ラブなクラフト混欲?温泉!~同人野郎と狂気の入浴戦線編~
低迷アクション
第1話
ラブなクラフト混欲?温泉!~同人野郎と狂気の入浴戦線編~
真っ黒い足元を薄ぼんやりと明るくするのは一面の雪という雪。加えて顔面にぶつかりまくる吹雪のおかげで正気と狂気ないまぜの意識が、くたびれ切った足を加速するように
前進させていく。嵌めた手袋で握る鉄の塊、MP5SMG(短機関銃)は、動作不良防止の
ため塗ったグリースのおかげで少しは暖かいが、担いでいる装備品も含め、負担となり始めている。全身に疲労と寒さを纏わいつかせ、“軍曹”は何十度目かめの台詞を口にした。
「暖が、モロボシ〇ンじゃない暖が欲しい…!」
「それを待ってましたよ!!」とばかりに、彼の後方に並んだ数十の影、同様の状態な
兵士達が一斉に抗議の声を上げてくる。
「何が暖だよ!?この軍曹さんはよっ!?やっぱり道知らなかったんじゃないかよぉ!!」
「そうだ。この野郎!これだったら基地に留まった方が良かったじゃねぇか!この野郎!」
「何が!?向こうから“雪女の残り香が…だよ!”只の妄想だろうがっ!」
「てか、そもそも雪女についてったら、全員凍死確定じゃねぇか!こん野郎!
by遠何とか物語ぃ!!」
軍曹:「うっせいな!あのまま基地に残ってたら、全員死んでただろうがっ!?それに昨今の世の中“狂うJAPAN”現象?あれ?クールジャパンだっけ?とかなんやらであれだろうが!漫画みたいな能力者やら、ドキドキヴィジュアルな女の子が現実に溢れかえった、要は何でもありな、不確定、空想、妄想!全要素実現世界ナウな、バッカヤロウワールドだろうが!」
荒れ狂う吹雪の原野で罵詈雑言を響かせ、不毛な争いを繰り広げる軍曹達は、
変な意味で盛り上がっているが、恐らく読んでる人は訳がわからんと思うので、時間を
3時間程巻き戻す…
「中佐、所定の配置完了しました。」
白い息を吐きながら、説明する兵士の様子から外の気温の低さが窺える。
“中佐”と呼ばれた男は、暖房が効きすぎて熱くなるくらいの室内で、コーヒーを静かに
啜った。この土地の厳しさはよくわかっている。夏は灼熱、冬は極寒の土地だ。
ロクな軍事行動も出来ない。だが、外で集められた部下達は死に物狂いで仕事をするだろう。
軍で死刑もしくは終身刑の囚人兵士達だ。今回の任務を終えれば減刑を約束された
者もいる。勿論そんな事はないが…用済みの連中を有効利用するのは良い事だ。
「中佐殿、入りまっせ!」
囚人兵達を監視する部下の一人が入ってきた。彼等は通常の迷彩服ではなく、見た目を区別するため、黒を基調としたデザインで統一している。
「ご苦労…だが、その言葉遣いは何だ?仮にも上官に対する言葉遣いがなってないぞ。」
「ハッ、すんません。寒さが半端なくて!もう何もかもがどうでもよくなって!」
「何を言っている?貴様。様子が可笑しいな。パニックか?それに目元の傷はどうした?」
「ええ!そんな感じです!パニックも、パニック!!もうあかん感じでさぁ。」
ヘラヘラ笑っている男の右目の下に2本の切り傷…可笑しい?こんな部下は自分に
いたか?考える中佐に部下が言葉を続けていく。
「ところで中佐殿ぉ!皆が寒いお外、凍傷MAXで、そろそろ死人が出そうな勢いですが、
設置しているのは何かの発射台、恐らくミサイル!それも特殊な弾頭ときた。
あれは何です?」
不敵に笑うコイツは囚人兵だな。警備の制服を盗んだか?中佐は自身の座る椅子に
取り付けられたスイッチを静かに押す。間髪入れずに隣の部屋から飛び出した部下達が
あっという間に彼を取り押さえた。それでも不敵に笑う男を一瞥し、携帯端末を
操作しながら、言葉を発する。
「制服を盗むとは、なかなかやるな?リストによると、お前の名前は…“軍曹”?
