28話:ヨルム”人化”の眷属顔見せ②
俺の持つAbilityであり特別な意味のある力”|魔獣の王〈ビーストマスター〉”。
この力によって俺はこの世界に存在する魔物と呼ばれるモノの中で、【魔獣】にカテゴリーされる魔物を俺の眷属契約させることで使役した状態にすることができるのだ。
ただこの力で契約できる魔獣は現状3体までだ。
俺には既にファン、キキ、ヨルムと契約している状態なので、今後はこれ以上新しい魔獣を眷属化できない状態となっている。
+
魔物にはいくつかのカテゴリーが存在するようだ。
まずは俺の能力の根底であり基盤とも言える【魔獣】だな。
どうやらこの世界の魔物の中では【魔獣】に該当する魔物が一番数多く存在しているようだ。
ファンの牙虎獣の様な動物からキキの様な蝙蝠、ヨルムの蛇なんかも【魔獣】にカテゴリーされる場合があるみたいだ。
そしてこの【魔獣】に該当する魔物を俺の眷属化させることが出来るのだ。…まあ今は契約数のストックがなくなったから他に契約出来ないのだが。
まあ他にも俺は【魔獣】を喰らう事で己の傷や状態異常なんかを回復させることもでき、また食すことで俺自身の能力向上にもなる。
そして今現在新たな眷属獲得が出来ない為、見つけ次第食料として始末する。
魔物の心臓部である”魔心石”が残っている限り魔物は絶命状態でも身体は残るので保存が利く。この”魔心石”が無くなると魔物は完全に消滅する。
魔物を殺す上では”魔心石”さえ奪えば消滅させるある意味急所でもある。
次に【魔獣】以外のカテゴリーの魔物についてだ。
魔物の
まずは、この洞窟で遭遇しファンが片付けた大型蟻の様な虫の外見をしている魔物群。これらは【魔蟲】と呼ばれているらしい。
俺は虫が好きじゃないので見つけ次第始末だ。即始末だ。
次に異世界物の定番であるゴブリンやオーク、オーガ等と言った【魔精】。
連中は森や洞窟に集団を作る習性があるらしい。食料狩りに森に出た際にゴブリンに出合った事は1,2度ある。
まあこの間で会った際に俺は一人で数10体のゴブリンを始末した。
ファンとキキが”人化”中で水浴びしている時に近づいてきたので恐らくの狙いが勘付いたので俺一人で殲滅した。
ああ、ただキキが他の【魔精】の中で”オーガ”と呼ばれる個体は違うと警戒した方がよいと言っていた。
キキの話ではオーガは殺戮本能しか頭にない野蛮な存在で戦闘能力も桁が違うらしく危険らしい。
基本は出合ったら即撤退する方がいい。と聞いた。
あと基本は殺戮本能しか持っていない為、オーガは群れを作ることはないらしい。
それを聞いて――
(是非にもオーガとやらに会ってみたいな…。俺の心の根底にある殺意とオーガとやらの殺戮本能のどちらが強いか…)
とニッと笑みを浮かべていた俺を見てファンは「わぁマスターカッコイイ!なんだかキュンとする!」と、キキは「困った主です…」と溜め息をつき文字通り困った人を見る目を向けてきた。
あとは【水魔】と言う水棲系とかスライムの様なやつだな。
基本は川辺や海と言った場所に存在しているみたいだ。温厚な性質で、水場を穢したりしなければ襲ってきたりすることはあまりないらしい。
そしてあとは【魔竜】だ。
いわゆるドラゴンだな。魔物の中でも最も個体数が珍しく”オーガ”以上に出会ったら【死】を覚悟する、もしくは覚悟する暇なく殺されるようだ。
ただドラゴン系の牙や鱗などは武具の素材としては一級品なのでもし手に入ったら高額で取引できるらしい。
これは商人親子から聞いた話だ。
【魔蟲】、【魔精】、【水魔】、【魔竜】そして【魔獣】。
