同性バトルハーレム!!

低迷アクション

第1話

「同性バトルハーレム!!」


 真冬の空はこんな時だけ、少し暖かめの風を送ってくれた…


(なぐさめはいらねぇよ…)


今から6時間前に最期通知を知らせる、悪夢のバイク音を思い出す。ポストに入った封筒は“まことに残念ながら…”といつもの決まり文句…


(聞き飽きたな…)


あがいたけど、無駄だった。所詮、自分は負け組。だが、今までやってきた事に後悔はない。

もう、道がない事もだ。この先に何の希望もない。と言うより描けない…


(よし…)


後腐れなんて、湿ったいのは御免こうむる。立っている場所は、飛び降り場所に

おあつらえ向き…橋の欄干に片足を乗せ、もう片方も勢いよく乗せた。


後は一歩踏み出し遥か下方の浅瀬にダイブ。死体は綺麗に海まで一直線…

何事も思い切りは良い方だ。


(人生15年、悔いはねぇ)


スカッと空に笑い、そのまま歩を進めようと、体を動かした刹那…


「ひゃあ~っ、駄目ですよー!真冬のバンジーなんて、風引いちゃいます!」


人気のない人口減の町に、非常に場違い可愛いボイスが流れ、2本の足に柔らかいが

力のこもった手が巻きつけられ、そのまま道の方へ引き戻された。


「きゅんっ」


と言う仔犬の鳴き声みたいな音と共に、欄干から落ちたお尻に固い地面の代わりに

柔らかい感触が広がっていく。下方に視線を移せば、自身の尻下から“きゅ~っ”

って感じが非常に似合う気絶顔をした幼い少女の顔が覗いている。


本来なら、すぐにどいてあげるべきだが、何だかもったいない気もするので、彼女の

頭の上で少し、お尻を揺らしてみた。


「う~んっ、ふふっ」


鼻腔をスカートで擽られ、顔を綻ばす少女に心臓の動悸が連動する。


(やっべ、マジ天使…)


正直、絶好のタイミングすぎた。あの世へGOの際のお迎え係の天使に、門前祓いを喰らって、現世に戻された。例えるなら、そんな感じ…


この世に悔いが、いや恋が残った…



 「とゆー事で、あのマジ天使と周りが形成しているグループに何とか入る手はねぇだろうかな?野郎ども!」


お昼休み、弁当も食べずに声を張り上げる私に2人の舎弟が“うーん”と考え込むように腕を組む。おっと、紹介が遅れた。自分の名前は“十鬼 矢射子(とき やいこ)”今年4月から私立倉我璃学園(しりつくらがりがくえん)に入ったピッチピッチの女子高生。


いや、女子高生と言うのは、少し語弊があるな。私は現代社会において、死後になりつつある“スケ番”男顔負けの不良だ。


中学時代は男でも、女でも気にくわねぇ奴に拳を見舞ってきたが、高校入学の際は新規一点を図り、真面目に勉強をして、入試に挑んだ。結果は全て惨敗。


筆記は通ったが、やはり不良というのは拭えない。面接は全て駄目。面接官に対し、舐め切った態度が気に障った様子だ。


その経緯を経て、橋からダイブして人生サヨナラしようとしたら、天使に命も、人生も救われた。


天使の名前は“鹿目 由奈(かなめ ゆな)”伊達に不良を舐めちゃいけない。舎弟二人の

協力もあって、見事、彼女の名前と(同い年なのに驚きと嬉しさを同時に味わった)



入学する学校を探し当て、そこに私も入学、クラスも同じと言う素敵な根回しを

舎弟二人と協力して取り組んだ。


そこまでは万事OK。だが、問題は…問題だったのは…!


