独特な気配を漂わせるデンナーの言葉に、さしものバーナードも、咄嗟には返事ができなかった。


「……何を企んでやがる」

「企むも何も言った通りだ。お前は面白い。ここで死なせるには惜しい。それだけだ。それとも、無為な死がお望みか?」


 デンナーの言葉を受け、周囲の戦士たちがゆらりと武器を構えた。――無音に秘められていた殺意が、牙を剥く。


「…………」

「お前に興味が湧いたんだ。流石に、好き勝手させるわけにはいかんが、それなりにもてなそうじゃねえか」

「俺ァこの村をぶち壊したんだぞ。お前は領主様なんだろ?」

「正確には領主じゃないな。だが、いずれにせよ、この村の木っ端どもよりも、お前の方が面白そうだし、珍しいのは確かだ」


 ニヤリッと、本心からの言葉としか思えないような、ある種無邪気な笑みをデンナーは浮かべた。善悪を超越した、純粋な好奇心がそこにはある。


 故に、それは化け物の心にも響いた。


「……カハハッ」


 短く、バーナードは笑う。


 元より、彼には、選択肢などないのだ。







 その日、公国から小さな村が消えた。






 だが、そのことを知る者は、あまりに少ない――





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