階級ではなくてか?いい加減な情報だな。全く。」
「本当にそうなんすよ!酷いっすよね?俺の軍曹ってのはあだ名で、兵士じゃなくて
“同人野郎”なんすよ。同人!わかります?何故か、あだ名で軍人と思われて、こんな地獄に連れてこられた次第でさぁ。」
「“同人”は知っている。つまり我々の敵という事だな?拘束と連行は妥当だと思えるが!」
「ええ~っ?なしてそうなるんすかぁっ!?可笑しいじゃないすか?」
「昨今の現状は知っているかな?軍曹。公式には報道されていないが、世界各地で確認されている“異変”を。」
「ネットに上がっている?“実録!?魔法少女が映った!”とか、海岸に巨大生物が流れつく的なアレですか?」
「ほう、なかなか詳しいじゃないか。その通りだ。世界は少しずつ変わってきている。
とても危険な狂った方向にな。」
「囚人達の中にも、明らか通常の奴等とは違った面構えの奴やら、娘っ子達がいましたからね。察しました。同人屋としてはネタに困らない世の中到来を期待してますよ。」
「その思想が危険なのだ。もし、彼等、彼女達がこの世を闊歩…既にそうだが、
現れ始めれば、共存という段階で争いが必ず起きる。その時、連中に味方し、何もわから
ない無垢な民を扇動するのは、君達、オタクな存在、同人作家達だと我々は考えるのだよ。
現に、彼等、彼女に味方し、過激な行動に走る者も既に出てきている。」
「ハッ、考えすぎじゃないっすか?ただそうなると、ここに設置されてるのは、
もしかして…」
「核融合を極力抑えた最新鋭の特殊気化弾頭。爆発範囲は“ヒロシマゲンバク”の
およそ10倍、連中の中にはテレパス(相手の心を読める)やIQが異様に高いモノもいると聞く。それが政府高官や将軍連中の頭ん中を読んだらどうなる?開戦前からこちらの負けが確定する。だから一部のごく少数の者しか知らない戦略基地が必要なのだよ。ここはその保険の一つとなる。」
「保険というと、保健体育を想像しちまう素敵な自分ですが、なるほど!ですが核に匹敵する兵器とはこれ如何に?連中を滅ぼす気満々ですな?あんまり寝覚めの良い話じゃねぇ。更に言わせてもらえれば、ここで働いている兵士達には特赦があるとの事ですが、
権力者の常として、秘匿性の高いモノを作った者は、大抵口封じで葬る展開な感じですよね?報酬は鉛玉という事でよろしいか?」
「勘が良いな、見たところ東洋人と見受けるが、その鋭さ、殺すには惜しいとも言える。
勿論、肯定だ。そして君は最初の1人目。光栄に思うがいい。」
「こーえーのゲームはとても好きです。東洋的センスをお褒めとはありがたい。ついでに私の内ポケットに(取り押さえた警備兵がポケットを探る。)おお、すいません。それです。それ!通話ボタンが入りっぱなしですね。ハイっ!こちらも褒めて頂けると。ハイッ!」
軍曹の笑顔と同時にドアが蹴破られ、AK突撃銃で武装した囚人兵達が飛び込んできた。
全員血走った目を爛々に輝かせ、一瞬怯んだ警備兵達を銃の台尻で殴り倒していく。手際
よく数名が隣の部屋に駆け込み、怒声を響かせ、制圧していく。残る敵は中佐のみとなった
段階で、髭面のナイスミドル“ビクトール”が軍曹に銃を放り投げた。
「外は全員制圧したぞ。軍曹!こんなこったろうと思ったワイ!中佐!覚悟してもらおう。」
「フフッ、元アルファ(極東の特殊部隊)によく喋る東洋人、思い出したぞ?貴様、
同人連中を軍隊化しようと目論む活動家だったな。なるほど、ここに運ばれてくる訳だ。」
自身を無視し、会話を続ける中佐に拳を振り上げ、殴り掛かったビクトールが凄いスピードで軍曹の所へ戻ってくる。いや、戻るというより、張り飛ばされたのだ。前を見れば、将校用の上着を脱いだ中佐が筋肉隆々の体を見せつけ、不敵に笑っていた。
「フフッ!私が只の書類整理が得意な悪徳将校だと思ったか?漫画でもよくあるだろう。結構上の位なのに、かなり武闘派上官クラスなキャラが。我々も色々勉強しているのだよ。フハハハッハー!」
笑う中佐に他の囚人兵達が何故か、銃を捨て、殴りかかる。勿論、赤子の手を捻るように
軽くいなす中佐殿!軍曹が凄くツッコミたい感じでソワソワするが、先に口を開くのは
中佐の方だった。
「ハハハッ、驚いているな。軍曹!貴様達の反乱はここまでだ。さぁ、大人しく降伏する…」
遮るように響いた1発の銃声で肩を抑え、蹲る中佐。その頭に素早く駆け寄り、強力な一撃を加え、失神させた(何故か、囚人兵達全員が「中佐ぁ!」と悲鳴を上げた。)片目眼帯の少女が呆れたというようにこちらを振り返る。
「何で銃使わないの?オタク等アホか?」
“ガンタイ”と呼ばれる囚人兵側の彼女に軍曹はもっともだと言うように頷いてみせた…
「見ているくらいなら…殺せ…」
警備兵達の兵舎の奥、壁の一角に鎖で吊るされた黒髪の少女は表情硬く、こちらに言い放つ。軍曹は大いに戸惑いながらも、とりあえず拘束解除の道具を探しに走る。ガンタイと
ビクトールが中佐と警備兵達を一か所に集め、拘束している間に他の20名程の囚人兵達は
(反乱の際に負傷者が出ないのは奇跡的だった。)使える武器、食料、水の確保に準備と
探索を行っていた。
連れてこられてから吹雪の外でテント生活を強いられていた彼等としては、暖かい兵舎で一休み兼、使えるモノを探す事が一番の目標となっていた。その部屋の一室で、軍曹は彼女を見つけた。近くに置いてある鍵で、鎖の拘束を解きながら、話しかける。
まさか解いた途端に噛みつかれるという事はないだろう。
「落ち着けって、兄弟。いや、兄弟じゃないな…おねーさん。俺達もご同輩だ。この服装を見ろよ!アンタと着てるもん同じだろう?たった今、この基地を制圧した。逃げるなり、
なんなり自由にしようぜ?なぁっ…名前は?」
「……“ノナ”所属は戦車兵…」
「ノナちゃ、さんね!了解。とりあえず仲間の所へ行こう。」
赤く跡の残った腕をさすりながら、こちらを見る長髪、黒髪の少女。およそ戦車兵には
見えない。あながち中佐の言った世界の変容ってのは、間違いじゃなさそうだ。後ろに続くノナを、チラチラ盗み見しながら、考えた軍曹は部屋に着き、銃器の点検をするガンタイ達に説明と紹介を行う。その話途中で勢いよく頬を張られる軍曹。
「てめっ、軍曹!この野郎!」
「痛ったぁ…ガンタイ。なんだよ?この仕打ちは!」
「こんのっボケがぁ!あんだけ容姿もスタイルも合格点バディな子が磔プレイ中だったら、
固定状態で色々出来ただろうがぁっ!何で拘束を解く前に呼ばねぇ?」