この五種類でカテゴリーされており、そしてこのカテゴリーの中の一体の魔物が超越し進化を果しえた存在を【魔王】と称し呼ばれるようだ。
まあ【魔王】なんて俺にはどうでもいいことだ。
例え魔獣が【魔王】に進化したとしても【魔王】に格付けされた時点で喰う事も出来ないので興味は特にない。
まあ、もし俺達に何かしらの悪影響を与えるのであれば、例え規格外な強大な力を有していようが必ず殺す。
まあ【魔王】なんてもんが現れたら、そん時はクソ王国の勇者君筆頭達が倒すだろう。と言うか押し付ければいいだろう。
ああ、あと、どうやら俺の眷属である限りは、ファン達が【魔王】に進化することはないみたいだな。
それは既に”魔獣の王”の”眷属”である以上、【”王”】に至れることはないからだそうだ。
本当かどうかはよくわからない。キキも恐らくと言う感覚だと言っていたしな。
+
さて”人化”している俺の眷属達だ。
今中央広場にて俺、ファン、キキ、ヨルムが揃っている。
まずはファン。
黄色い表皮の鋭い牙を有する虎型の魔獣だ。
”人化”した姿は大き目の体をしている魔獣形態と違い小柄だ。
150㎝くらいで3人の中で一番長い黄色の髪をしている。そして小柄に似合わぬ大きな胸を持っている。
性格は天真爛漫で好奇心も高い。そして羞恥心が薄く、機会を狙っては俺を性的に襲ってくる狩人だ。なので普段は魔獣の状態にしている。これにはファンも不満の様子だが、いつどこで襲われるか解らんのは俺も困るから仕方ない。
一人称は自分の名前で、俺を呼ぶ時は『マスター』と呼ぶ。
戦闘方法は【魔獣】の時はその体格を生かしその鋭い牙と爪に”風”を纏わせ刃にして襲う。【人】の時は体の一部(腕や足)を魔獣の時のものに変化させるスタイルだ。
どちらも近接戦がメインで、いわゆるパワースピードファイターだ。
ちなみにファンはあまり手加減が出来ないタイプで、初めて訓練の相手をした時は遠慮なく打っ飛ばされた。
(マジ死ぬかと思ったな、アレは…。たしかに遠慮なくドンと来い、と言ったのは俺だけどさ…)
と、分かる通り今の俺よりもファンの方が強い。
訓練の相手は、初めは正直相手にならなかった。だけどここ最近はキキとの訓練で俺も力や戦術面が向上し5回に2回はファンの一撃を掠めず堪え切る事が出来る様にはなった。
次がキキだな。
キキは吸血蝙蝠型の魔獣で、翼を畳んでいる時の大きさは俺の広げた掌くらいのサイズで、
額に第三の目を持っている。
”人化”した姿はファンと逆で、小さい姿の魔獣形態と異なり俺と同じくらい(170cm前後)か少し低いくらいだ。
髪は白銀色のショート。基本冷静沈着で少し硬めの性格をしている。ただ羞恥心は人並みにあり性的な事には顔を赤く染め恥ずかしがりテンパるのだ。揶揄うと面白い。
長身にスラッとしているが、本人はその身長の割には小さめの胸に思う所があるらしい。俺は恰好好いしそこまで小さくもないから気にしなくてもいいのにと思うのだが、キキにしか分からない何かがあるのだろう。
吸血種である事から分かると思うのだが、キキの好物は”血”だ。特に俺の血は絶品らしく、キキの食事は殆どが俺の血をチューチューと吸う事である。
戦闘方法は【魔獣】【人化】共に魔法を駆使する。キキの持つ魔法の中では特に”結果系空間魔法”を得意としている。
そして【人化】時には少し前に盗賊を始末して手に入れた槍と斧を組み合わせた武器ハルバートを用いた武器と魔法を組み合わせた戦術もとる。
正直今の俺はハルバートを用いたキキにまだ一本を取れていない。