「はい、由奈、あ~んしてー」


「うん、ありが・・・むむ、むぐぐ」


「由奈さん、今日の卵焼き、少し味を変えて見ました。どうですか?」


「ちょっと待って、まだ、こっちが食べ終わってない、てか、自分で食べられる…」


「はい、はいっ!食べて、食べて~」


「ひゃぁ~っ、むぐっ、むぐぐっ!」


由奈を取り巻く同級生の少女達が、それぞれ持参してきた弁当のオカズを彼女の

口の中に詰め込む様子が目の前で繰り広げられている。


「いじめ?って奴ですか?」


舎弟の1人、留年しまくりで明らか年長者だけど、私には腰が低い“マサ”が

唖然としたように言葉を発した。


「いや、あれは…」


“刀じゃないから、大丈夫”と教師にうそぶき、何となく木刀常時携行許可をもらった

言葉少な目無頼漢、同じく舎弟の“三田村(みたむら)”が呟く。


「メチャ、モテてんだよ。同性に…」


締めは頭である私の台詞で締めくくりだ。そう、由奈はモテる。非常に!何故か、女の子から。確かに、髪はショートで背も小さめ、お眼目パッチリ、

高校生と言うより、小学6年生でも通じる童顔に


成長がちょっと止まったような、GOODなロリロリボディに加え、あの、ちょっと足りない感じのお頭(おつむ)マジ可愛、そう、あれだ。


「チビだし、ちょっと足りない、彼女にメチャ夢中って奴だ。あー、もう、ご飯いっぱい

口に入れられてむぐむぐ若干の困り顔、可愛いなぁっ、もう!」


「姐さん、鼻血、鼻血めっちゃ出てます!皆、見てます。引いてます。」


興奮する私に、マサが慌て、三田村はそっとハンカチを差し出す。白い布が赤一色に染め、先程の議題を復帰させる。


「で、由奈の傍に近づきたいんだが…」


「いや、普通に“お弁当食べましょう”で良いんじゃないんすか?」


「それが出来たら、苦労しないんじゃ、馬鹿タレン!」


「グッハァッー、やべ、凄い血が!おかーちゃん!!」


今度は適当な事をほざくマサの顔面を赤一色に染めるくらい、瞬間的に数十発の拳を

叩き込む。


「そもそも、アタシは見た感じの不良面だし…まぁ、多少はナイスバディだけど…

要するに!おっとり天然ちゃんの由奈と釣り合わないだろうがいっ!」


「いや、大丈夫じゃないすか?あの子の周りの女子見て下さいよ。皆、肉食獣ばりに

お眼目爛々ですぜ!」


「だから、それが問題ないんじゃ、この馬鹿タレン!ツバイ!!」


「ギャーッ、再びワタクシの顔が真っ赤に!おとーちゃん!」


全く懲りない適当返しを繰り出すマサに自慢の足蹴をお見舞いしてやった。

ちなみに私の蹴りは腿を上げる瞬間にパンチラを見られないくらいの俊足を繰り出すのが自慢である。


「一体、何すか?姐さん?由奈ちゃんとお友達になりたいんじゃないんですか?」


「馬鹿野郎がっ、そんな事もわからないのか?周りの奴みたいに欲望ギンギンで群がったら、駄目だろうが!もっと穏やかに!そうすりゃ、いかがわしいとか、やらしい関係を

持ちたいって言う、邪な思惑を全力カバーで安心だろうがっ!?」


「やらしい気持ちあんのかよ!!駄目でしょう。それは、世間的にも、

あの子のためにも(私が静かに拳を上げると、マサはすぐに口を改める)


いや、具体的な話は置いといて。姐さんは最終的にあの子とどーゆう関係をとりたいんですか?」


「うーん、そうだねぇっ、お尻の下に敷いて、むぎゅぎゅーっ、顔させたい。

“変態じゃねぇ…(と言うマサのツッコミを遮り)”って、何言わすんだ、この馬鹿タレン!

ザ・サードォォォ!(とキックと拳を放つ)」


「ギャアアアア、もう、俺の顔が原型留めてないぜ。おばあちゃぁぁん!!!」


「・・・・・・・普通に、お弁当いっぱいで困ってる彼女を助ける体で乗り込めばいいのでは…?」


「あ、それいい!名案だよ。三田村!」


「えっ、ちょっ…俺の顔面凄く酷くなってるのはガン無視…?」


というマサを無視し、由奈を中心に女子の塊になりつつある群れの中に歩み寄り、でっかく叫ぶ。


「オイッ、オメェら。あれだぞ?ご飯はゆっくり食べさせろ!由奈とか言ったっけ?

その子、困ってんだろうがぁっ!?」


クラス内でも目つきの悪さは女子1位!モーゼの十戒のように、由奈までの席が開けた


「やいちゃん…」


一息つけたと言うようにゴクンと喉を動かした由奈が星でも飛びそうなキラキラお眼目で

こちらを見る。


(あ、名前覚えてくれてるんだぁ!嬉しい!うわぁああ、かわええ、そして…そ・し・て!柔けぇええ)


「あの、やいちゃん…?」


由奈の言葉に微妙の変化を感じ、気づいた。無意識下の行動だった。いつの間にか、彼女の顔を両手でしっかり掴んでいた事を自覚する。だが、もうここまで来たら、本能がどうにもならない。


「飯ついてんぞ…」


低く呟き、彼女の頬に舌をごく自然に伸ばし、掬い取る。甘い桃に少しの酸っぱさ、美味、

美味!由奈が驚き、少し体を動かすが、力を込めた両手の戒めから逃げさせない。


(次はもっと濃い味わいを)


なぞるように頬を舌で撫で、そのまま、ぷっくりと膨らんだ唇へ、由奈の目が大きく

見開かれ、その中に三田村の木刀とマサの姿が映った。


「ハイッ、ストップ!ストップ!姐さん!ストップ!早すぎるからね!