「・・・確認するけど、ガンタイさんは女だよな?何でエロ本に出てきそうなオッサンの考えが浮かんじゃうんだよ?いや、確かに同人的にはありだけどね。今はね。そのね・・・」
「“今は”って何だよ!いつだってマジだろう。アタシ等はよぉ!」
「でけぇ声で喋んじゃねぇ。ガンタイ。ノナがすっごい訝し気にこっち見てる
だろうがぁっ!」
すっごく不毛なやり取りの二人とすっごい“ジト目”のノナの一人を、
とりあえず囲んでみる兵士達を掻き分け、ビクトールが現れた。その表情は切迫している。
「軍曹、不味いぞ。警備の一人が本隊に連絡したらしい。こっちに敵の増援が向かってる。」
「いや、すっごい!大変なのはよくわかったけど…何で俺に指示仰ぐ?素人だよ?あだ名で軍曹って呼ばれてるだけだよ?」
「これは、これは軍曹。なら装備をまとめて、移動した方がよさそうだぜ?車輌は足がつくから徒歩でな(いつの間にか隣に来たガンタイがニヤリと笑いかける。)」
「こんな寒い中を?正気か?ガンタイ。俺、さっきの説明も含めて、雪中行軍とか素人だ
からね?」
「馬鹿だな。軍曹!お前、こんだけの吹雪だぞ?ゼッテェ雪女とかいるよ。きょぬん(巨乳)の半裸か、ちっこすMAXのロリ娘がな。」
「…よし!!すぐ行こう!(即決!)全員傾注!ワレに続け!」…
話が現在に戻る。喋り疲れた所で、再びの寒さと虚しさが全員の空気を包み始めていた。
唯一元気なのは「寒いから!!仕方ないから!」を理由に、自分より背の高いノナの衣服にスッポリ全身を入り込ませ、真っ赤に恥ずかしがる彼女の頬に自身の頬ピッタシくっつけたガンタイくらいのものだ。恨めしそうにそれを見る軍曹達の視線は、勿論、完全無視だ。
思わず声をかける。
「何か楽しそうでイイっすね。ガンタイさん…」
全員の羨ましさを代表した感じで声をかける軍曹。すかさず彼女の反撃が来る。
「何だと?この野郎!?仕方ないだろう。それにこっちはか弱い乙女!寒さをしのぐためだ。異性と肌なんちゃらは駄目だろう!だが!!同性だからね!こっちは!同性だから!オールOK!何やっても、ナニ、グフフフッフへェへ…(何かモゾモゾ動くガンタイ)」
「・・・~(焦)って感じで無言の抗議含め、目を瞑って耐えるノナ)」
「オイイーッ!パートナー?が嫌がってんぞぉ!ガンタイさん、服の中で、その子に
ナニしてる?てぇか、絶対、それ目的でこっち来ただろ?お前っ!?とんだ巻き添えだぞ!
この野郎。」
「うるっせいな!同性だから(以下略)だろうが!馬鹿タレ!いいじゃん!!お前等
そんだけいるなら、全員こんな感じになればいいじゃん!汗と垢と野郎の体臭MAXの
方が!!絶対暖かいやん!!」
「ギャアアアアァ!(軍曹の悲鳴)それだけは嫌だぁ!」
「オイイッ!軍曹(ビクトールが勢いよく肩を掴む)
「ヒイイィィッ!それだけは躊躇しろ、ビクトォォール!」
「?…とにかく前方を見ろぉっ!」
前を指さすビクトールの手を見れば、吹雪積もる地面の一角に、雪がこんもりと
積もっていた。「何だあれは?」と訝しむ前にガンタイがノナの衣服の下腹部辺り?から
手を出し、軍曹を小突く。
「いいから、とっとと確認してこい。」
心読まれた?と思うが、特に否定する理由もないので、素早く携帯用スコップでその場に向かい、掘り出す。他の連中も加わって固い雪をどかすと、中から出てきたのは…
後ろから覗き込んだガンタイがニヤリと、とても醜悪な笑みを浮かべた。
「こりゃ、今日はヌックヌックのあったか尽くしだな。」
この寒さだっていうのに薄手のワンピース、それと同じくらいな色合いの、透き通るような肌をした少女が、か細い両手に箱を抱え、死んだように眠っていた…
「(今日で二度目だと軍曹は思いつつ)えーと名前は“アル”ちゃんで
(アルハザ何とかと長い名前だったので、省略した)いいかな?」
コクンと頷く少女は、ノナの衣服にINしたガンタイ(スッゲェニコニコ)にINして、
暖かそうだ。こんな場所に、こんな軽装でどうしたん?との質問は持っていた箱を指さす。
とりあえず開けてみると…
「何だこれ?お面??造形がスッゲェ、イマイチだな?えっ?これと何の関係が?」
「…とてもダイジです。(無機質な感じの表情に少しだけ赤みがさす。)」
「あっ、大事ね。そうね。そうっすか…」
「何かイソギンチャクが、顔面についてハッピィィィ」みたいな表情のプラチナお面を
とりあえず箱に戻す軍曹…無言…一同に不穏な沈黙。元気なのは半分やけくそ笑顔の
ノナと涎だらだらで何かアルをまさぐってるガンタイだけだ。
(それに対してアルは反応なしの…とても無表情)
状況は何も好転しない。ただ寒いだけだ。楽しそうな?女の子達を除く野郎共が暗い目つきを見合わせ始めた。不味い。いかん考えが俺達を支配しつつある。そろそろ誰かが危険な発言をしそうになっている気が、確かに寒い。このままではと思うが、出来れば…できれば、
それは最後の手段にしたい。そんな焦りを
チロチロ表情に出しつつある軍曹の肩を、予告なしにビクトールが掴む。
「オイイッ!軍曹ぉぉ!!!」
「ヒィィッ!まてぇっ、おま、早まんなぁっ!ビクトール。」
「前を見ぉおお!(もう言葉になってない)」
「ナニぃッ!あ、ありはまさかぁぁっ!!」
「ホットスパァァァァ!(野郎全員の咆哮!!)」
吹雪と草一本生えない、極寒の大地に仄かな明かりが!いつの間に!?は、どうでもイイ!よく見ればそれは看板!文字は英語でホットスパ(温泉)!ホットスパァァ!それは現状を打開する最高のシューッ!手段!!!が!前方に広がっていた…
「ようこそぉ!24時間営業!ホットスパ“ヨス・トラゴ”にぃっ!支払いはカードでも
キャッシュでもツケでもオールOKでぇーす!!」
もう「健康です!」って感じで豊満バストを揺らした受付のおねーちゃんが、笑顔で館内
アナウンスをしてくれる。しかし、ツケとはありがたい。こちらとら全員文無しみたいな
もんだからな。と安心する軍曹の隣でビクトールと野郎共は既に装備を解き始めているし、
ガンタイは紙面的に乏しいスタイルの子達から、早くも体豊かな受付に鞍替えを画策する
始末…(すっごい笑顔と、それに連動して、口から涎がスッゴイ出てた)
てか、もう抑えきれないって感じの声で、質問してた。
「おねーさんはツケでOKですか?(下卑た笑いを浮かべながら)」
「ハ~イ!当館は混浴も完備しておりますので、こちらでサービスです!
