第20話 決意と歯車

ひかげに告白された。好きかもと言われた。私はあの時、一体どんな顔をしていたのだろう。あまりにも唐突だったので、きっとかつてない驚き顔をしていたに違いない。


夏休みも終盤にさしかかり、いよいよ学校が再開する。

私はすることもなく、テレビをつけたままぼーっと天井を眺めつつ寝転がっている。


ひかげのあれはどういうことだったのだろう。

あれからのことはあまり覚えていない。ひかげに告白され、悩んで悩んで苦し紛れに花火の音で聞こえなかったと誤魔化したが、確実に嘘だとバレている。ひかげはそれ以上何も言わなかったが、それからというもの、神社を降りて家に帰るまで悶々としたままだった。


ひとつずつ整理していこう。

まず1つ目、なんで告白してきたのか?それはもちろんひかげが私のことを好きだからだろう。むしろそれ以外ない。

2つ目、いつものようにからかわれていただけというのは?と思ったが、あの時の雰囲気やひかげの赤くなった顔を思い浮かべると、あまりそういうふうに思えない。

3つ目、そもそも私たちは同性では?


そう、これが問題である。よく仲のいい女の子同士が、好きと言い合うことはよくあるだろう。しかし、あの時ひかげは「友達とかじゃなくて」と言っていた。友達に言う好きじゃなければ、何の好きなのか。もちろん、恋愛的な好きである。

つまりひかげは、私のことを恋愛対象として好きと言ったのだ。いわゆるレズというやつだ。


「レズか〜、アリなのかそれは?」


いや、無いだろう普通。女の子同士結婚なんか出来ないし。子供も作れない。あと世間一般で考えて恋愛は異性同士でするものだ。

別に、赤の他人同士が同性好きで、同性カップルが出来上がったとしても私は何もわない。そういうのを好きな人は一定数いるだろう。しかし、自分となると話は別だ。


結局問題なのは、私がひかげを受け入れるかどうか、それだけなのだ。


「ん〜…………」


頭を抱え、ひかげとの日々を思い出す。いつから好きになったんだろう。

思い当たるとしたら、夏休み前?あさひに会いたいと言っていたが、あれはもしかしたら嫉妬していたとか……?

それとももう既にあの時は好きになっていて、それ以前からとか?

いつの間にか好きになっていたってやつ?


あれこれ考えて意味が無い。これはもう、実際に会って話してみないことには。

でも、いざ面と向かって話すとなると緊張する。心の奥底に、ひかげに会うのが怖いという思いがある。


だからといって逃げるわけにはいかない。

話さなきゃいけない時もある。このままひかげと有耶無耶になってしまう方がよっぽど怖い。

まだ考えがまとまったわけではない。でも向き合わなきゃ進まない。

話そう。そして決めよう。これからどうしていくか。ひかげと話して、実際に思ったことを、私の想いを。




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