004 平民の生活事情

ソルダージャ領首都に住む、ソルダージャ城下町トンボリ通りのガウルスとはオイラの事だ。


平民にはお貴族様のような姓が無い。だからオイラのように住んでいる場所の通り名や町名を名前に足す。

オイラはソルダージャ城下町の治安兵をやっている。治安兵だけど、お貴族様と共に戦に出る事もある。


「うぉら、お前等!そんな弱気じゃぁ、敵国のやつ等に負けちまうぞ!」


次期ご当主であるルドルフ様の声が響く。

オイラのような治安兵・警備兵相手に、訓練をつけてくれる。

身長2mをゆうに超え、大きな肩幅の熊のような体格をしている。戦斧を振るう姿に味方の指揮官様としてみれば力強い存在だ。


「今日のルドルフ様はおっがねーなー」


「確か、昨日皇都から帰っできたんでねーか?」


「見合いか」


「ルドルフ様、見合いまた駄目だっだか」


「あんだけ力強いお人なのによー」


「お貴族の細い娘さんじゃ、ルドルフ様みたいなデガイ男とあわないんじゃねーが?」


「普通のお貴族様と違って、頼りになるお貴族様なんのにな」


「ルドルフ様のお姉さんは、気立ての良い、美人な細い人だったなー」


「顔も髭モジャラだし、平民の娘子でも怖がっちまうしな」


オイラ達平民兵でワイワイ騒いでいると、ルドルフ様から声をかけられた。


「お前等、随分と暇そうだな」


ニヤリと笑うルドルフ様の前でオイラ達の声が止まった。

今日の訓練は物凄く激しかったのは言うまでも無い。ルドルフ様の訓練のもと、今日も訓練にいそしんだ。





「ガウルス、帰りに一杯でもやっていかんか?」


そう声をかけてきたのは、トンボリ通りを挟んだ向かい側に住んでいる男だ。オイラと同じように治安兵として働いている。


「いやー、かあちゃんがカンカンでさ。今日は素直に帰る事にするよ」


オイラの奥さんは、雑貨屋の娘だ。オイラの嫁になってくれたが、実家の雑貨屋を手伝いオイラの家の家計を助けてくれている。


「あー、お前さん所もうすぐ産まれるんだったか?」


「一ヶ月かからずに産まれるんじゃないかって話なんよ。ここ最近カリカリしててさ」


「なら、仕方ねーべ。奥さん大事にしてくんろ」


同僚の仲間と別れて帰宅する。


「おう、帰ったど~」


「あんさん、お帰り」


嫁であるかあちゃんが出迎えてくれる。そんな大きなお腹して、デカイ鍋もっとるし。


「かあちゃんよ、力仕事はオイラがやるよ」


鍋を無理やりひったくる。かあちゃんはビックリした様子をしつつも、微笑んでくれている。


「そうかい、じゃあお願いね。そこのテーブルに置いてくんろ」


かあちゃんはその後、様々な料理を作ってくれた。


「今日はルドルフ様がプンプンしててなー」


かあちゃんと夕飯しつつ、ルドルフ様の話をふってみる。


「首都の見合い駄目だったってね?」


かあちゃんが知ってるという事は、領内の女衆全員が知っててもおかしくない。


「ルドルフ様の見合いの話、駄目だとしか聞かないんだが、なんでだろな」


「そうねー、ザウルスには劣るけど稼ぎもある良い男だと思うよ」


かあちゃんのノロケに照れつつも、話を促してみた。


「性格も竹を割ったような、ナヨナヨしてないし。力強いし、しかもお貴族様だからねー。お貴族様の社会はわからないけど、もっと上のお偉いさんからルドルフ様が虐められてるじゃないの?」


オイラのかあちゃんの言葉だ。でも、大の大人同士の虐めあいっておかしい気がする。お貴族様の環境は、平民にはわからんものが色々あるんだろうな。





それから1ヶ月もしないうちに、おかあちゃんが娘を産んだ。オイラの第一子だ。めでたい。

そんな状況下の中、小競り合いへの出兵令が下った。相手は、隣国のロイゾルド王国の連中だ。




「あんさん、ケガないようにね」


娘を抱いた母ちゃんの言葉だ。


「心配すんな、今回はルドルフ様も一緒だし、戦に強い皇族のシルヴァ様もいる」#1


「でもなー‥‥」


心配するかあちゃんを抱き締める。

勿論、かあちゃんが抱いてる娘も一緒にだ。


「オイラが今まで戦でケガした事あったか?ルドルフ様もおるし、心配すんなや」




オイラや治安兵、警備兵の連中らと国境近くまで動く。相変わらず、ソルダージャにある砦はボロいなー。


ルドルフ様と、中央から来た兵群の人達が話してるな。


「おーい、ザウルス、サンチェス」


ルドルフ様から声が係ったので赴いてみると、強い目線の偉そうな方がおった。



「シルヴァレッタ様、こいつらは平民ですが、領内を熟知し、ロイゾルド王国を熟知している者達です。平民ゆえ言葉遣いは不遜あるかもしれませんが、領内地域の情報、ロイゾルド王国への気配は抜群です。私は別動隊をひきゆるゆえ、領内に困った事があれば、この者達にお尋ね下さい」


