第2話 新入生合宿はもうすぐだし、デュクセルソースはきのこのくせに美味しい

 響也君が小学校へ向ってしばらくしてから僕も大学へ向かうことにした。今日の授業は2限目からだから朝の時間には少しゆとりがある。…前回言ってることと矛盾してる?いやいや、あのおじさんの相手は無駄でしかないでしょ。

 せっかく時間があることだし、昼食のためにパン屋さんによってから大学に向うことにする。このパン屋さんは友人のアサガオさんがおすすめしてくれた、大学に近所にあるパン屋さんだ。なんでもバケットを使った総菜パンが美味しいらしい。



「大地くんおはよ。」

 パン屋には件のアサガオさんがいた。朝香葵あさがあおいさん。同じ大学の教育学部に通う同期だ。学部が違うのにどうして知り合いなのかと聞かれると言語学系の授業をアサガオさんが取っているからだ。その授業では同じ班のメンバーはあだ名で呼ぶことになっている。まあ、授業外でもあだ名で呼んでいるのは僕ぐらいなものだけど。

「アサガオさん。奇遇だね。どうしたのこんなところで。」

「奇遇も何も、私ここでアルバイトしてるから。」

「なるほど。いや、昼食用のパンを買いに来てね。」

「それならオススメを教えちゃうよ。」

そう言いながらレジ横の棚に向うアサガオさん。なんだか楽しそうだ。

「デュクセルソースって知ってる?」

「?なにそれ?」

「マッシュルームのソース。バケットに塗るとおいしいんだぁ。ちょっと高いんだけど一回で使い切るものでもないし買って損はないと思うよ。」


 値段を見てみると100g入りの瓶で250円とある。相場はわからないがアサガオさんがおすすめしてくれるものだ。買ってみようと思う。

「おすすめしてくれてありがとう。そのソースを一瓶とバケット1袋もらってもいいかな?」

「ありがとうございます。450円になります。」

「はい。これでいいかな?」

「ありがとうございましたぁ。」

「それじゃあまた明日かな?授業で。」

「またね。」


 うん、今日のお昼が楽しみだ。


     ☆☆☆


大学へ向かうと掲示板の前に見知った顔がいた。同じ学部、学科である友部仁ともべじんくんだ。確か次の時間は同じ授業を取っていたはずだ。

「やっほー、ともべん。」

「どうした、はじめん?普段はそんな呼び方じゃないだろう?」

「そうだね。ただ君もだろ?」

「俺は君に合わせただけさ、はじめん。」

 友部くんはこういったのりのいいところがある。こういうところが学部問わず仲のいい友人がたくさんいる所以だろう。

「それでどうした、はじめ?なにかようがあったんだろう?」

「ああ、大した用事じゃないよ。掲示板を見てたからさ、なにか書いてあったのかなって。」

「もうすぐGWゴールデンウィークだろう?休み前に新入生合宿があるみたいでさ。参加するか考えてたんだよ」

 意外だ。友達が多い友部くんのことだから迷わず参加するものだと思っていた。

「そうでもないさ。だってうち結構なマンモス大学だぜ?学科に分けても百人近くいるんだからさ。知らないやつも結構いるよ。」

「あれ?口に出てた?」

「いや、顔に。」

またかよ!!そんなに僕、わかりやすいかなぁ?

「うん。とっても。」

「また読んだ。」

「悪いね。…とまあそんな感じで参加するか迷っているんだよ。一はどうするつもりだ?」

「うーん僕はどっちでもいいかなぁ。」

「ちなみに、葵ちゃんは参加するらしいぜ。まあ、学部が違うからあんまり関わり持てないだろうけどな。」

「その情報はどこから仕入れたのか知らないけどいらないな。」

「そうだったか?まあいいや。俺は君が参加するなら参加するってことにしとくよ。」

 これは責任重大だ。学部の人気者の参加の可否を握っちゃったよ。

「だからそんなもんじゃないって。」

「そんなに顔に出てるか??」

「うん。」

そんな話をしながら授業の教室に向かう。なぜか大役を担うことになってしまった。…大役というほどのものでもないか。


     ☆☆☆


授業が終わり、空かせたお腹に入れたデュクセルソースをつけたバケットは美味しかった。さすがアサガオさん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

家賃5000円『浪風館』 雨宮r @amemiyar

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