第2話 不思議な味

買い物に夢中のタクミ。

目の前にいた男性に気づかず、思い切りぶつかる。

男性「ちょっと、どこ見てんのよ!」

タクミ「すいません。お怪我はありませんか?」

タクミの紳士的なふるまい&童顔だがイケメンな顔立ちにノックアウトされる男性。

男性「あなた、あまり見ない顔ね。」

タクミ「この前3丁目に引っ越してきたばかりなんです。」

男性「そうなの。私はこの近くで飲み屋のママをやってるのよ。今度遊びにいらっしゃい。」

タクミ「そうなんですか!実は僕も親友と一緒にカフェをやっているんです。」

チラシを差し出すタクミ。

タクミ「この前始めたばかりなんですけど、もしよかったらいらしてみてください。」

男性「あら、いいわね。じゃあ、あなたも私のお店に来て。そうしたら、私もあなたの所に行くわ。」

タクミ「分かりました。今度伺わせていただきます。」

野菜売り場から離れる二人。

タクミ「面倒くせぇ約束しちゃったな…。まあ、新しい獲物だから大事にしないと。」


深夜の飲み屋街。

酔っぱらっているサラリーマンやカップルなどで賑わっている。

その中でひっそりと営業しているスナック「ビオラ」。

2人の男性が入って行く。

タクミ「こんばんはぁ。ママさん、約束通り来ましたよ。」

訪れたのはタクミとヒロキ。

ママ「いらっしゃい。あら、お友達の方も随分イイ男ねぇ。」

イケメン2人を前にして、気前よく料理やお酒をふるまうママ。

話が弾み、気づくと既に閉店時間を過ぎていた。

ヒロキ「もうこんな時間か。ママさん、そろそろ僕たち帰りますね。」

ママ「そう?他のお客さんもいなし、もうちょっといてくれてもいいわよ?」

タクミ「この続きは俺らの店でしましょう。待ってます。」

支払いを済ませ、スナックを後にする2人。

ママ「あんな中身まで出来あがってるいい子たちが、今どきまだいるとはね…」

飲み屋街を歩く2人。

タクミ「さっきのママ、どう思った?」

ヒロキ「今まで出会ったことないタイプだな。どうなるか楽しみだ。」

嬉しそうな2人。

2人とすれ違った酔っぱらいのサラリーマン、ふと我に返る。

サラリーマン「…今の何語だ?」

振り返るが、2人の姿は既に消えていた。


スナック「ビオラ」の定休日。

女友達を誘ってタクミたちのカフェへ向かうママ。

ママ「確かこの辺りのはずなんだけど…」

辺りを見回すと、ある一軒家の前で掃き掃除している男性を見つける。

ママ「こんにちは、今度は私が来たわよ。」

作業の手を止め、眩しそうにママたちを見るヒロキ。

ヒロキ「ああ、ママさん。お久しぶりです。どうぞ中へお入りください。」

2人を案内するヒロキ。

2人を席へ座らせると、厨房の方へ戻ろうとする。

ママ「ちょっと、メニューとかないの?」

ヒロキ「すいません、当店は一種類のセットメニューしかないんです。」

ママ「何のセットなのかも教えてもらえないの?」

ヒロキ「僕たちを信じてください。」

いじわるそうに笑いながら言うヒロキ。

ママ「わかったわ。そのかわり、最高においしいものをお願い。」

ヒロキ「かしこまりました。」

今度こそ厨房に戻っていくヒロキ。

女友達「話には聞いていたけど、あんなイケメンがこの世に存在していたなんて…」

ママ「でしょ?でも私は、タクミ君の方がタイプだなぁ。」

女友達「タクミ君って?」

厨房にまで聞こえる2人の声。

ヒロキ「あのママ、お前のことがタイプだって。」

タクミ「俺も多分、俺の好きなタイプはママだと思う。」


”インスタ映え”しそうな料理が2人の前に並ぶ。

味も最高で、全く飽きが来ない。

食後のコーヒーを運んでくるヒロキ。

ヒロキ「満足していただけましたでしょうか。」

ママ「とってもおいしかったし、見た目も最高だったわ。」

女友達「ところで、このセットはおいくらなんですか?」

ヒロキ「お代は結構です。」

ママ「えっ?それじゃあ商売にならないでしょ?」

女友達「そうですよ。…あ、もしかして、私たち体験モニターみたいな感じなんですか?タダでいいから宣伝してくれみたいな。」

ヒロキ「いえ、本当に何もいらないんです。ただ…」

ママ・女友達「ただ?」

2人の意識が徐々に薄れていく。

ママの薄れた視界に、タクミの足が現れる。

タクミ「僕があなたの”体験モニター”になりたいんですよ。」


飲み屋街のスナック「ビオラ」。

大勢の野次馬をかき分けて進む新人刑事、沖田。

鑑識A「今回も男女2人です。」

床に寝かされている2人の死体は、前回の2人に比べると血色がよかった。

沖田「今回も同じ犯人ですかね?」

先輩刑事「おそらくな。解剖してみないとよくわからないらしいが、前回同様血が抜かれているそうだ。」

沖田「気味の悪い犯人ですね。早く捕まえないと、またやるかも…」


大きな鍋の中を見つめるタクミとヒロキ。

ヒロキ「今回は少ないな。」

タクミ「しょうがねえよ。この前抜きすぎて危うくバレるところだったんだから。」

ヒロキ「でもこれだけあれば、しばらくはもつよな?」

タクミ「ああ。…できた。味見してみるか?」

鍋の中身を味見する2人。

ヒロキ「やっぱりこれ、お前の好きな味だな。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

(仮)フラワーカフェH2O ダイオウグソク @daiougusoku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