(仮)フラワーカフェH2O
ダイオウグソク
第1話 始まりの味
大きな通りの広い歩道をたくさんの人が行き交う。
2人の男性の足元。
1人はしっかり歩いていて、もう1人はその人に絡んでいるような足取り。
もう一度たくさんの行き交う人々。
さっきの2人の後ろ姿。絡んでいた男性はもう一人の肩に腕を回している。
ヒロキ「おい、ちゃんと歩けよ。」
タクミ「無理だろ。これからの生活が楽しみ過ぎるんだから。」
2人は大勢の中でも、イケメン過ぎて目立ってしまっている。
すれ違う女性たちは、二度見したり、見とれたり。
彼らは通りの一角にある不動産事務所に入って行く。
不動産事務所の従業員Aが、2人をとある一軒家に案内する。
子供のようにはしゃいでるタクミ。
ゆっくりと部屋の中を見て回るヒロキ。
2人同時に
「ここにします。」
笑顔で一礼する不動産事務所の従業員A。
1ヶ月後。
あの不動産事務所を訪れた2人。
事務所内にいる全女性の注目の的になりながら従業員Aを探す2人。
2人に気付いた従業員A。
ヒロキ「今度、あそこでお店を始めることにしたんです。」
チラシを手渡すヒロキ。
タクミ「良かったら、彼女さんと一緒に来てください。」
ぎょっとした顔をする従業員A。
従業員A「どうして彼女がいるってわかったんですか?」
タクミ「なんとなくですよ。」
ぎこちないウインクをするタクミ。
ヒロキ「慣れてないことすんなよ。キモいぞ。」
タクミ「そんなこと言って、本当は俺のことが大好きなくせに。」
2人のやり取りに見とれる女性陣。
こいつらカップルなんじゃないかと訝しげに見ているおじさんたち。
ヒロキ「では、失礼します。」
2人が出ていくと、爽やかな風が吹き抜ける。
タクミ「あんだけ匂いさせといて、よく『どうしてわかったんですか
?』なんて言えるよな。」
ヒロキ「まあ、獲物(ターゲット)が増えたんだから、よかったんじゃね?」
仕事を終えて、帰ろうとしている従業員A。
彼のスマートフォンの着信音が鳴る。
従業員A「もしもし…ああ、ユキか。…うん、今事務所を出るところ。
…えっ、今夜?…そうだな、どこに行こうか…」
ふとデスクの上に置かれているチラシが目にとまる。
オープンは昨日の日付。
従業員A「新しい店、行ってみないか?」
閑静な住宅街。
その中にあるまさに隠れ家的な店。
一見すると普通の住宅のように見える。
従業員A「こんばんは~」
扉を開けると、広々とした空間が広がる。
ゆったりとテーブルと椅子が配置されており、やわらかいクリーム色の壁が暖かい雰囲気を醸し出している。
店内の様々なところに置かれている植物からは、体によさそうなイオンが出ている様子。
ヒロキ「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。」
案内されたのは窓側の席。
きれいに手入れされている裏庭を見渡すことが出来る。
従業員A「1カ月くらいで、お庭までこんなにきれいにされるとは…」
ヒロキ「ありがとうございます。では、ごゆっくり。」
厨房の方へ戻っていくヒロキ。
Aの彼女「ねえ、なんであの人あんなにイケメンなの!?」
従業員A「それより、注文聞いてこなかったよな?」
2人の前に出される料理は、見た目も味も最高なものばかり。
どうやらセットメニューのようで、最後のデザートを運んでくるヒロキ。
従業員A「あの、このセットって、いくらぐらいするんですか?」
恐る恐る尋ねる従業員A。
あまりの品数に、ものすごい値段なのではないかと心配している様子。
ヒロキ「お代は結構です。」
従業員A「え?…でも、そんなわけにはいかないでしょ?」
ヒロキ「本当に大丈夫なんです。ただ…」
A・彼女「ただ?」
話の途中で猛烈な眠気に襲われる2人。
椅子から崩れ落ち、床に倒れこむ。
ヒロキ「お金以外のもので、払っていただくだけです。」
タクミ「ちょろいな。これこそまさに身体で払うってことでしょ?」
厨房から顔を出して2人を見て言うタクミ。
非常線が張られたアパートの入り口。
現場の部屋に入る新人刑事の沖田。
先輩刑事「お前の初仕事、えらいことになったな。」
部屋の中で横たわる2人の男女。
気味が悪いくらいに青白い顔。
沖田「犯人は必ず僕が捕まえますから。」
厨房で何かを作っているタクミ。
ヒロキ「なんかいい匂いがする~」
タクミ「もう少しだから、あっちで待ってて。」
庭の手入れを始めたヒロキ、匂いにつられて再びタクミのもとへ。
ヒロキ「俺、パブロフの犬になった気分。」
タクミ「しょうがねえよ、この匂いは特別だからな。」
味見をする2人。
タクミ「まあ、初回としてはまずまずなんじゃね?」
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