(笑顔で即答、ガンタイと連れ立って奥に消えてるけど、いいの?おねーさん?
意味わかってるの?)」
ビクトール達は男湯、ノナとアルは女湯の方へそれぞれ移動し始め、ガンタイはおねーさん二人(増えた?)を両手に(両方のお尻にしっかり手ぇまわしてる)混浴へ?(同性だろ?との疑問は後にして)それを眺める軍曹の前に、
受付とはまた違った感じの豊満おねーさんが笑顔で現れた。突然の登場に少し慌てる軍曹。
「お荷物お持ちします~」
「お、おねーさんよぉ。とりあえず、混浴は後でいいよ。俺ぁっ、風呂場行くからよ。」
「ハイ~っ。わかりました。ではお荷物をお預かりします。」
グイッと押し出された手がアルの持ってたお面入りの袋に伸びる。
それをやんわりと受け止め
(何だか妙に柔らかい?マシュマロみたいな感じだけど。受付のおねーさんって、
こーゆうもん?)押し戻す軍曹。正直、爆薬に銃器入りの荷物を預けるのは流石に不味い。
てゆーか…銃持ってるぞ?俺等?いいの?と、
その時点で色々と疑問点が沸き起こり始める。
「…とりあえず、風呂入るし、荷物は持ってくよ。ワリいな。」
「ハイ~っ、お気をつけて~」
変わらない笑みを讃えつつ、こちらに視線固定の彼女を背に、歩き始める軍曹。その手は
警戒を緩めないように銃を握りしめ始めていた…
「背中を流しますよ?」
「ハイッ。」
雪のように白い裸身をキュッと引き締まらせて両手を握るアル。
(お湯をかけていいのかな?何だか躊躇っちゃうな。)
ノナは苦笑をしながら、それでもゆっくりと湯をかけていく。気持ちよさそうに
目を細める彼女。しかし視線がぶつかるのは可笑しい?冷静に考えれば
向かい合っている状態で浴槽前の洗面場に座っている事に気づく。
「ふふっ、これじゃぁ、背中を流せません。後ろを向いて下さい。」
「あっ(少し照れ隠しの笑顔を浮かべる。)すいません。ハイッ。」
こちらにちょこんと背を向けると可愛く丸まったお尻がちょこっと突き出される形になる。
無防備なのか、天然というべきかよくわからないけど、自然と体を洗ってあげる流れだ。
(世間知らずのお嬢さんなのかな?)
そんな疑問を思いながらも石鹸でタオルに泡を付け、
背中を優しく擦ってやる。時々くすぐったそうに身をよじる姿がたまらない。
自然と笑みを浮かべるノナ。
中佐達に捕まってからは不幸と最悪の連続だったが、
その気持ちもやわらいでいくようだ。自分達のような存在と世界がどう向き合っていくのか、まだわからない…
片付ける問題は山積みだと思う。だが、目の前の無垢な少女を、アルのようなか弱い存在達を守ってやらねば!世界から、特定的に言えば、先程色々まさぐってきて、今度は別の女性をまさぐりに行った
(本当に同性?)
と思うくらいのガンタイとかから!
「あのう…ノナ…さん?」
遠慮がちに呟くアルの声にハッと我に返る。気づけば何だか声が近い。この柔らか
接触風な感じは何だ?アルのうなじがゼロ距離。よく見れば文字が描いてある?タトゥーって感じでもないけど…そんな疑問が一瞬よぎるが、自分がアルにのしかかるように
ピッタリくっついて抱きすくめている事実の方が重要だ。
非常に不味い。守ると思った者に手を出しかけている。これじゃぁ、ガンタイと同じじゃない?アルがくりくりお眼目で不思議そうにこちらを見ている。何か理由を考えなければ、
自身を正当化し、かつこちらの要望、欲望?を満たす台詞をさぁっ!
