第1章
第1話
何もすることがない。長期休みに意味があるのか。冷房にもお金がかかる。学食も無いから、食費もいつもよりはかかる。買い物に行かなければ食べ物もない。起きてから、10時間近くはおなじ事を思っている。そろそろ、買い物に行かなければ店が閉まってしまう。
「っし…いくか!」
自分を鼓舞しながら家を出た。もう、外は暗くなっていた。さすが、東京、夜でも暑い。一際明るい光を放つ、スーパーの前で何かを探しているおばあさんがいた。みんなが見ないふりをして通り過ぎていく。探しているうちにふらつき、人にぶつかりは謝っている。何を探しているのだろうか。それがどんなものであれ大切なものなのだろう。このまま、通り過ぎて夕食を手に入れるか、この人を助けるか。この人を助けたいが、本日何も食べていない。
「何かお探しですか?」
気がつくと声をかけているのは、俺の悪いところだ。声をかけてしまったからには、話を聞かなければ、話を聞くからには探さなければ。
「ペンダントを探しているのよ」
「ペンダントですか?」
「ええ、さっき、ここで落とした音がしたから、
多分ここのへんにあると思うんだけど」
探そうと動き出した瞬間。
足下で、ポッキーを割った音がした。
「え……」
恐る恐る足元を見ると綺麗に真っ二つに割れたペンダントが足元に転がっていた。
「あ〜あ、踏んじゃったね」
と、おばあさんは、少し困ったように笑った。
「ごめんなさい!」
反射的に謝ると、おばあさんは優しく笑った。
「大事よ」
「これ直して返しますね。
家は近いんですか?」
「そんなことしなくてもいいのに」
「いえ、俺のためにやらせてください」
数十分その話をしていると、周りの目も冷たくなり、店の電気も消え、俺の夕食は消えた。少し苛立ちを覚えた俺は、半ば強引に連絡先を交換した。おばあちゃんは、俺の手のひらに何かを置いた。それは、見なくても分かった。お金だ。
「いただけませんよ。これは」
「じゃあ、うちでご飯食べていかないかい?
大したものは作れんのだけど」
「え!?いいんですか?」
一瞬消えた、夕食の存在に、俺は心躍らせておばあさんの家へと向かった。
光を求めて 有澤 風香 @arisakahuuka
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