色々ステップ飛び越しすぎー!」


後頭部に鈍い痛みを感じ、大体満足の状態で、私は気持ちよく気を失った…



 「一緒にトイレとかどうですか?」


午後の授業の休憩時、意識を戻した私のハイキックの影響で保健室に駆け込んだマサが

吊った片腕を気にしながら、無事な方の片手を上げる。三田村は隣で曖昧に頷いていた。


「女子高生、いや、女子と言えば、姐さんとしか交流のないあっしらですが、女達が教室で

よく一緒にトイレに行くのを見かけます。これを利用すればどうでしょう?」


「いわゆる、つれションって奴か!冴えてんな。マサ!」


「うん、姐さん…その姐さんも女の子っすから、つれションって言うのは辞めましょう。

ふぐっ(腕は可哀そうなので、腹に拳を叩き込む)いえっ、すいません…」


「早速、実行してみんわ。うん、でも待ってよ、トイレ一緒に行くとか、いかがわしくない?」


「ト・イ・レ・で・ナ・ニ・す・る・つ・も・り・ですか?お喋りとかを楽しんで下さい。

大体、さっきの昼食であんだけ飛ばしてんですから、もう充分でしょ?」


「だって逝くだよ?(字が…違いますと三田村が静かに呟く)いや、わかってるけどさ。

でも、あれだな。由奈がスカート降ろしたら、保てないかも…理性…」


「トイレは“個室!!”だと思うんで!!大丈夫です!多分!!・・・・

いや、あっしも男子トイレの構造しか知らねぇっすけど…とにかくやましい気持ちは抑えて、仲良くしたいんでしょ?」


「うん、そうだな!仲良くなりゃ、どうとでも出来るな!グへへ…行ってくる!」


「姐さん、由奈ちゃんの前で絶対“グへへ”とか絶対ダメですよ!お願いしますよー」


“わかってる”と言いつつも、頬が自分でもわかるくらい、歪んだ笑みを浮かべているのを

何とか抑えつつ、私は保健室を後にした…



 「お、おう!ゆ、由奈ぁっ、しょ、しょん、いや、トイレ…行こうぜ…!」


昂る気持ちをどうにか抑え、押し殺した声で由奈に囁く。ついでに名前を呼べた事も大きな一歩、これからは何の抵抗もなく、彼女の名を呼べる。段取りも完璧!

ちょうど彼女が教室の壁越しを歩く所を待ち伏せ、タイミング良く、片手を壁にぶち込み、余った手で逃げられないように柔い体を壁に押し付けてだ。


(後で、マサ達に言ったら“それは不良がカツアゲする時の手です”って怒られた)



とにかく今は彼女の返答が気になるお年頃……


「えっ、うん、いいよ?ちょうど、私も行きたかったとこだし。」


少し驚いた感じはあるものの、流石、我が天使。笑顔と最高の返事で頷いてくれた。こんな、不良のクズの塊みたいな私に好意を示してくれている。彼女の顔を見ている内に先程の頬の味を思い出し、危うく、押し倒そうとしている自分にだ。


「ちょっと待ちな!」


甘い瞑想にふける自分の背後で耳障りな声が聞こえた。振り向けば、私と同じくらいの

背丈、いや、ちょっと大きいか?いかにも体育会系女子と言った女生徒の1人がこちらを睨んでいる。


確か、コイツは“天野 うずめ(あまの うずめ)”空手部に所属し、腕が立つ事で有名な奴だ。

由奈よりは眺めの単発に、強気な表情が実に憎たらしい。由奈の周りにたむろする有象無象の1人、


確か、由奈とは中学時代からの親友と聞いて、いや調べではわかっているが…


「由奈、こんな不良と一緒にトイレ行ったら、何されるかわからないよ。お昼だって

いきなりあたし達の所に割り込んできて…その、変な事してたし!」


「変な事ってなんだぁっ!お前等こそ、一杯飯食わせて、由奈が太ったら、

どうするだああ!」


「太る訳ないでしょ?由奈のお腹は、ほら!この通り、ぷにぷに、ちょうどいい感じに

なってるから大丈夫よ!」


「はひゃあーっ、う、うめちゃん!!お腹、おなか、くすぐったいよ~」


“コイツ出来る!”こちらの一瞬の隙をつき、由奈を抱え上げたうずめが、彼女のお腹を

捲り上げ、柔らかそうなお腹を逞しい手で揉みしだく。


だが、相手の好きにはさせねぇ!