ノナは自分でも驚くくらいの無表情と冷静な声音で即興言い訳を、いけしゃあしゃぁと語りだす。
「あっ、いえ、私の国の習慣では、親しい娘達は片方が“人肌タオル”になってもう一方の子の体を洗ってあげるんです。この方があったかいし、気持ちいいでしょ?」
「あっ、そうですかぁ。じゃぁ、次は私がノナさんを洗ってあげればいいですね。」
「…ええっ、是非!!お願いします。」
“一つ新しい事を覚えたー”的に喜ぶアルを冷静に見つめ、心の中で喝采を上げる。
(決まったぁ!絶対この子!天然で、世間知らずだと思ったよっ!?ふふっ、可愛いなぁ…ふふふっ)
こちらの歓喜を悟られないように、素早くかつ、いつも通りの手慣れた感じを装いながら、ノナは体に泡を付け始めた…
「やっぱり妙だと思わねぇか?この温泉。」
隣の女湯はキャッキャウフフ間違いなしの声が聞こえている。壁が薄いのか、内容も
丸聞こえで、最高だ。そんな“ソフト百合ん百合ん”を普段の軍曹なら楽しみたいところだが、湯の浸かっている客達が自分達だけという事が疑問を確証に変える。
隣の女湯も同じ様子。加えてこんな人も住まねぇ僻地に都内風のスパリゾート風施設なんて、ある訳ねぇ!更に言えば銃を持って思いっきり兵装担いだ自分達を受け入れるなんて、どうかしている。中佐達は秘密基地と言っていた。秘密基地で良い汗かいたから近場の温泉行こうってか?
ねぇよ!数キロ先に温泉は絶対ねぇ!間違いねぇ!見れば、隣で湯に浸かるビクトールも固い表情で前方を見据えている。歴戦の歩兵という凄みだろうか?彼も同じ気配を察しているのかもしれない。そう思って声をかけたのだが…
「軍曹…」
「おうっ、何だ。」
「今、部下達が床を調べている(彼の後方では隊の男達がタオル1枚、温泉の床が
剥がれる箇所を探る、特殊工兵みたいな動きをしている)
上からは仕切り板が薄すぎるから俺達みたいな巨漢が乗ったら、倒れる心配がある。だが、下のボイラー室なら、そっと床板を持ち上げ、あわよくば湯舟に直接侵入も出来るかもしれない。」
「…うん?んんっ?えぇっ?それってつまり、これから女湯覗くみたいな話?えっ?
ナニ言ってんのおお!!おかしいでしょう。この状況でぇぇ!」
「声がデカいぞ!隣に悟られたらどうするんだ!馬鹿者ぉっ!」
「馬鹿はお前だよぅ!?何言ってんのさぁ!ヤバい状況って言ってんじゃん。
さっきからさぁっ!お前あれか!?デッド・オア・アライブ・ナウの時に
デッド・オア・エロスとか、殺すぞ!ヒゲ!」
「ふふん!青いな、軍曹!隣で洗いっ子している娘達の声が、嬌声がぁ!!ここまで
聞こえているのに、お前は行かないって言うのか?逝くだろうっ!カップリング的に
ノナ×アルと見た!!(ノナ責め(攻め)?アル受け?)」
「カップリング考えんな!馬鹿!何でオッサンが同人的用語をこなしてんだよ!
絶対!駄目だからねっ!?それどころじゃないからね?」
お互い仁王立ちで掴み合う中年二人に、厳つい面した男が、鼻をうごめかしながら、
駆け寄る。
「軍曹、ビクトール!床が剥がれた。長さ的に隣へ繋がっているぞぉっ!」
「よし、行くぞ!野郎共ォォッ!!(全員が敬礼と咆哮を上げる)」
「えええっ~マジで~?」
軍曹の悲鳴は誰にも響かなかった…
「しかも、俺…先頭だよ…」
筋骨たくましい20人の男達が無言でタオル一枚を腰に巻き、天井の低い床下通路を、
中腰で這い進む。進む先にボイラーがあるのか?赤い光で薄く照らされた通路内は暖かい。
いつの間にか先頭に立たされてしまった軍曹は後ろのビクトールから押されるようにして進む。この異様な光景は最早、ギャグだ。だいたい20人もの男達がどうやって女湯を覗くのか?普通、人数を少数に分けるのが、かしこいだろう?
ぼやく自身の視界に、振動するボイラータンクのようなモノと、その前でせわしなく動く
樽?黒い大きな樽のような物が映った。てっぺんから五芒星形の形に整えられた花弁?みたいなもんから、イソギンチャク顔負けの触手をブルブル震わせ、一生懸命タンクの計器盤を弄っている従業員の方?温泉専用の作業着かな?と明らか
「モンスタァァァー!!」
な感じの背中を、一瞬の翔潤した後、そっと突っついてみる。
マシュマロを押したような感覚が全身に怖気と微かな親近感を想起させた…
あれ?この感覚何処かで…考える軍曹の前で突っついた樽風従業員がこちらを煩わしいと言った感じで振り返り、
「いあ、いあ、はすとうううう?」
と抗議するような発音バッチリボイスを出した。思わず頭を下げる軍曹。
「す、すいません。ええっと、覗きとかではなくてですね。」
「いあ、よすとらご?はすとううう?」
「あ、すいません、帰ります。はい、すいません。」
そのままの体勢で後ずさる。後ろのビクトール達が不満の声を上げるので、少し屈んで、
「いあ、はすとうーう!よすとらご!?」
を繰り返し叫び、タンクの前で触手一杯の頭部をプルプルさせる樽の化け物を見せてやる。
勿論、全員がメチャクチャセッ、素早いスピードで男湯に這いずり戻ったのは
言うまでもない…
「あれぇっ~?ついてない?」
湯気がもくもく、照明過度にピッカピカな浴場で豊満なバスト丸出しで抱き
着いた受付の女性は、相手が男だと思っていたが、自身と同じ同性という事に気づく。困惑に若干の笑顔を加えた彼女に、湯気の向こうから現れた当の相手が答えた。
「あれ言わなかった?女だよ?あたし~」
ケタケタ笑う片目眼帯の少女は当然というように、女性の胸に顔を沈みこませ、そのまま
ゆっくりと床に押し倒す。暖かい浴場の床に背中とお尻をピッタリと押し付けられ、
ガンタイが全身を舐め回すように伸ばす手と足に、身体の敏感な部分が責められていく。
昂った彼女が泣き声とも喜びともつかない、低いすすり泣きのような呻きを漏らした所で、
こちらを見下ろすガンタイがニヤニヤとても嫌な笑いを浮かべている事に気づいた。
「あの~っ?どっ、どうしましたぁっ?」
「いやーっ、ハハ、失礼、失礼!もう一人とはトイレで済ましたが(言われてみれば仲間の不在に気づく女性)さっきホムンクルス弄った時もそうだけど、最近の擬態、擬人は良く
出来てるなぁと思いましてね。まるで本物の女、いやそれ以上のモン抱いた気になるわ~
(女性の胸を弄り回しながら。)」
「あ、わかりますぅっ?結構気張ってましてね!参考資料とか解剖とか実地も兼ねて
ここまで…っていや、何の話ですかぁ~?さっぱりわかりまひゃひゃひゃ、ひゃあああ
(ほとんど馬乗り状態のガンタイに色々擽られて、泣き声を上げる。)」
「ハハハッー、そこまで喋って隠す事はないよ~?大丈夫!オタク等あれでしょ?
