第10話「桃太郎鬼達と海賊退治」

 「さて早速で悪いがお前らには働いてもらうぞ」


桃太郎は鬼達にった。


EXTRAエクストラ STAGEステージだ!!」


温羅うらの女房そしてチビの母たる、阿曽あそひめが鬼達をたずさええ聞く。

「で主様ぬしさまは我らに何をさせるとうのだ?」


桃太郎は

「まずお前らには[船]をくれてやる、海賊退治だ!」


桃太郎は鬼達を仲間に引き入れるにあたり、鬼が襲った家畜を弁済べんさいし、ぬれぎぬである海賊行為の汚名を返上してやろうと考えていた。


鬼達は気にも止めないだかろうと桃太郎が気にくわないのだ。


阿曽媛はいぶかしがる。

「主様は我らを怖がらんのか?」


「かーちゃん、桃太郎はチビに食べ物くれるぞ、かーちゃんももらえるぞ!」

そう言うとチビは目を輝かせ桃太郎の方を見る。


「ああ、悪さ…イヤ、オレの言う事に従えばいくらでもくれてやる」

桃太郎は知っていた、鬼達には善悪と言う概念がいねんが無い、だからオレの方が強いから言う事をきけ、の方が伝わるのだ。


「嘘だろ…」

「そんな事ある訳が」

「でも温羅ん所のちびっころが食いもんくれるって」

高田媛たかたひめがか?」


鬼達が桃太郎の言葉にざわついている。


「桃太郎さん鬼達とっても分かりやすいワン」

「この話し、一時はどうなるかと思いましたが上手く行きそうですペン」

「そうでな」


ところでやれそうか猿?」

桃太郎が猿の語尾の変化を気にも止めず何やらを確認している。

「任せるでおサル!」


チビに引かれ凧が上がる、猿がそれに吊るされて周囲を見渡す、まず眼下がんかに桃太郎達の船団がある。


「阿曽媛!どうです!」

「悪くない、かぶともこの長槍ながやりも」


桃太郎は讃岐の国の職人達に鬼の冑と10メールはあろうかと言う鉄の長槍を用意し、槍兵そうへいぎ手の二鬼一対にきいっついで15メートルはある鬼サイズのボート、伝馬船てんませんへと乗せていた。


「桃太郎さーん!いたでおサルーー!!」


猿が目標をとらえた矢倉やぐらった大型の和船、海賊の安宅舟あたけぶねだ、桃太郎は阿曽媛の船ともう一艘そうに指示を出す。


「いきますぜ阿曽媛!」

「おおよ!我ら本物鬼の力を鬼とうわさされる海賊共に見せつけてやろうぞ!」


漕ぎ手が船のかいを鬼の全力で漕ぐ!船は船主を浮かせる程の速さで波間を駆ける!


「横につけろーーーーー!!」

「ふりおろせーーーーーーー!!!!」


おそらく海賊達は何が起こったか解らなかったであろう、安宅舟に横付けした二艘の伝馬船から巨大な二本の槍が船に叩きつけられた時に、鬼が振るったその槍が海賊達の船体を真っ二つにした時に。


阿曽媛の声を聞いた時には既に戦いは終わっていたのだから。



この物語はフィクションです実在の桃太郎、鬼達、伝馬船と安宅舟の時代考証とは一切関係ありません。

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みによむ・桃太郎鬼を飼う 山岡咲美 @sakumi

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