うずめに負けないくらいのスピードで距離を詰めると由奈の本当に柔らかいお腹を掴み、

うずめに負けないくらい揉みしだく。


「馬鹿野郎!ちょっとこの辺り触ってみろ!この野郎!

結構ぷにぷにだろうがっ!この野郎!!」


「なんですってー!ああ、確かにぷにぷにだわ!このお腹。匂いも肌触りも

悪くないね!!」


「全くだな!えっ、ちょっと嘘、何コレ、花の香り?舐めてもいいよな?この野郎!!」


「ひゃあんっ!くすぐったい~!!二人共、お願いだから離して!降ろして~!あんまり、お腹冷えるとその、お花が…お花摘みがぁーっ!」


「おいいーっ、由奈が漏れるって言ってるぞ!とりあえず、下して、トイレ行こうぜ!

この野郎!」


「そうね!とりあえず離しましょう。準備はいい。3で行くわよ!」


「ちょっと待て!3ってどっちだ?3、2、1か?それとも1、2、3か?このアマぁ!!」


「1、2、3よ!てか、誰がアマだ!こらぁっ!!」


「OK!いやいや、待てよ!お前、そう言って本当に離す気あるか?信じてOKなんだよな?この野郎!」


「ちょっと、どんだけ疑り深いのよ!?んっ、それより由奈…何で小刻みに震えてるの?」


「・・・・・・・・」


「何だか、お腹って言うか、下腹部体動してない?由奈?」


「・・・・・・・・」


「由奈あぁぁぁっ!(うずめと矢射子同時で)」…



 「おいっ“委員長”ちょっとツラァ貸せや?」


最後の授業はジャージで過ごす由奈に必死に謝ったけど、許してもらえなかったうずめと

私は、少しプンプン気分でHRを迎えようとしている由奈にどうにか謝るために、賢明に

謝罪を繰り返すうずめを尻目に、由奈の取り巻きの1人、ピカピカおでこが良く似合う

“委員長(名前は忘れた)”を廊下に引きずり出した。


「な、何ですか?トキさん?」


怯えた声を出す委員長、思った通り、大人しい系の女だ。由奈のグループの中では優しい

お姉さん系と言った所か?一瞬、え?じゃぁっ、自分は?と思ったけど、今はそんな事より、

コイツを味方につける事が重要だ。本丸を手に入れるのは、まず外堀からという訳だ。


「教室で、由奈にヒドイ事しちまったからよ。うずめだっけ?アレと一緒に謝ったけど、許してもらえなかったからよ。何か詫びいれてぇんだけど…上手い方法ねぇかな?」


「ええっ!一瞬、何のイジメかと、もう先生に…ひゃんっ、」


「何か良い方法ないかって聞いてんだけど?」


「ゴメンなさい、考えます。呼びませんし!考えますので!」


訳知り顔でこちらを否定の委員長の胸を軽くつまみ上げ、冷静な標準語で先を促す。


「あ、そうだ。由奈ちゃん、甘いモノとか好きなんで、お店に連れてくとか。」


思いついたーって感じで手を打つ委員長。なるほど…甘いモノか…確かに良い手だ。


「それ、いいな。早速実行しよう!委員長、由奈の好きな店のチョイスを頼む。」


「えっ、これからですか?でも、うずめちゃんは多分、部活だし。私も委員会がっ…」


「うずめは良いや。委員は休みだな。」


「いや、それはできないですよ。ひゃんっ!」


「休みだよな?」


「はうぅぅっ、ハイッ、わかりました。休みます!休みます!」


少し胸を、上げた腿で小突いてやると、慌てて頷く委員長、

よーし、だいぶ調教の成果が出てきたな。しかし、よく触れば、イイ感じの柔らかさの胸と言う事にも気づく。これからは事あるごとに責めるとしよう。


ふらふらと教室に戻る委員長を見送り、後ろに立ったマサと三田村に頷く。


「二人共、これで手筈は完璧だ。万が一の時は頼んだぜ?」


「万が一って何すか?…」


マサが恐る恐ると言った感じで聞く。


「そうだな、例えば、スイーツ系の店に行ったとして、白いクリームが顔についた由奈