1930年、ミスカトニック、アーカム号だっけ?南極探検の時に見つけた山脈にいた
連中と類似点が多すぎ~、で、あれなん?結論的にいうとどっち?旧支配者?ショゴス?
どっち?ねぇ?どっち~?どっちぃ~?(くすぐり加速!!)」
「ひゃああああああ、しょごす、しょごす~。」
「あはあっ!ゾル状の奴ね。OK、OK!この肌触りも納得やね。こんな僻地に温泉急場で作るのも、全然できるな。こりゃ!言葉に姿、形もよく勉強してるね~。」
“しょごす”である彼女なら、マウントポジジョンに跨るガンタイを一瞬で分解する事だってできる。絶対出来る筈だ。だが、出来ない。喋り続けながら、休みなく刺激を与え続けられる相手の澱みない手の動きに生命体として抗えない部分がある。この人、ほんとに
人間?こちらの心を読んだようにニヤニヤ笑いを最加速させた(手の動きも、勿論大加速。)
ガンタイが勝ち誇ったような声を出す。
「ハハ~ッ、イイ感じでしょぉ?なかなかこれ、マネできる人いないんだよ~?
まぁ、あれだよ!人間の真似しすぎもあんまりやり過ぎると、疑似感度高すぎで良くないね!じゃぁさ!じゃあさ?次は目的を教えてよ?どうせアルが持ってたヨス・トラゴンの
お面が目当てなんだろうけどさ。その辺を詳しくね?」
「よく知ってます…いや、なんのこ!…わひゃひゃひゃひゃあああ」
「ハイハ~イ、教えてね~?」
「ハイ、教えますから!教えますからぁぁぁ!!」
大浴場にしょごす?=女性の号き声が響き渡った…
「ウギャアアア、脱衣場におねーさんがぁっ!(ビクトールの悲鳴)」
「さっきまで、それを覗こうとした訳だろうがっ!何ビビッてん、ギャァアアア!
おねーさん溶けたぁぁ!!」
軍曹が突っ込むと同時に、全員が逃げ込んだ脱衣場に、いつの間にか現れた元気溌剌
おねーさんが一瞬にして消滅し、その中から?ネバネバピンクのゲル状モンスターが現れ、
こちらに向かってくる。
「てけりり、てけりり、よす・とらご!!」
「また!それかよ?なんて言ってんだ?マジで。」
叫ぶ軍曹の背後から鋭い銃声が響き、前方の怪物が弾けた。振り向けばビクトールが
白煙昇るAK突撃銃を構えている。
「今だ、軍曹!総員服を着て、装備をまとめろ!」
「いや、服着てる暇ねぇよ!見ろ!怪物まだピンピンしとるやん(弾けた部分が瞬時再生している敵を指さし。)」
「いあ、はすとううーう!るるいぇ~」
「軍曹、敵はとりあえず、服を着るまで待っててくれるらしい。だから急げ!」
「何で、言葉わかんだよ?そして敵優しいな。オイッ!(突っ込んだ衝撃で股間を覆っていたタオルが下に落ちる。)」
「いあ!いあ!ねくろのみいいぃぃ!!(若干、怒った感じで。)」
「汚いもん見せるな!と怒っているぞぉ!軍曹!!」
「だから、何でわかんだよぉぉぉ!!」
怪物とビクトールへ交互にツッコミ、首が疲れた軍曹はとりあえず、いそいそと周りの
男達と服を着ていく。怪物も黙って、触手のような腕を組み、待ってくれている様子。
もしかしたら、外で撃ちあいになるかもしれないので、ちゃんと上着をしっかり着用。銃の動作も確認、帽子も被って一斉に声を揃えて!!
