第22話 回答②

ひかげの想いを聞くこと。それは今の私にとって何よりも大事なことで、必要なことだった。


「私は……」


ひかげはゆっくりと口を開く。


「私はいつも独りだった。今までも、これからもずっと独りでやっていくんだろうなって思ってた。」

「……………」

「友達とかそういうのに執着がなくて、仲良くなってもすぐにどうでもよくなって、そのまま遠ざけちゃうし」


ひかげの背景が見えてくる。お互いに少しずつ理解していけばいいと思っていた。しかし、もうそんなことは言っていられない。それを悟ったのか、ひかげも言葉を連ねる。


「今間でもこれからも、ずっとそうなんだろうなって思ってたよ、ひなたと出会うまでは」

「私と?」

「最初はさ、ひなたはからかいがあるくらいの感覚で接してたんだ。でも、いつの間にかそれ以上になってた。友達みたいに毎日話したりして……大切な人になってた」

「……そうなんだ」

「だから、失っちゃいそうで怖かった。いつもみたいに、ひなたのことなんてどうでもよくなっちゃうのが嫌だったから」


ひかげがそこまで私のことを想っていてくれて、自分自身と向き合っていたことが伝わってくる。


「だから夏休みも色々遊んだりして、ひなたへの想いが小さくならないようにしてきた。そしたらさ、なんか………いつの間にか好きだって気づいた」

「……唐突だね」


かすかに笑顔を浮かべた彼女に、私も笑って返す。


「初めてだったんだ、こんなこと。ひなたが初めてだった。だからどうしていいのか分からなくて、でも言葉にはしたくて、聞かれても聞かれなくても、どっちでもいいから」

「だから花火の時にね」

「気持ちが抑えられなくなって言ったけど、またそこで自覚したよ。やっぱりひなたのことが好きなんだって」

「うん」

「おかしいのは分かってるよ。女の子同士なんて普通じゃない。でも私はひなたがいい。こんなに好きって思えるのは、ひなたしかいない」

「うん」

「だから」

「……………」

「だから私は、ひなたともっと仲良くなりたい。ひなたの………1番になりたい」


初めて出会った頃の、無口で無表情だったひかげが嘘のように、今の彼女はどこか儚げで、まるで恋する乙女のようだった。


「私も」

「え?」

「私も最初、好きって言われて凄い驚いた。でもさ、全然嫌じゃなかったんだ」


そう。あの時からずっと、私はひかげの想いを拒んでなどいなかった。

ひかげの気持ちを知り、私も考えがまとまる。


「ひかげの気持ち、すごい嬉しかったよ」

「…………ひなた?」

「どういう風にしてけばいいとか分かんないけどさ」

「…………」



「手探りでもいいなら、これからもよろしく………なのかな?」

「それって……」

「うん、まあ………ひかげの気持ちには応えるよ」

「……………………あ」


難しいことなのかもしれない。でも、不思議と私たちなら大丈夫な気がしてくる。


「えっと、じゃあ、よろしくお願いします?」

「うん、これからも」


私も、いつの間にかひかげに惹かれていたんだな。




私とひかげのちょっと不思議な関係が始まる。




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いつの間にかレズ 就活大変 @ashmaroon

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