を見た時に、布巾で拭き取る所を舌で拭って、そこから、ディープキ、キス!とか、そんで、そんでさぁっ、下腹部のディープなスポットとかに…」


「ああっ、もう良いです!止めます!頑張って止めますんで。なっ?三田村?」


「心得た…」


“えっ?こっちは結構死活問題なのに、何でそんなドン引きなん?”と言う私の表情を軽く受け流し、二人共、少し肩を落として教室に消えていった…









 最初はこっちの言葉に“頬っぺたぷくーっ(マジ可愛っ!非常に重要)”だった由奈だが、

学校近くのケーキが美味しいお店に行こうプランを提案すると笑顔に戻った。


(よかったー!)


って感じで顔を見合わせるうずめと私…ん?っ何かが可笑しい。この文体から察するに…

瞬時に拳を突き出したのは向こうも同じだった。


「テメー、何でここにいる?部活はどうした?」


「由奈が危険な不良と一緒に出掛けるって聞いたら、ほっとけないでしょ!

休んできたわよ!!」


「なんだとぅっ、クソッ、オイッ、委員長ぉぉぉっ!!どーゆう事だっ?これはぁっ!」


「えっ?ひゃっ、ひゃぎいぃーんんっ!すいませ~ん」


うずめの急参戦に怒りを隠し切れない私は傍で、オロオロしながら、さりげなく由奈の背後に逃げようとする委員長の左胸を鷲掴みにし、事情を問いただす。


「あの、その、多分、トキさん声が大きいから、うずめさんに聞こえちゃったのではないかと…ひゃっ、ひゃはぁぁ~んっ!」


「ちょっと、どーゆう事っ!?委員長!こんな人間のクズぶっちギリ女に寝返るとかさぁっ!この胸か、悪いのはこの胸かぃっ?ええっ!?」


今度は右胸をガッチリ掴まれ、いらわれ、身動きが取れない委員長。彼女の胸に段々、かなりな興味と深い探求心を触発されそうな私のスカートを引っ張る者がいる。


「やいちゃん、やいちゃん…」


「えっ?由奈?」


「ケーキ!食べにいこ!!」


ちょっと駄々っ子みたいに拗ねる少女のおかげで、色々正気に戻った。

やっぱり可愛い。周りの取り巻きがいなければ、このままどっかに

お持ち帰りしたいくらいだ。


「全く由奈の言う通り、下らない事で揉めてないで、さっさと行こ!」


耳障りな声に視線を移すと、由奈の隣にいつの間に、いや、さっきからいたか?

小鬼みてぇな幼児体型の存在に今、気づいた。


「何だ?このクソガキは?」


「なにぃっ?誰がクソガキだよ!同じクラスでしょ?“浅間 黒子(あさま くろこ)”

由奈の親友の!」


「・・・いや、知らんな。ちんちくりん過ぎて、存在を視認できなかった。」


「えっ、酷くないっ!?・・・何それ・・・酷い・・・」


大きな声を出したかと思ったら、今度は黙り込み、目にはうっすら、涙を見える。

畜生、これだからガキっぽいのはいけねぇ!


と思ったら…


「酷いよ、やいちゃん!くろちゃん!可愛そうじゃん!!」


「うわあああん!由奈あぁぁっー!」


「えっ、あ、ワリいっ、ごめんな!・・・」


「うん、反省してるなら…あの黒ちゃん、ちょっと抱きしめキツイ…かな…」


横から参戦した由奈が黒子の頭を抱きかかえる。それに全力で乗っかる黒子に思わず

謝ってしまう!ヤッベェッ、コイツ侮れねぇっ!上手い具合にお目当ての懐に飛び込みやがったぁっ!?


そうか、そーゆう手もあんのか!知らなかった…しかも、黒子若干、由奈の懐に飛び込んで“グへへ”と私みたいな声を出してる!?そして、今気づく。これが三田村の危惧した事か?と今更ながら理解!


「まぁ、とと・と・と・り・あ・え・ず!!黒子、由奈から離れろ!店行こうよ!」


“不覚っ”とばかりに動きを止める私の前で、うずめが黒子を引き離す。ナイスッ!

うずめ!だけど、待てよ?若干、由奈を抱えてるぞ!おいっ、胸を触るのは無しだぞ?