「よし、準備オッケー!!すいませーん、お待たせしましたー……
よっしゃ、かかってこいやぁ!バケモンがぁっ!」
「いあ、いあはすとる!よすとらごーっ!」
男達が構えた銃を一斉に撃つ。突撃銃とSMGに詰まった7.62ミリのライフル弾やら、
9ミリパラベラム弾が脱衣場の景色を破壊し、一変させていく。だが、倒れない。怪物には全く効果がない。ビクトールが懐から素早く出した手榴弾の安全ピンを抜き、
「グレネード!」
の一声で投てきする。数秒の間をおいての大爆発が、室内の全てを吹き飛ばし、軍曹含む、
男達を脱衣場外に叩き出した。だが、そこにも…
「いあ、はすううーう!よすとらご」
の大合唱と共にボイラータンク前にいた樽状の怪物が大挙して、こちらに迫ってくる。
「くっそうっ!!不味いぞ!コイツは」
怪物達にMP5を乱射しながら、軍曹が吠えた。彼等を取り囲む包囲の輪は着実に
狭くなってきている。脱衣場にいた元おねーさんピンクゲル野郎(?)も
しっかりとその姿を見せ始めていた。AK突撃銃を同じくらいに乱射したビクトールが
隣に並んで軽口風にまくしたてる。
「どうやら、収容所での凍死より、まとな死が迫ってきたようだな?軍曹。」
「この何処がまともだよ?触手人外と野郎じゃぁ、味付け濃すぎの最悪だぜ?せめて
女の子がいてくれりゃ、状況は違ったけどよ。」
「何を言う。最後まで闘って死ねれば悔いは残らんぞ。名誉の戦死だ。後はノナ達が
無事に逃げる事を祈るばかりだが…」
名誉の戦死なんて毛ほども興味がない軍曹は、歯を鳴らしながら、必死に考える。ここは
奴等の巣。逃げ場はないし。銃も爆弾も効果がねぇ。そもそも狙いは何だ?俺達食っても
上手くはねぇぞ?
考える彼の背負った袋が、味方にぶつかり、中身を盛大にぶちまける。床に散らばった弾薬に紛れて、アルから預かったお面が目につく。思わず手に取る軍曹。
同時に怪物達の動きが止まった。少しお面をふらつかせると、ゾル状の体をブルブル震わせ、樽のような体を揺らす反応がある。
「まさか…これか?」
「そう!それが連中の目当て、ヨス・トラゴンの仮面!」
軍曹の呟きに呼応したのは、怪物達ではなく、壁をぶち破り、大型戦車に乗った、
ノナとアル達だった…
話は10分ほど前に戻る。泡タップリンになって色々堪能したノナだったが、薄い壁を
通して男湯の会話は勿論!ま・る・聞・こ・えであった。
「?騒がしいですね?」
「うっ、うん、まぁそうですね…」
過剰にお肌密着で白い肌を上気させたアルが無邪気にはしゃぐ。ノナとしては男達の
馬鹿さ加減に顔をしかめる一方だが…目を細めたアルの言葉が続く。
「本当に楽しい…こんな事なら、もっと早くここに来るべきでした。」
「…?…とても遠い場所から、来たようなお言葉ですね。」
「はいっ、旅をしてきました。何もない荒野…荒れた海、いろんな所にいました。姿を変え、形を変え、旅を続けてきました。」
「その旅は貴方が持ってる箱の中のお面が関係あるのですか?」
「ハイッ、あの面は…」
「ヨス・トラゴン、文明の起源を映すもの、そして我ら復活の道しるべとなるもの!
ですう~。」
突然遮られた声に振り返れば、受付にいた女性と同じ感じの、豊満+しなやかな身体付きの
女性が湯舟につかっていた。
「何の話だ?」
自身よりスタイル抜群の同性に少しムカつき加減なノナの返しに、とろけるような笑顔、
いや実際に溶けてる?的に答えた女性はあっという間に全身が溶け、湯舟全体に交じっていくのを見て、異性というより化け物と素早く認識する。
「だからそれを渡してくれると助かるぅーで、でっでっですね~!」
途中から呂律が回らなくなったゾル状の怪物を背に、アルを脱衣場まで連れ出す。
正直、異様と言っていい状況だが、自分よりだいぶ冷静な彼女に安心と同時に驚く。
「もしかして知り合いですか?あの人達?」
「知り合いではありませんが、関係者です。」
「一応確認しますが、あの人達はあくまで関係者であって、友達ではないですね?
(脱衣場と湯舟を隔てたドア一杯に広がるピンクの怪物を指さしながら。)」
「友達はノナさんが一番です(言われて瞬間的に鼻血を吹き出したノナに不思議そうな顔をする)あの?ノナさん?」
「ホント、ええコやわ…全部終わったら、ホテル行こうね!(「ノナさん?」となおも
不思議そうなアルに慌てて口調を治し)了解!なら今の内に服来て!ここを出ますよ!」
叫ぶが早く、手にした空挺突撃銃AK-74Uを乱射する。飛び出た5.54ミリの弾丸は扉を
穴だらけにしていく。そのまま下部についた擲弾発射器に装填されたグレネード弾も同時に発射。爆音と銃撃で浴室を一杯にする。素早く次弾を下部の砲塔に差し込むノナに、
着替えを終わらせたアルが隣に並ぶ。
「ノナさん!着替え終わりました。あの…ノナさんは着替えどうし…」
「着させて下さい!撃ってますから。(鼻血を加速噴射させて)」
「は、はいっ!」
いそいそ服を持ってくるアルの仕草に、ノナはとても良い笑顔で銃撃を再開した…
「以上が説明だとわかったけど、この戦車は何処から出てきたよ?」
怒鳴り散らす軍曹以下、兵士全員が戦車と一緒に雪の原野に躍り出る。同時に音を立てて、崩壊した温泉場から、わき出したピンクの怪物が執拗に追いすがる。小山程に膨れ上がったそれは、ノナが操作する戦車の砲撃をものともしない。車輌ハッチから頭を出した彼女が
攻撃の効果確認を終え、今だ蠢く敵に舌打ちしながら、吠え返す。