ファンが手加減の出来ないようなので自ずとキキと訓練を取ることが多いのだが、最近までは軽くあしらわれる状況だった。
今日なんかはいいとこまで、接戦に持ち込むことも出来る様にはなってきた。
ただキキには魔法もある。と言うかキキの本職はあくまでも魔法だ。
もっともっと強くならないとな、て思う。
眷属より弱い主なんて格好悪い感じがするからな。
いつか必ず魔法も加えたキキに訓練で勝って見せるぜ。
そして――
なぜかそのファンとキキの二人を前に、俺の背から少し顔を見せるだけでいるヨルム。
「おい。何やってんだ?隠れてないでファン達にその姿での初めての挨拶をしろよ」
そう告げるとヨルムは「うぅ」と小さく唸りつつ不安そうにだが俺の背から出てファンとキキの二人の前にちゃんと立つ。
俺のシャツを着ているので140センチ大の一番小柄なのでだぼだぼ感がある。
大き目のシャツで膝くらいまでシャツで隠れている感じだ。
「えっ、と…、その、…はじ、初めましてっ!この姿で会うのは、その…初めて、ですが。ボクがヨルムです。…その、よろしく、ですっ」
必死さある挨拶を終えたヨルム。
緊張していたのだろう。受け入れてくれるのかな?とか考えているのだろうか。
両腕を胸のところで握り、ギュッと目を閉じながら体を震わせている。
そんなヨルムの両手をファンが掴む。
「へ?」とビクッと驚きつつその閉じていた瞳を開けるヨルム。
「わぁい!よろしくね、ヨルム!ファンはファンだよ♪」
「仲間が増えた~♪」と歌うかのように嬉しそうに満面の笑みでヨルムを受け入れるファン。
こう言う時、ファンの天真爛漫な性格はありがたい。
ヨルムも「わっ、わっ」とブンブンと上下に振るファンに戸惑いつつも、受け入れて貰えて良かったと、安堵している風だ。
「まったく、ファン殿は。ほら、ヨルム殿が困ってますよ」
「えぇ、だってファン嬉しいんだもん♪」
「それは分かりますが、ファン殿はテンションが高いので少し遠慮をしてくださいね。それと私にも挨拶をさせてもらいたいので」
「そうかなぁ。でも分かった」
そう言うとヨルムの両手から手を放し「よろしくね」ともう一度言いヨルムの前から離れる。そして代わりに今度はキキがヨルムの前に立つ。
高めの身長のキキと小柄のヨルム。
故にキキが見下ろす格好になる。
なんと言うか
まあお姉さんには見えるだろうな。
「では、改めてご挨拶を。そのお姿では初めましてになりますね。私の名は主よりいただいた大切なものでキキと申します。今後とも主の為、精一杯の奉公をいたしましょう。よろしくお願いします、ヨルム殿」
「あ、は、はい……」
物凄く硬い挨拶だった。
ファンが「キキってばもっと柔らかくした方がいい気がするよぉ」と言うくらいだ。
ただ普段のキキは凛々しいからヨルムも心の中で(か、かっこいいなぁ…)とそう呟いていた。
身長差があるのでキキは膝を折りヨルムの視線に合わせつつ握手の右手を出す。
若干頬が赤くなっている気がするがヨルムも慌ててその手に握手で答えた。
”人化”した眷属での顔合わせはつつがなく和気藹々と終わった。仲良きは良きかな、と。
だから――。
”解除”した。
光と共にファン、キキ、ヨルムの姿が元の魔獣形態の時の姿に戻った。
するとなんだか三者からどこか非難めいたジト眼を向けられた。
空気読んで!と言うかのように。
無能だった俺《ぼく》が死にかけて魔獣の王《ビーストマスター》となった 光山都 @kouyamato
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