とりあえず、私も慌てて由奈を抱えるために、うずめの後に続いた…



 「わぁっ、見てみて!やいちゃん、新作のケーキが出てるよ!美味しそう!!」


「お、おうっ!?そうだな。由奈…」


「由奈、こっちも美味しそうだよ。」


「うん、そうだね!黒ちゃん!」


「うーんっ、たまの部活サボりだぁっ、派手に食うかぁ!とりまミルフィーユをひっとーつ!委員長はどうする?」


「私も同じモノで良いですよ。」


 さて、無事にケーキ屋に着いた…けど、問題は、ケースに並べられた色とりどりの

形様々のケーキの中で戯れる女子の中で、一応女子である私が全く、ケーキの知識がないという事だ。


考えてみたら、舎弟達と食べた事のある、甘いモノと言えば、アンパン、ガム、

一番近いモノとしては板チョコくらいか?


駄目だ、この知識だけでは、とても会話に入っていけん。と言う事で


「マサァッ、三田村!」


「ハイッ、姐さん!出番を待ってました。」


「おうっ、助かった。だけど、おおっ?何、既に食してる感じなのー?」


素早く現れる舎弟達だが、その手には様々なケーキの皿がある。

なんてこった。私より、舎弟の方が詳しいなんて…


「いや、姐さん、こんなの、美味しそうな、好きなモノを頼めばいいんじゃないすか?」


「そ、そうか?センスとか気にしない?」


「センスより、味なのでは…?」


抹茶ケーキを食べながら、静かに頷く三田村。その落ち着きに安心を覚える。


「えっ?俺の助言はガン無視!?」


とのマサの声を無視し、私はケーキを選ぶ事に意識を集中する。





非常に悩んだ結果、あたしはオーソドックスなチーズケーキを頼む。超貴重な品を

持つように、皿を大事に抱え、由奈たちのテーブルにつく。


「やいちゃんはチーズケーキなんですね?ここのはどれも美味しいですよ。」


「お、おうっ!そうだな。そうかもな!」


「ちょっと、味見~」


テーブルに置いたチーズケーキを少し切り分け、口に頬張る由奈。ああ~、ホント、

小さい子と甘い物はベストマッチングだな~とにやけてたら、隣でうずめも同じような

顔をしていた。


「うん、美味しい!はいっ、それではお礼に私のケーキもどうぞ~」


音色の良い声音と共に“あーん”とばかりに、フォークに自身のケーキを載せ、こちらに

差し出す由奈。


躊躇なく、パクつくあたしの口。味なんてほとんどわからねぇっ!だが、最高だ。


「もう~っ、がっつき過ぎ~、そんなに美味しかったー?」


面白そうに笑う由奈に、こちらもモグモグ笑顔で頷く。良かった、ここに来て、

本当に良かった。そんな笑顔のやり取りを交わすあたし等に、文字通りの横槍ばりに


フォークが突き出され、連動式に不気味な声が重なった。


「あっはは~、楽しそうだね~、やいちゃあぁ~ん、なら黒子のケーキも一口あげるよー!」


顔に明らかな敵意を表した黒子が“妖絶”という言葉が相応しい笑顔でこちらに自身のケーキを差し出す。だが、私は見逃さない。何か、赤いゼリーが乗ったみたいなケーキの上に

これまた更に赤い粒粒が…


絶対、甘い奴じゃない。これは七味、タバスコ、辛い奴じゃん。これを食えと?

ニッコリ笑顔の黒子と由奈。だが、黒子の薄っすら開かれた目からは凶悪な殺意を感じる。









だが、食べねばならない。目の前のドス黒はさておき、こちらを見る由奈の天使の無垢顔視線を裏切る訳にはいかねぇ…据え膳食わぬば、何とやら!いや、違うか?しかし、今はそれ所じゃない。


決意を固めた咆哮一つ上げ、パクっと食らいついた自分は口の中に広がる、強烈な刺激臭と、歯を溶かしそうな凄い辛さの感覚の中で、綺麗に気を失った‥‥



 口内に残る嫌な感覚はさておき、頭に感じる柔らかい感触、加えて両頬を包む優しい匂いは!速攻判別!由奈!!自身の頭を膝枕、太もも(←ここ非常に重要)で優しく受け止め、

心配そうにのぞき込む顔に思考回路がオーバーでヒート!!


「もう~、大丈夫~?やいちゃん、急に倒れちゃうだもん!ビックリだよー!あっ!!