そういって、ルドルフ様と地元連中はどっかにいってしまった。オイラが一緒にいる連中は、首都の格好いい鎧を来た、いかにもお貴族様ばかりである。




「この領内の砦は、品がないな」


ルドルフ様と別れて数時間後。金髪なとても選らそうな人から話をふられた。


トンボリ通り向かいの仲間であるサンチェスと顔を見合わせつつ、答えてみた。


「へぇ、お貴族様方の事はわかりませんが、武具・防具に食料に、薪代でルドルフ様のお小遣いは無いに等しいらしいですわ」


平民の間では有名な話だ。武具、防具、砦の食料や暖衣についやし、お見合い女性への花すら買えない。それがルドルフ様だ。


「ほう。ソナタから見て、この砦はボロくないのか?」


偉そうなお貴族様からの質問だ。


「いやー、日々の訓練や、武具の確認でそこまで気がまわりません。オイラの住む家は隙間風が吹きますが、この砦は隙間風ないぶん大助かりです。武具はもっと欲しいものですがねー」


こんな要望を加えたのにも関わらず、お貴族様は優しかった。


「そうか」


それからお偉いお貴族様の号令で、砦から出兵した。

銀色に輝く、お貴族様な騎士の中で、オイラとサンチェスが同軍している。何かの間違えなのだうな。


「そこの二人、ロイゾルド王国の軍隊はどこに潜んでいると思う?」


いかにも偉そうなお貴族様から質問を受けた。サンチェスと目線を合わせながら回答する。


「あいつらは、丘の上に従軍するので、あちらの方向に1km程離れたところに集まってると思います」


サンチェスも同じ意見であり、頷いている。


「誰か、隠れるのがうまい奴を選んで物見してくれ」



その15分後。


「シルヴァレッタ様、ここから北北西1.1km地点にて、ロイゾルド軍1千を確認いたしました」


北北西のあそこの丘か~と脳内地図を補完する。


「ほう。ならばソルダージャ領民の二人よ、奇襲をかけるにふさわしい道を教えろ」


奇襲?相手に見つからないように勧める道?

サンチェスと顔を見合わすが、オイラとの意見と同じようだ。


「お貴族様、奇襲として完全に隠れるような道はございません。それに敵国の視察兵も放たれておりますので、ここに居続けるのは悪手です」


お偉そうなお貴族様の視線が痛い。

お貴族様はまだしも、周りの騎士たちが怖いぞ。


「ほむ。ロイゾルド軍をせん滅するという意味では、どのような進軍が望ましいか」


隣国の奴らをやっつけるという意味であれば、すんなり意見が出せる。


「矢盾を十分に用意していればですが、ここから北北東に向かいつつ、谷間を挟んで・・・」


周りの領地を説明するとお貴族様は頷いて下さった。


「我軍はこれより、ロイゾルド王国軍と接戦を行う!各自、用意はいいか!」


お偉そうなお貴族様の声の元、進軍した。






幸いにして、オイラもサンチェスも大きな怪我はなかった。

それどころか、お偉そうなお貴族様の成果により、ロイゾルド王国軍の撤退まで追い込めたらしい。

オイラ達は、目の前の敵兵をやっつけただけだが。


ルドルフ様を通して、お偉そうな貴族様から報奨金をもらった。

おかげで隙間風が吹く、オイラの家の建て直しができそうだ。


ルドルフ様からもお褒めの言葉を頂いた。


「お前達のお掛けで、俺の評判が良くなった。これで婚活も・・・」



そんなルドルフ様の話を、妻であるかあちゃんに話すと・・・。



「お気の毒かもしれないわね。ルドルフ様は素敵なのだけど、あの方の雰囲気についていけないわ」


スマン、ルドルフ様。おかぁちゃんの意見にオイラも納得だ。

お見合にしか目線がないルドルフ様は怖いよ。



お偉そうなお貴族様との小競り合いから数年が経過した。

ルドルフ様のお姉さんは何年も前に結婚したのに、ルドルフ様の婚姻はまだ決まっていない。

領民からも様々な応援の声が聞こえる。



そんなある日。

何故か領民の間にも、ルドルフ様のお見合いの話が知れ渡った。

いい加減、NGばかりなルドルフ様には結婚してもらいたいのが領民の意見だ。

少し心配なのが、お次のお見合い手が、ルドルフ様の半分の年齢のお貴族様らしい。


30歳のルドルフ様に対して、15歳のお貴族の娘さん。

とにかく、ルドルフ様には婚姻を成功してもらいたく、領民一同かけあったもんである。

お見合は昨日。領民一同、また商家も、貴族階級である騎士家も、領地の皆がルドルフ様のお見合いが成功するよう活動した。一人のメイドが知りえた情報が、1刻後には、領内全域に伝わるほどには。


さぁ、ルドルフ様。貴方様の惚れ具合、貴方様を慕う領民全てが理解しております。

お相手は侯爵家様らしいですが、我が領地の皆がルドルフ様の婚活をフォローいたしましょう。



今後もルドルフ様のご活躍を期待しております。

下っ端平民なオイラ、ガウルスの意見はここで終了する。





望まくは、ルドルフ様が結婚できる事を!!!

ソルダージャ領首都ソルダージャ城下町トンボリ通りのガウルス。


Fin












以下、作者の後書き


駄作を閲覧頂き、ありがとうございました。

これにて、ガルヴァッサ帝国シリーズは一時終了です。

回収していないプロット等は多大にあります。でも、伸ばしに伸ばしたこのシリーズの評価がわからなく、今後の執筆活動は未定です。プロット上では、今後も様々な事が起こるのですが、需要と供給ですね()


4作目ではありますが、第一話のルドルフの伏線で表に出た内容は7割でしょうか。ガルヴァッサ帝国シリーズとしては、一度終わりにさせいて頂きます。


問題なのが、読者の皆様方を面白くさせる展開を記載できるかどうか。

自身の執筆能力が低いために、今後の内容は難しいかと勝手に思ってます。様々な伏線は眠ってるけど。

今後、表にでる機会を頂けると嬉しく思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ガルヴァッサ帝国・婚活物語 Rooy @vihi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