第9話「桃太郎鬼と鬼退治(3)」

 「あっ、かーちゃん!」

チビはその鬼を見るなにそう言った。


オレ達は讃岐の国から小舟に乗り換え女木島めぎじまへと向かう、女木島は最近になって鬼が現れ海賊行為を働いていると言う、そして今やその島のことを皆こう呼んだ[鬼ヶ島]と。


「桃太郎、鬼退治だ!」


イヤちょっと待て!

「チビ、あの鬼の事かーちゃんって呼んだか?」

チビの言葉に桃太郎は戸惑った、山腹さんぷく洞窟どうくつに鬼達はきょかまえ、桃太郎達が来るとそれぞれに武器を手にし集まったが、持ち運びを優先したのであろう随分と貧相に見えたし鬼達の数も3から4家族が隠れすむと言ったところだった。


そしてその鬼達を後ろにしたがえその鬼の女が立っていた。(4メートルくらいか?)


「そうだあの前にいるのがかーちゃん、うしろのは寅ちゃんとそのとーちゃんとかーちゃん、あと辰子と辰子のねーちゃん、あと近所の知らんおっちゃんとおばちゃんだ」


そう言うとチビは剣を構える。


「よーし鬼退治だーーーー!」


「!」

「!」

「!」

「!」

「!!!!」


「ちょっとったーーーーーーー!!!!」


犬猿雉いぬさるペンギン桃太郎は全員で突っ込みを入れた!


「おいチビちょっと待て、お母さんと知り合いだろ」

「そうだけど何?」

「オマエ何とも思わないのか?」

「ちび、桃太郎の言うことたまに分かんない」

(分からんのはこっちだ)

桃太郎は鬼の思考はまだまだ理解をえて来やがると、思い知らされながらコノ原状と鬼の思考をみはじめる。


(こいつら鬼ノ城きのじようの生き残りだな、この人数、海賊は無理だ、村々で聞いた話しだと家畜の被害があったとか…)


「やってみるか?」


桃太郎はつるぎと大地へと突き立て鬼達に口上こうじょうべる。


「我こそは孝霊天皇こうれいてんのうが第2皇子にして四道将軍よんどうしようぐんが一人、西道将軍せいどうしょうぐん吉備津彦命くびつひこのみことなり」

鬼達はその言葉のほとんどを理解しては居なかったが自分達に何か話そうとしているのは理解できた、桃太郎は続ける。


「そなたらは海で人を襲ったか?」

チビの母が答える

「その様な事しておらん!」

桃太郎は更に続ける。

「そなたらはこの島で家畜を襲ったか?」

ちびの母が答える。

「我々は家畜を襲った!」

桃太郎は少し考えて続ける。


「よく聞け鬼共!そなたらが我に従い我と供に生きるならばこの吉備津彦命が日々の糧をそなたらにくれてやる、従わぬと言うならば温羅うらすら倒す我等がそなたらを根絶やしにしてくれようぞ!」


そして温羅の女房、つまりチビの母は桃太郎に従った、バトル展開は無しだ、誰の血も流れ無い。



この物語はフィクションです実在の桃太郎、鬼とは一切関係ありません。

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