もしかして、調子悪い?熱とかある?」


と言って、自身のおでこを、私の頭にコッツンコした瞬間、興奮と絶頂で、二度目の

気絶を非常に良い気分で味わった…


と何度も、短い文章で段落替えはおかしいので、そのまま続行(メッタァアア)して、数分、

気が付けば、ヤスと三田村に馴染みのコンビニ前まで連れてこられている自分がいる事に気づく。


「姐さん~、いきなり失神とか大丈夫っすか?そりゃ、あの子可愛いけど、ちと、胸が足りねぇ。俺達としては、あの正直、委員長さんとか、うずめさんとか‥‥あと、姐さんとか」


「ナニ、モジモジしてんだ!ヤス馬鹿野郎!(とばかりにお決まりの上段飛ばしアッパーを繰り出す)いや、てか、あの後どうなった?」


「綺麗に鼻、もしくは目から血を流した姐さんを我々が送るという事でなんとか事無きを得て、皆さん、帰られましたよ。」


「何ィぃッ、畜生!どうしよう?その後、飲み会で言う所の二次会的なお家でだべる的な

パーティ始まりーの、そこからパジャマパーティの二次会とか開催したら、あたしの理性は

もう色々アウトだよ!!」


「いや、そんな事より問題は色々あるでしょう…」


歯ぎしり&地団駄の私に、三田村が静かな口調でツッコむ。こんな時の彼は何か、非常に正論をかますのが常だ。


「何がだよ?」


「今日、ケーキ屋での出来事、学校での様子を見て、確信しました。彼女は“人外”いえ、

その血族、もしくは能力を受け継いでいると思います!」


「えっ、み、三田村?ちょっと待って?色々、説明希望中!!」


急な電波的&珍しく長文な会話に焦る私に、お構いなしで三田村の話は続いた。隣のヤスも珍しくお・と・この会話に耳を傾けている様子だ。


「いつの時代にもあるんです。こーゆう話…可笑しいと思いませんか?いくら、女の子同士の友情だとしても、他者に対して、あそこまで攻撃的なのは異常です。そして、そこにむしろ、積極的に関わろうとしているあなたも…!」


「何が言いたい?」


「つまり、異能です。彼女は、その存在自体が人間の思考を狂わせるように作られた、いえ、能力を持った存在なんですよ。」


普段、あまり喋らない三田村の長文の台詞に非常に驚くが、彼の言う所はわかる。確かに

彼の言う事も一理あるかもしれない。


今まで、そーゆう気のなかった自分がここまでのめり込んでる。これも由奈の成せる技か?

いや、自分は違う。あの橋での出来事が‥‥


「とにかく、気をつけて下さい!」


こちらの無言をどう察したのかは、わからないが、三田村は諦めたように締めの言葉を宣言し、去っていく。ヤスもぎこちなく挨拶を返し、去っていく。1人残された私は、しばらく1人で佇んだ…



 「何ぃっ、由奈が“最近赴任した女生徒会長と、その側近に攫われただとぉっ!そりゃ、

マジかぁっ!委員長!!」


「わひゃぃぃっ、ちょっと、トキさん!落ち着いて、千切れちゃう、胸が!胸パーツが

プラモデルばりに千切れちゃいますからぁっ!!」


「その通りだ。お二人、まずは落ち着け!」


やんや、二人で騒ぐ私と委員長の間に“てか、お前が落ち着けっ!”ばりに血塗れの

うずめが立つ。こちらが訪ねる前に、黒子が隣に立ち、補足する。


「生徒会に突入して、返り討ちにあったみたい。だいぶ武闘派がいるみたいだね?

ありゃ、強いよ。」


「いや、そもそも生徒会がそんなに武闘派でいいのか?学園的にどうなの?

先生はどうした?」


「そんな事は、今はどうでもいいの!とにかく由奈奪還のためにはうずめだけじゃ、無理!

手を組まなきゃ!」


こーゆう時にしごくまともな反応の私を黒子が遮り、共闘を提案した。勿論、断る道理はない。決断は早い方がいい。


「わかった…!今回だけだ。だが、あの柔らかほっぺは渡さねぇっ。」


「ちょっと待って、矢射子!私だって、ぷにぷにお腹と足は確保ね!」


「ずるい!!うずめ!じゃぁ、お尻は黒子のモノで!」


「ちょっと待って!みんな色々可笑しい。今は由奈ちゃんを教室に戻してくる事が重要でしょ?あっ、えーっと(限りなく小声で)じゃぁ、私は由奈ちゃんの背中ですかね。こないだ銭湯行った時、可愛かったから…わひゃぁぁあっ」


「てっめ、委員長!ナニ調子こいてんだぁっ!(委員長の左胸を揉みしだきながら)」


「委員長!背中は私と被るでしょうが!(委員長の右胸を揉みながら)」


「いや、そもそも、銭湯って何?何気に、この面子の中で一番、進展してるっぽいんだけど!えっ?どーゆう事カナ?委員長?(委員長の頬をちぎれんばかりに両方向に広げながら)」


