第2話 準備を始める魔王様達

ジャーマクスとグレア様が仲直りをした後、俺たちはこれからのことについて話し合いをしていた。何故かセレナ姫も、話し合いに参加しながら…。





「それでグレア様はセレナ姫をどこで面倒見るつもりなんですか?」


それを聞いてグレア様の隣に座っていたセレナが


「私のことを姫と呼ぶのはやめてもらえませんか?私皆から姫、姫と言われるのはうんざりりなのです。せめてここでは姫というのは忘れたいのです」


なるほどセレナも人間界ではずっと気を張り詰めて姫を演じてきたのだろう。ならば攫われてる今くらいは姫を演じることもないだろう。様付けしないと拗ねるうちの魔王とはえらい違いだな。


「ああ、わかったこれからはセレナと呼ばせてもらう。2人も良いですよね?」


2人は戸惑いながらも頷いた。


「って、我への質問に口を挟むな!

──それで、ゼシルの質問のことじゃが我の部屋で世話しようと思うんじゃが良いじゃろ?」


「え?魔王様前魔犬を飼った時自分は可愛がるだけで俺に世話させてばっかりだったでしょ。ちゃんと世話できるんですか?」


俺が答えるとグレア様が赤面しながら


「い、いつの話をしてるのじゃ!ワシだって立派な魔王なんだからセレナの1人くらい世話できるわ!」


「というか一応人質なんだからそれらしい扱いしないとまずいんじゃねえのか?」


確かに魔王と人質が同じ部屋で生活するとなるとそれを見た城の者達がなんて言うかわからないな。


「確かにそうだな、では牢と必要最低限の物は用意しますので魔王様、後で連れて行ってください」


「ちょ、ちょっと待て!お前たちこんな少女を牢に入れて閉じ込めるなんてできるか!?我にはそんなことできんぞ!」


セレナを見ると悲しそうに眉を曲げていた。こ、これは良心が痛むな…。仕方ない…。


「な、ならば魔王城の職員寮に部屋を用意します。ただし鍵は付けさせてもらいますからね」


グレア様は渋々といったようで


「まぁ、それなら…セレナもそれで良いかの?」


と聞くとセレナは笑顔で頷き、グレア様は満足げに頷いた。

それを見ていたジャーマクスは小声で


「なんでグレアのやつあんなにセレナに甘いんだ?」


「さっきお前に怒られた時に庇ってくれたと思ってるんだろ。あの人自分に優しい人にはすぐ懐くからな」


「魔王が姫に懐くなよ…先代のジジイが聞いたら情けなくて泣くぞ」


「まあ、害はないからこのままで良いんじゃないか?」


俺たちがひそひそ話しているのに気づいたのかグレア様が俺に


「そういえばゼシル、我が姫を攫ったこと、エリアボス達に伝えといたか?」


「いえ、まだ伝えてませんよ?伝えたら叱られるの確実じゃないですか。こういうことって魔王のグレア様がやることでしょう?言ってきてくださいよ」


「わ、我だってもう叱られとうない!命令じゃゼシル、早よ行ってこい!」


こんの魔王ー!自分が攫ったくせにそれを部下に報告するのを嫌がるなんて…ジャーマクスに怒られたことがよっぽどこたえたな。しょうがない、また泣かれるのも面倒だ。


「はぁ…わかりましたよ。じゃあ、魔石を借りてきますので会議続けといてくださいね。あとは頼むぞジャーマクス」


「おう、任された」


そう言って大会議室から俺は出た。俺たち魔王軍の大半は魔石を使いたいときは、通信系やその他様々な魔石を管理してる魔石倉庫に行き、そこで使いたい魔石を借りてを使っている。各エリアのエリアボスの通信魔石もそこで管理されているので取り敢えず俺はそこへ向かった。







──魔石倉庫着き俺は扉を開け


「すみません、ゼシルだが音声通信の魔石の貸出を頼めるか?」


と、受付のラミアに頼むと


「あ、こんにちはゼシルさん!どのエリアの魔石を御所望ですか?」


「火山エリア以外のエリアボスが所持している魔石と接続できる魔石を頼む」


「了解です、では少々お待ちください!」


そう言って下半身の蛇の体をくねらせながら倉庫の奥へ入って行った。


「あ、ゼシル殿ではないですか!こんなところで何をなされてるのですか?」


ラミアが奥に行った後不意に後ろから声をかけられた。


「ん、誰だ?ってああ、ジェマか。どうしたこんなところで」


尻尾を振りながら俺に話しかけてきた青髪の獣人は魔王城の守護隊のボスを務めているメスのフェンリルでうちの城のモフモフ要員だ。


「いやー自分はまたヒールの魔石を借りにきたのですよ。自分で治療するより早いですのでね」


「お前くらいだぞ、ヒールみたいな初級の魔法を覚えてないやつ。借りるのも面倒だろ?いい加減覚えたほうがいいんじゃないのか?」


「自分魔力もあまりないですし、筋力に力を注いだほうが効率が良いのですよ。魔法覚えるほど知力もありませんしね」


そういえばそうだった。こいつは結構のバカで魔法覚えるほど知力もあまり無いんだった。だけどこいつ戦場に立ってるとき腰に魔石をゴロゴロひっさげてるの見苦しいんだよなあ。なんとかならんもうだろうか。


「そういえばさっき通信用の魔石をたくさん借りようとしてましたよね?何かあったんですか?」


「ああ、見ていたのか。各エリアボスの通信石を借りていたんだ」


「エリアボス様の魔石?やはり何かあったんですね。」


こいつは守護隊のボスだし、早い段階で知らせておいた方が良いだろうし話しておくか。


「ここだけの話実はな、グレア様が人間界の姫をさらったんだ。それで各エリアボスに報告しとこうと思ってな」


俺が小声でジェマに話すとジェマが大声で


「ひ、姫を攫った!?ということは始まるのですか!人間との戦いが!」


このバカ!なんのために小声で話したと思ってんだ!倉庫内の魔物の視線がジェマに集まると恥ずかしそうにジェマが


「す、すみません…つい興奮しちゃって…」


「ほんとだよバカ!守護隊のボスだからお前には先に話したんだぞ!後日グレア様からお知らせがあると思うからそれまで他のやつに話すなよ?」


それを聞いたジェマは笑顔で俺に敬礼をしながら


「了解です!では自分今から戦いに向けて訓練してまいります!あ、すみません受付さん、筋力増強の魔石と、耐久増加の魔石も追加で貸してください!」


「いいですけどジェマさんもう魔石壊さないでくださいよ?もうあまり在庫がないんですから…」


新しく魔石を借りようとしてるジェマを尻目に自分の頼んだ魔石が来るのを待っていると倉庫の奥から先ほどのラミアが出てきた。


「すみませんお待たせしました。何しろ数が多くて…。それでは貸出記録帳にサインをお願いします」


「ああ、わかった」


俺はペンをうけとりサインをするとラミアが


「では今回お貸しする魔石の確認をいたします。森林、海洋、冥界、天空山、機械、魔界エリアのエリアボス様が所持してる魔石と接続されてる魔石で間違いありませんか?」


「ああ、間違いないよ」


俺がそういうとラミアは俺に魔石の入った袋を手渡し


「返却期間は1日となっていますのでそれまでには返されるようにお願いします!」


「ああ、わかったありがとう」


そう言って俺は魔石倉庫を後にした。




















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ダンジョンの準備もせずに姫をさらうのはやめてください! @baito9134

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