「中佐だよ!私等を追っかけてきて、そのまま連中の餌食になったみたい。アルと外に
飛び出してみたら、温泉場の近くでブルブル震えてたから、戦車だけ頂いてきた。」
という事は、追手が既に迫っていたという事か?そしてノナは最悪、自分達を生贄にして
脱出する気まんまんだった?色々と沸き起こる疑問はそのまま、後方に追い縋る敵へ戦車に積んであったRPG(携帯式対戦車ロケット砲)を構え、発射した。白煙を響かせ、
大きな爆発が起こるが…
「軍曹、駄目だ!効果がない。」
ロケット砲と同じくらい白い息を出したビクトールが絶望に近い声を上げた。そんな事はわかってる。だが、何とかしなければ、そうでなければ…そうでなければ、このままじゃ。
「軍曹さん、お面!」
戦車に乗ったアルが叫ぶ。そう言えば、連中の目当てはこれだったか…忘れていた自分が
情けない。引っ提げた背嚢から面を掴みだし、小さな手に渡す。
「一体どうするつもりだ?」
「ノナさん?この機械、反転できます?」
「勿論、でも…アル…」
「これがあるから、連中はついてきます。相手のギリギリまで近づいて下さい。後は私が。」
「そりゃないって話だぜ?アルちゃん?(ビクトール以下兵士全員で)」
「そうですよ。一緒にホテル行こうって約束したじゃないですか?(ノナの発言にこんな
状況にも関わらず野郎一同驚愕の「ええっ?うっそ、マジで!」と言う絶叫が響く。)」
お面を強く握るアル。その肩を掴んで抱きしめ、揺らしまくりのノナ。
「死ぬなら野郎が先でぃ!」
と寒さなんか気にせず、息まく!熱い、熱すぎる男達!!軍曹も半分流れで彼等に続こうとするが、いつの間にかノナが静かに、とても自然な動きで彼の動きを遮り、静かに戦車から
突き落とし、(ついでに戦車のキャタピラで足を甘轢きした)
これまたかなり自然の動作でアルの腋を
くすぐり、落としたお面を軍曹の手に押し付けた。
「へっ?」
痛みを通り越し、ビックリマーク間違い無しの疑問と唐突に沸き起こる恐怖に、体ガクブルの軍曹。それに負けないくらい凄すぎ「えっ、そんな顔できんの?」的スマイルを浮かべたノナが、軍曹にさりげなく砲塔の先を向け、快活に喋る。
「ええっ、まっさかぁっ!?軍曹!軍曹が持ってってくれるんですかぁ!これ~?」
「本当か?軍曹!(まっすぐ真剣な目、ビクトール以下兵士全員で)」
「軍曹さん!」
アルが心配そうにこちらを見た。
「もっちろん!違うよ?てか、無理だよ。」
と笑顔で拒否したい軍曹の耳にガチャリと砲弾の装填音が響く。くっそう…
「…よし、わかった。俺が残る。皆は先に行ってくれ!」
「…了解だ!軍曹(ビクトール以下、素晴らしく決まる敬礼で!)」…
全員が戦車に分乗し、自分の元を去っていく。敬礼の姿勢を崩さずに…アルがいつまでも
こちらを振り返ってくれるのが少し嬉しい。
「さてと…」
振り返り、轟音をなびかせた怪物に向き直る。お面をお守り代わりに抱きしめて。
「全くヒドイ日になったもんだ。」
呟き、眼前まで迫った敵にニヤリと笑ってみせる。最早、ヤケクソに近い。
怪物が巨大な光を発し、大爆発を起こしたのは、その直後の事だった…
「気化弾頭。基地にあった奴のコアと起爆装備一式を持ってきておいてよかった。敵を
完全に殲滅できるわけじゃないけど。時間稼ぎにはなるよー?」
ケタケタ、口を鳴らすように動かしたガンタイがいつの間にか現れ、
歌うように隣で説明する。今まで何処に行っていた?と行方が色々気になるが、
コイツの事だ。上手く切り抜けてきたに違いない。全く、
「何て女だよ。お前は…」
よくみりゃ色々艶々してるガンタイが答えるようにニヤリと笑う。そのまま、こちらの手からスルリとお面を抜き取り(デジャヴュ?)横をすり抜け、歩き出す。続けて立ち上がろうとする軍曹の肩を、何かが掴む。
「へっ?」
見れば、先程の樽のような怪物達が大挙して現れ、自分をお誕生日席とし、パーティのようにグルリと円を作り始めている。恐怖でビックリ、足元ガックガクになる軍曹。その状況を涼しい顔で眺め、目を細めたガンタイがゆっくり言い聞かすように補足してくれた。
「そうそう、言い忘れてた。そいつらが、さっきのピンクの創り主さん達でね。最近、
ゆうこと聞かなくて困ってたらしい。加えてこっちの世界を色々知りたがっていたから
交渉をしたんだ。向こうでブルブルな中佐達はあっという間に正気を失ったからさ。
アンタみたいな同人屋なら適任でしょ?頑張ってねぇ。」
「・・・・・・えっちょっと待って、ガンタイさん、いや、ガンタイ様ぁ、それって、生贄じゃない?ひどくない?」
「じゃあねぇ~♪」
手をヒラヒラさせて、去っていくガンタイの後ろ姿に怪物の一匹が立ちふさがるように、
重なった。どうやらコイツ等が満足するまで返してはくれないらしい。隣に座った一匹が
親し気に、触手を軍曹の頭に絡ませてくる。
不味い、美味い話をせんと、命がねぇ。くっそう、ガンタイの奴ぅぅぅっ
(怒りで拳を固めるも、怪物達が怖くて、すぐに引っ込める。)
一難去って、また一難。だが、今は考えてる場合じゃない。危機は目の前にある。
「いあ、はすとうううう!!」
「ハイッ、ええとですね。そもそも同人というのは…」
怪物達の熱気で妙に暖かくなった雪原に、
軍曹の文字通り命をかけた語りが静かに響き渡った…(終)
ラブなクラフト混欲?温泉!~同人野郎と狂気の入浴戦線編~ 低迷アクション @0516001a
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