第21話 回答①
二学期が始まった。午前中に学校集会を終わらせ、午後からさっそく授業が始まる。
しかし、今はそんなことどうでもいい。ひかげは午前中クラスにいなかった。ということは、いつものあの場所にいる。学校自体来ていないという線もあるが、なぜか今日だけは来ている気がする。
授業をサボり、屋上扉の前へと向かう。階段を一つ一つゆっくりと上る。
「あっ…………」
「よっ」
彼女はそこにいた。まるで私が来るのを待っていたかのように。いつも通りの、何を考えているのかよく分からない無表情だ。でも、はじめて出会った頃とは違う。僅かな表情からでも、ひかげがどんな気持ちなのか読み取れるようになっていた。
「とりあえず、おはようかな?」
「もう午後だよ」
「だってひかげ、午前中いなかったじゃん」
「そうだったね、まあずっとここにいたんだけど」
ひかげは階段の1番上の段に座ったままだ。私は少し下の段に立っているので、ひかげを見上げているかたちだ。
「懐かしいね、ここ」
「……………そうだね」
ひかげはそう言うが、私には昨日のことのように思える。
それよりも、私はどう切り出せばいいのだろう。急に言っても大丈夫なのかな?
「ひなた」
あれこれ考えていると、ひかげの方が先に切り出してきた。
「…………なに?」
「あの日のこと、本当に聞こえなかった?」
「………………」
そんなわけない。今でも鮮明に覚えている。
「ねぇひかげ」
「うん」
既に覚悟は決まっていたじゃないか。言おうとしたじゃないか。今こそ向き合うときだ。
「ひかげは、私のこと好きなんだよね?」
「うん」
「それは友達としてじゃなくて、恋愛の好きってことなんだよね?」
「…………うん」
「そっか………」
ひかげ自身、まだよくわかっていないんだと思う。でも、その気持ちを言葉にしたくて、「好きかも」って言ったんだよね、きっと。
「普通、恋愛ってさ。男の子と女の子がするものじゃん?」
「うん」
「私はずっとそう思ってた。だからひかげに好きって言われて、どう反応していいのか分からなかったの」
「…うん」
「女の子同士で恋愛なんて有り得るのかとか、色々私なりに考えた」
「……うん」
本当に考えた。頭がパンクするくらいに。でもその前に………。
「ひかげの」
「ん?」
「ひかげの気持ちを聞かせて。今のひかげの気持ちを」
「私の?」
「うん。ひかげが私のこと、どう思っているのか。ひかげはあの時好きかもって言ってくれた。それを言って、ひかげはその気持ちにどう決着を付けたいのか」
「私の気持ち………」
私は知らなければならない、ひかげのことを。答えを出すには、私はまだひかげのことを、想いを、知らなさすぎる。
「これから私とひかげは、どうしていくのかを」
それを聞いて、私は私なりの答えを出そうと決めた。ひかげの想いに応えられるだけの、私なりの回答を。
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