No.10 視線
王城に入ったシエンナは人の接触がないように案内をされ、部屋につくとすぐに風呂に入り眠った。
一方、男どもはというと……。
「みんな、待っていてくれたんだな」
「そうですね」
デニスとステファンは馬車の中で夜にも関わらず歓声を上げる国民に目をやる。
街には色とりどりの明かりがともされ、皆がお祭り騒ぎのようにセレスタイン国の勝利を喜んでいた。
楽しそうな街を通り過ぎると、デニスたちが乗った馬車は王城の正面から入っていく。
馬車が止まると、デニスはすぐさま降りた。
その瞬間、目線が自分に集まるのを感じた。
王子なら当たり前と思うかもしれない。
でも、その視線はいつもと違った。
絶望の淵から勝利した王子を見る目ではなかった。
まるで、人間ではない別の何かと疑うようにように見る視線。
「そりゃ、そうか」
デニスは自分の体を見つめ直し、視線の理由を理解すると不思議に笑みをこぼし歩いていく。
その後ろからステファンはついていくが、彼はデニスのことを心配しているようだった。
「殿下……」
「気にするな。まだ、命があるだけマシだと思うぞ」
デニスは自分を助けてくれた
★★★★★★★★★★
「遅くに失礼します、陛下。デニス・セレスタイン、ただいま戻りました」
デニスはその部屋に入るなり、一礼をする。
部屋の奥には窓の近くに机。
彼の先にいたのはこのセレスタイン国のトップ、そして、デニスの父である国王が座っていた。
現国王はそこまで年は老いてないものの、病を患っていたため活動量の多い行動をとることはできずにいた。
そのため、こうして書斎でデスクワークを行っている。
「よく戻った。デニス」
「はっ」
「まぁ、堅くなるな。せっかくの勝利だ。そこのソファに座っておくれ」
そう言われたデニスはソファに座り、また国王も向かいに座った。
「デニス。今回の戦についてはステファンの報告ですでに聞いている。まさか、アルマンディン侯爵令嬢がそのような才能を持っていたのはな」
「私が今生きているのも彼女おかげかと思っています」
「そうか……」
国王は「ふーん……」と言って考え込むと、バッと顔をあげ、デニスの方を見た。
「デニス。お前にはまだ婚約者はいなかったか??」
「はいそうですが??」
「ふむ。ならどうだ、デニス。あの侯爵令嬢と婚約する気にはならないか??」
「はっ!?」
デニスは突然の国王の提案に驚き、ソファから立ってしまう。
ハッと気づき、すぐに腰を下ろしてしまったが。
「陛下。僭越ながら、そのご提案にはちょっと……」
「ん?? どうしてだ?? アルマンディン侯爵令嬢が以前お前の婚約者候補になっていたのは知っているだろう??」
「知ってはいますが、彼女はどうも自分が侯爵令嬢であることを周りに知られたくないようです。この王城にいるのは「エナ」という少女としていたいようです」
「そうか……」
「それに彼女は私が聖女のどちらかと結婚すべきだとも進めてきました」
デニスがそう言うといつも落ち着いている国王は珍しく高笑いをする。
「そうか。侯爵令嬢は断る代わりに我が息子の婚約者を上げてくれたか。どうだ、デニス。聖女は??」
「やめてください、陛下。聖女のお2人に失礼です。私はどうもまだそのようなことには興味が持てません。全くせっかく帰ってきたのそんな話をするなら僕は帰りますよ」
デニスは国王が自分の婚約者のことばかり話をするので、呆れていつの間にか「私」から「僕」に変わっていた。
腰を上げようとするデニスに国王は「ちょっと待っておくれ」と引き留める。
デニスは仕方なく国王の方を向いた。
「なんですか、陛下。おふざけはよしてくださいよ」
「ああ。分かっておる。それでアルマンディン侯爵令嬢……いや、エナのことなんだが、彼女はどうするつもりだ?? ここにいても正直退屈なだけだろう??」
「そうですね……。でも、彼女はどうも機械づくりが得意なようです。ですので、学園に通ってもらうのはどうでしょう??」
「なるほど……。でも、それでは身分がバレてしまうのではないか?? アルマンディン侯爵令嬢のことを知っているものもいるだろう??」
「そのへんは大丈夫かと思います。ステファンによると彼女はどうも髪を切ったようなので」
「髪を切った!?」
「彼女は私たちと近いぐらい短いです。侯爵令嬢がそのような格好をしているとはきっと学園の者たちは思いもしないでしょう」
「なら、彼女が行きたいというのならば、行かしておくれ」
そして、デニスは国王と話を終えると、自分の部屋へと戻ってやっと体を休むことができたのだった。
悪役令嬢の私は王子をサイボーグにしたのでした せんぽー @senpo
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