09 不思議こそが当たり前
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跳躍した二人の動きはウッドペッカーには微塵もとらえきれず――――瞬く間に闇へ消えた二人のいた場所を、彼女は呆然と見つめていた。
「なん、だ……?」
ややあってからようやく、呟く。
頭の中に真っ白なミルクをぶち撒けられたかのように思考がまとまらず、度数の高い酒を煽った後に似た安定しない浮遊感に抱かれていた。衝撃的なことが我が身に起こったと理解するがそれにしては妙に落ち着いていて、いつもの自分であれば誰かに語る前に自ら動くにも関わらず、なぜかぼんやりと座ったまま。
煉瓦色の三つ編みを指の腹で撫でる。
「…………変な、子供達……」
そもそも、なぜ子供が夜の森にいるのか。
確かにここは
あの子供達は狩猟
しばらく前から魔獣の動きがおかしいと組合も教団も騒いではいるが、だからと言ってあんな子供が素性を隠して行動するような生業の者には見えない。
ならば、何者なのか?
「はあ……眠い……」
有り得ない独り言が口をつく。
仲間が三人も拉致され、自分も命を落とすギリギリの手傷を負った。なのに目が覚めた自分は無傷であり、衣服も新品のよう。
なにもかもが不思議だが、なぜかそれがいまのウッドペッカーには当たり前のように感じられていた。
怪我で引退したとはいえ、元
――――こちらでお待ちください。ウッドペッカーお姉さま。
白い少女の声が頭の中に木霊する。それはどんな子守唄よりも心地良く心に沁み込み、いつの間にかウッドペッカーの瞼は落ちていた。
耳鳴りすら飲み込む夜のしじま。
この場だけぽっかりと世界から切り離されたよう。
自分でも気付かぬうちに、ウッドペッカーは夢の国へと旅立った。
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