番外編 デートなのか? 二人
すっかり仲良しになった(?)私と深見くん。
深見くんが懸賞で遊園地の一日乗り放題パスポートチケットが当たったらしい。
それで誘われた私は、深見くんと二人きりで遊園地に行くことになりました。
二人きりって初めてで、ちょっと意識しちゃうかも?
友達グループで遊んできた私と深見くん。二人だけのお出掛けって、……ハードル高いよね。
見られた人に誤解されてデートとか思われたらめんどいよね。
あっ――、なぜ断らなかったって?
す、好きだからとか誘われてめっちゃ嬉しいからとかで、行くんじゃないもん。
ただ特にその日用事がなかったからだも〜ん。
深見くんとはお友達だもの。
やってきました約束の日。
学校の休日に、ドキドキしながら遊園地へと向かう私。
い、一応はお洒落をしてきましたよ。
ちなみに私と深見くんはまだ恋人同士ではありません。
だけど、学年男子のなかでは一番人気のイケメン
彼がいかにヘタレでドジでケチだろうが、見た目は爽やかイケメンな彼の横に立つのに見劣りするわけにはいきません。
正直、気合を入れてきました。
私なりに。
……私のクローゼットから選んだ精一杯のコーディネートだから、意識高い系女子からしたら普通かもだけど。
秘かに女子みんなが深見くんに、お近づきになりたがっているのです。
深見くんの意外な一面を知るたびに、その女子の数が減ろうとも、未だに深見くんは人気があるのですから。
遊園地の出入り口の門扉の前に深見くん発見!
クールな雰囲気、……なのにどこか優しげな柔らかい顔つきに甘い目元、口数が少ないミステリアスな感じの深見くんは色気すら漂っています。
今日も無駄にキマってる〜。
道行く女子のグループが深見くんを見て「格好いーい」とか言って通り過ぎていく。
うんうん。見てるだけだと深見くんって格好いいよ。
「おはよ〜! 深見くん」
「ああ、おはよ、影浦さん」
なんかジロジロ見られてる?
「今日、可愛いね」
「はあっ!?」
「いつも可愛いけど。……今日はさらに可愛いよ、影浦さん」
「えっ! えっ? えぇ――っ!?」
「なんか俺、変なこと言った?」
「う、ううん。……ありがと、褒めてくれて嬉しい」
うわあ、うわあ〜っ!
深見くんってこんなキザなこと、言えちゃう男子だったんだっ。
きゃあ、きゃ〜! 私のこと、可愛いって言った!
遊園地に入ってすぐに、深見くんが腹減ったからポップコーンを買いに行くと言い出しました。
「ごめん。緊張しちゃって、昨日の昼から何も食べてなかったんだ。腹減りすぎて横っ腹が痛い」
「へっ? な、なんで緊張したの? 大丈夫?」
「そ、そりゃあ、影浦さんとデート出来るんだから。……嬉しすぎてさ。ちょっとなんか食えば腹痛が治まると思うから」
「あ、ああ、そうなんだ(これやっぱりデートなんだ〜)」
「影浦さんはイチゴ味で良い?」
「えっ、私は今はポップコーンは大丈夫かなあ。いら……な」
「そこのベンチで待ってて〜」
「――いよ。『いらないよ〜』って言ってる途中で深見くん行っちゃったよ」
私はちょっとドキドキ。
だって告白されてからというもの、深見くんからたま〜に「好きだよ」って甘い言葉やら「可愛い」とかやら言われるようになった。
深見くん、そんな時も相変わらず顔はクールでポーカーフェイスなままなんだけど、ちょぉーっとだけ照れてるみたいに私には見えるんだ。
「よぉ、影浦じゃね?」
「影浦ちゃんだあ、ヤッホー!」
「ああっ、宮下くん本田くん」
声を掛けられて、びっくりする。
偶然ってあるんだ〜。
「誰と来てんの?」
「えっ、えーっと。……深見くん」
「深見かよっ。だからアイツ、今日誘ったら断ったんか」
宮下くんと本田くんは私の姿を上から下まで見てくる。
なんか恥ずい。
「デート? デート?」
「う……ん」
「くっそぉっ! 深見め、俺たちを差し置いて影浦とデートなんてしやがって。羨まし〜い」
「だから影浦ちゃんお洒落してんだ」
「今日、可愛いよな」
「影浦ちゃん、可愛〜い」
そ、そんなことないです。
いつもは制服姿ですから、目新しいだけですよ。
「ちょっと横座っていい?」
「い、いいよ」
私を挟むように宮下くんと本田くんがベンチに座ってくる。
「で、深見は?」
「ポップコーン買いに行ってる」
「ふうん。そういや深見ってつくづく変わってる奴だよねぇ」
「この間、俺達がカレーパン分けてくれって深見にねだったらさ、パンの上のトコしかくんねえの。具無しだぜ、具無し」
――えっ?
「ケチ〜って言ったらアイツなんて言ったと思う?」
あっ、えっ、それ私もあった。
感じる
「『カレーパンもクリームパンも中身より周りが美味いんだぜ』っていうわけ」
「えっ、深見くんってパンは耳派の
「かもねえ。さらには『ケチとか言うならもういいっ。お前らには中身しかやらねえ』って言ったのには笑ったよね〜」
「で、パンの具と下側の生地とをくれたんだぜ」
「ぷはははっ。影浦ちゃん、笑えるっしょ?」
……ケチじゃなかった。
深見くんは深見くんが美味しいって思ってる方を私にくれたんだ。
どうしよう。
深見くんに言ったわけじゃないけど、なんかすごい悪いことした気分。
深見くん、早く帰って来て。
あなたに謝りたいから。
「ってか深見、遅くね?」
「影浦ちゃんを待たせすぎ。……ってあれなんだろぉ?」
「深見くん?」
すっごい騒がしい集団がこちらにやって来る〜。
「うわああぁぁぁ――っ!!」
先頭には猛ダッシュで走る深見くん、大勢の子供達とガチョウ軍団が深見くんを追いかけています。
「仮面ラ○ダーだ〜!」
「待って〜!」
「握手して〜!」
一同、絶叫の嵐です。
「うわぁぁぁー!」
深見くんは私の前も通り過ぎていく〜。
「そういや今期の仮面ラ○ダーの主人公って深見にそっくりだったよな」
「そ、そうなの?」
「アイツ、ちびっ子にモテモテだな〜」
ガチョウはどこから?
深見くんのポップコーンを狙っているの?
「影浦ちゃん、俺達とアトラクション乗ろうぜ」
「あれはしばらく戻って来ないと思うよ」
呆気にとらわれた私たち。
あー、深見くんはないわ。
いや、ありかも?
ちびっ子と動物に好かれるだなんて、きっと悪い人じゃない。
深見くんは私の恋愛対象になった。
「ううん。私、ここで深見くんを待つよ。約束したから」
「まっ、気が変わったらスマホに連絡して〜」
「影浦ちゃん、健気〜。深見が羨まし〜い」
じゃあね〜と言って宮下くんと本田くんは去って行く。
私は深見くんが戻るまで、深見くんのことばかり考えていた。
……告白の返事、訂正しようかな。
あのね――。
深見くんとは、友達以上でも良いかもとか思ったんだ〜、私。
今日はまだ内緒にするぅ。
いつか言えたら良いけどね。
お・し・ま・い♪
ポーカーフェイス深見くん!! 天雪桃那花(あまゆきもなか) @MOMOMOCHIHARE
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