焔と揺り籠


私は世界がうたうのを聞いた

世界は私の叫びに耳を凝らした

深い深い群青を被った夜の何たるかをもって──

すると 宙心そらを往く明滅の針や糸が

哀しみ色の人形ひとがたを数え切れぬほど縫い上げていた

(いつしか闇の舟に乗っていた私の眼前に

幾つもの人形が素知らぬ顔で焼かれている……)


この身体からだをシーツに滑らせてみれば

やがて無の心臓に墜ちるだろう

ソーダ水のようにプツプツとした意識は

寂寞せきばくたる永遠の沈黙に誘われて

一言もなくあらゆる夢を喰いに走るだろう

そうして先の尖った腹を満たしては

親しい誰かの空を突いて鉛の雨を呼ぶのだろう


それはきっと 揺籃の奇跡

透き通る母の大いなる愛


などと言いながら

まぶたは震える背中で静かに反抗の泉をこさえてしまう

(溢れる水滴にうつつは清く閉じ込められている……)


私は何故と問う

世界は何も答えない

深い深い群青を被った夜の何たるかをもって──



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詩集 心模様の書架 もざどみれーる @moz_admirer

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