「わひゃぁっ、ひゅ、ひゅみまへぇぇぇん」


全身を余すところなくいらわれ、色々駄目な感じになった委員長を、その場に放置し、

3人で廊下に飛び出す。


「姐さん、行くんすかぃ?」


ヤスと三田村が立っていた。無言で頷く私にヤスが笑う。だが、三田村は

“本当に行くんですか?”という顔をする。


「何も問題なしだ。三田村、一度信じた道を行くだけ…後悔はない。

そうだろ?お前はどうする?」


しばらく私を見つめた三田村が無言で頷く。やはり、持つべきは愛すべき舎弟、いや友だ。


2人の舎弟を3人に加わえ、恐らく戦闘力最強の面子で生徒会室を目指した…



 下らん前口上は不要。突進をかけるうずめの拳が明らか待ち受けていた役員の1人を吹き飛ばし、逆にヤスがもう一人の返り討ちに遭った。


「ナイス身代わり!」


と叫ぶ黒子が盾にしていたヤスの後ろから顔を覗かせ、もう1人を隠し持っていた鈍器のようなモノで倒す。だが、前には防犯用のさすまたを構えた複数が迫る。


「姐さん、お早く!」


それを迎撃したのは三田村、木刀を私と相手の真ん中に向け、叫ぶ。


「サンキュー、三田村、後は頼むぞ!」


と一声かけ、戦場になった生徒会室を一気に駆けた。


「おやおや、校内きっての不良が、正義の味方気取りとは…楽しい学園だな」


静かな声に気が付けば、黒髪ロングの生徒会長が立っている(ヤバい、結構な美人だ)

気配だけでわかる。コイツは結構出来るとわかった。


私が構える前に相手が手を翳す。


「止めよう。同じ強者同士、手を交えなくともわかる。少し話をしようではないか、矢射子君!」


「‥‥内容によっては」


「よろしい、由奈、いや、鹿目由奈君の体質は正直、我が学園でも手を焼いていてな。

空手部の主将から、君のようなはぐれ者、いや、これは失礼、とにかく君までもが好意を

持つ存在…まぁ、正直、この私もだがな(あれ?何かハァハァしてるぞ?会長)


彼女の能力が突然覚醒したのか?それとも元からなのかは、わからない。だが、このままではいけない。だ・か・ら、今後は我が生徒会で管理しようと…」


うん、まぁ、途中から息が荒くなった時点でヤバい雰囲気は察していたけど、とりあえず

私とうずめと黒子が一斉に飛びかかり、狂気爛々の目に変わりつつある生徒会長を数撃の元で吹き飛ばした…



 「う~ん、あれ、私どうしたんだろう?」


由奈が目を開け、慌てたように辺りを見回す。


「良かった~!このまま目を覚まさないかと思ったよ?」


「全く心配したよ!」


「とにかく、心配ないな。これで!」


「ああ、生徒会室を緊急に貸し出した甲斐があったな。諸君!」


「ええっ?黒ちゃんにうめちゃん、やいちゃんに…?あれ、もしかして生徒会長?

一体これはどうしたんですか?」


「いや、由奈が急によ、ふらっと意識を失った的で…なぁ、皆!」


「うん、うん!」


「そんで、諸君が近くの生徒会室、つまりここに運びこんでくれた訳だ。そうだろ?諸君。」


「うん、うん、うぅーん!」


?マークがまだ残る由奈と彼女が起きる前に全てを打ち合わせた自分達がいる。三田村や

会長の言葉もわかる。だが、目の前の少女は純真そのもの、異能だって、人外だっていい。


彼女の笑顔が真実だ。決して悪いモノじゃない。むしろ‥‥


「あ、あれ?何だろ?」


体を起こした由奈が少し体を動かす。何かに気づいたのか?少し顔を赤らめる。


「ど、どうした由奈ぁあっ?」


「あの、何だか下着の位置が変わっている気がして、それに、体に妙な感触が…?

あ、あの…何かありました?いや、とゆうより、何かしま…」


「いや~とにかく元気で良かった!なぁ、皆!」


「ええっ!ハッハハハー!!」


「ハッハハハハー」


「ええ?えーっとアハハ、ハハハ‥‥」


とりあえず全力で笑い、誤魔化す私達と、それに囲まれ、笑うしかない由奈を見比べた時、

一体、どっちが悪いモノのか?を真剣に私は考えた…(終)


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同性バトルハーレム!! 低迷アクション @0516001a

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