「呪怨 呪いの家」から考える今後の創作について

 Netflixで「呪怨 呪いの家」を見ました。ある一つの家をめぐり時代を超えた呪いと、それに時代を超えて向き合っていく人々の姿を描いたJホラーらしいJホラーでした。

 作品自体は良くも悪くも安い感じが残っていて、役者の演技もよかったです。結構怖かったですし目を背けたくなるような恐怖を煽るシーンもありました。呪いが怖いというところもその呪いによって一線を超えてしまった人間が怖いというところも共存していましたね。傑作を見る、というよりもとりあえず怖がりたい!って気持ちで見るのがいいと思います。続きが作れそうな終わり方をしてますが、この作品であればこの「終わってなさ」が呪いの絶望感を表していていいのではないかと思います。時代の変遷を当時を代表する事件のニュースで表すのがベタすぎてさすがに…とも思いましたがあれぐらいの安さがこの作品には合っているのかなと思います。

 

 さて、この作品、ひいてはJホラーの多くがミソジニー(女性嫌悪)ではないかという指摘が出ています。たとえばこの作品に限らず多くのJホラーで呪いが「女性」の形をして顕現しているのが男性が女性に対して抱く嫌悪や恐怖の象徴と言えるでしょうし、この作品に関していえば例えばレイプした男とくっついて、その二人で母親を殺したうえで男との子どもを産みそこから転落していく少女とか(書いてみるとすごいな、ただ個人的にはこれは呪いの影響もあるのかな?と理解してますが)、男性が女性をモノのように殺し、そのあとにすることとか、そういう構図が批判の対象となっているのだと思います。女性の妊娠が呪いそのものであるかのように扱われているような描き方もあると思います。

 ただ、見ていて、正確には見る前からなんですけど、この話は「時代を超えて変わることなく女性に降りかかる悲劇・苦しみを呪いや恐怖という形で描いている」と読み解くこともできるよなぁと感じるんですよね。さきほどの少女も、母親がすぐ周囲の男性と関係を持つ・子どもへの過剰な干渉など母子家庭という環境、それ自体がこの男性中心社会では男にしがみついて生きるしかなかった女性の悲劇と言えますし、それこそこれだけで一本の映画が作れるのではないかと思います。女性の妊娠との恐怖とそれから来る殺人も女性の命さえ男性に握られている状況そのものを描いていると言えなくもないんですね。自分はこちらにひきつけてみる時間が多かったです。

 では、この作品はどっちなのか?というと「両方」なんじゃないかなと思います。制作陣がどう考えているかはまた別の話ですが、AかBかグレーゾーンかというよりも、AでもBでもある、っていうのが実際なんだろうなと思います。だからどっちに読み解くのが正しいのかというよりどちらもある部分をとらえているんでしょう。

 こういうものって結構あるなと思っていて、先日youtube見てたらローラさんが筋トレしている動画がおすすめにあがってきて見てみたんですけど、ローラさんのように均整の取れた方がどんなトレーニングをするのかというのは主に女性の健康や美にとってすごく参考になるでしょうが、同時に体のラインが見えやすく、胸の谷間が移りこみやすい服(これは動きやすさとか通気性のためでしょうが)を着て激しく動いている姿はセクシャルに見ようと思えばいくらでもできるもので、実際にそういうニュアンスの、おそらく男性かと思われるコメントもありました。多分こういうのも「両方」どっちでもあるんだと思うんですよね。明らかに性的に見ているコメントを消してもいないですし、きっとある程度チャンネルの運営サイドも理解しているんだと思います。(だからといって見ていいかっていうのはちょっと)

 で、きっとこれからはそういう「両方」であるということがあまりよしとされなくなって来るんだろうなぁと考えています。減点法的にAであることよりもBであるが批判されるので、おそらくBと取れる余地をできるだけなくすような必要が出てくるんだと思います。今回の例なら「男性向けの表現ではないということを強調する」とか「女性の主体的な表現である(ローラさんの動画がそういうことなんでしょう)ことを明確にする」とかなんだろうなぁと、そんなことを考えてました。きっと女性監督のJホラーがこれから増えてくるかもなぁと。自分もきっと女性がおぞましい目にあう作品を書く必要があることもあるでしょうから、色々考えなきゃだなぁと思っています。

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